日本の魚に鮮明な「明暗」 マイワシ資源減少、ウルメイワシ低水準もキンメダイは回復

2026年09月03日 11:50

EN-b_083

農林水産省。9月2日に公表された最新の水産資源評価では、マイワシやウルメイワシ、カタクチイワシ、マアジ、キンメダイなどで資源状態の違いが示された

今回のニュースのポイント

9月2日に公表された最新の水産資源評価では、日本周辺に生息する身近な魚種の資源状態に大きな違いがみられました。マイワシ太平洋系群では資源量や親魚量が減少し、2025年級群の加入量も低いと推定され、2026年以降の将来予測も下方修正されています。ウルメイワシ太平洋系群も2025年の資源水準が28.7%と限界管理基準値案を下回る厳しい状況です。一方で、カタクチイワシ太平洋系群は2019年以降に資源量が増加傾向となり、2025年の親魚量は最大持続生産量(MSY)を実現する水準の1.47倍に達しています。キンメダイも資源量・親魚量ともに増加傾向を示しており、「漁獲量の減少=海の中の資源減少」とは一概に言えない実態が浮かび上がっています。

本文
 水産庁および水産研究・教育機構などが2026年9月2日に公表した最新の水産資源評価結果では、日本周辺で漁獲される身近な魚種の間で、資源状態の「明暗」が鮮明に分かれる結果となりました。

 今回最も大きな変化が示されたのが、マイワシ太平洋系群です。2025年の総漁獲量(日本・ロシア・中国の合計)は91.1万トンとなり、前年の138万トンから大幅に減少しました。特にロシアによる漁獲量が前年の59万トンから5.8万トンへと急減しています。資源量は近年の増加傾向から減少に転じ、2025年には169.4万トン、親魚量は103.5万トンまで低下しました。親魚量は最大持続生産量(MSY)を実現する親魚量(SBmsy)の0.72倍にとどまる一方、2025年の漁獲圧はFmsyの4.43倍と高い水準にあります。さらに2025年の0歳魚の資源量指標値が近5年間で低い値となり、2025年級群の加入量も少ないと推定されたことから、2026年以降の親魚量や漁獲量などの将来予測も前年度評価より低く見積もられています。

 マイワシの減少要因について評価資料の考察によると、複数の側面からの背景が示されています。2018年以降、特に2歳以上の個体で平均体重が急激に低下しており、海水温上昇に伴う北西太平洋での餌料プランクトンの減少や、海の生産力が低下する中での密度効果による成長速度低下、成熟年齢の高齢化、親魚の体重当たりの再生産能力低下などが挙げられています。評価資料では、こうした資源が増えにくい環境下で2024〜2025年に高い漁獲圧がかかったことが、資源減少に大きく影響していると考察しています。

 同じイワシ類であっても、種によって置かれた状況は異なります。ウルメイワシ太平洋系群は、2015年に過去最高の4.9万トンを記録した後に減少傾向となり、2025年の漁獲量は2.1万トンでした。2025年の資源水準は28.7%と推計され、目標管理基準値案(80%)はもちろん、限界管理基準値案(56%)をも下回る厳しい低水準にあります。直近5年間の平均漁獲量2.7万トンに対し、2027年のABC(生物学的許容漁獲量)試算値は1.7万トンと算出されています。

 一方、同じ「イワシ」の名を冠しながら対照的な動きを見せているのがカタクチイワシ太平洋系群です。2025年の漁獲量は2.8万トンと、2003年の過去最高(40.8万トン)に比べて低い水準にとどまっています。しかし、海の中の資源量は2019年以降増加傾向にあり、2025年の資源量は37.7万トン、親魚量は16.5万トンに達しました。2025年の親魚量はSBmsyの1.47倍、漁獲圧はFmsyの0.25倍となっており、漁獲量の少なさだけで資源状態を判断できないことを示す事例となっています。

 日本の食卓に親しみ深いアジ類やタイ類でも、海域や系群ごとの違いが見られます。

 マアジ太平洋系群は、2025年の資源量が6.4万トンとなり、2021年の3.6万トンから増加に転じました。ただし、2025年の親魚量は2.5万トンと、目標管理基準値(5.2万トン)の0.48倍にとどまっています。マアジ対馬暖流系群では2025年の資源量が30.4万トン、親魚量が15.8万トンであり、親魚量はSBmsyの0.58倍ですが、漁獲圧はFmsyの0.65倍まで抑えられています。

 アジ類のうちマルアジ(日本海西部・東シナ海系群)は、2025年の資源水準が82.9%となり、目標管理基準値案(80%)を上回る状態を示しました。2027年のABC試算値は3,811トンとなっています。東シナ海のムロアジ類は2025年の漁獲量が4,086トンで、資源水準は73.3%となり、目標管理基準値案(80%)には達していないものの限界管理基準値案(56%)は上回る水準を維持しています。

 高級魚として知られるマダイ(日本海西部・東シナ海系群)は、2025年の漁獲量が4,581トンとなり、直近2年連続で5,000トンを下回りました。しかし、2025年の資源量は1万9,500トンと1986年以降の変動レンジ(1万8,770〜2万3,800トン)の範囲内にあり、親魚量も1万3,100トンと暫定目標管理基準値と同水準を確保しています。今後も種苗放流が継続されると想定した場合、2027年のABCは5,560トンと算出されています。

 さらにキンメダイ(太平洋)では、資源量および親魚量の増加傾向が確認されています。2025年の全国漁獲量は4,300トンと長期的には減少傾向にありますが、資源量は2015年の2万9,500トンから2025年には4万3,700トンへ増加。親魚量も2017年の2万600トンから2025年には2万9,700トンまで増加しました。2025年の親魚量はSBmsyの1.22倍、漁獲圧はFmsyの0.66倍となっており、カタクチイワシ同様に漁獲量の推移と資源の動向が異なる動きを見せています。

 今回の資源評価を俯瞰すると、マイワシやウルメイワシのように資源減少や低水準が懸念される魚種がある一方で、カタクチイワシやキンメダイのように資源量や親魚量が増加傾向にある魚種も存在します。またマアジのように系群によって親魚量や漁獲圧の状況が異なるケースもあります。日本の水産資源を一概に括ることはできず、魚種や海域、系群ごとに精緻な状態把握と管理が行われている実態が浮き彫りとなっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)