建設現場でAIが「認識・判断・行動」へ 国交省、フィジカルAI戦略を策定

2026年09月04日 18:32

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国土交通省は建設分野のフィジカルAI戦略で、掘削や運搬などの機械施工を重点8分野の一つに選定。AIが物理環境を認識・判断し、建設機械やロボットなどの行動につなげる技術の現場実装を進める(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

国土交通省は2026年9月4日、「インフラ分野のAI実装に向けた取組方針」と「建設分野におけるフィジカルAI戦略」の中間とりまとめを発表しました。物理環境を認識してAIが判断し、建機やロボットの物理的な動作につなげる「フィジカルAI」の導入に向け、掘削や鉄筋作業、除雪、災害復旧など8つの重点分野を設定。2030年ごろの短期成果と2040年ごろの目標を見据え、公共工事データの構造化や監督業務の効率化を含めた現場実装を推進します。

本文
 国土交通省は2026年9月4日、インフラ分野におけるAIの本格導入に向け、「国土交通省インフラ分野のAI実装に向けた取組方針」および「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)」を公表しました。文章作成や情報検索といったコンピューター上での知的業務支援にとどまらず、センサー等で物理環境を認識し、AIの推論・判断に基づいて建設機械やロボットなどが現実空間で行動する「フィジカルAI」を建設現場へ導入する戦略を打ち出しました。

 背景には、建設業における深刻な担い手不足やインフラの老朽化、激甚化する自然災害への対応があります。国交省は2024年に策定した「i-Construction 2.0」において、建設現場のオートメーション化により2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍を目指す目標を掲げており、フィジカルAIはその構造的課題を突破する手段として位置づけられています。

■掘削・鉄筋・除雪・災害復旧など重点8分野を選定

 国交省は、成果の早期発現が期待できる分野や社会的要請の高い分野として、以下の8つの重点対象を選定しました。

1. 機械施工(土工等:掘削、運搬、敷き均し、積込み等)

2. 人力技能作業(鉄筋の配筋・結束・圧接、型枠の組立・解体、現場補助等)

3. 現場内小運搬

4. 構造物点検(道路、河川等の構造物)

5. 巡視・点検(河川巡視、道路巡視等)

6. 除草、除雪、清掃

7. 災害調査(広域調査、詳細調査)

8. 災害復旧(土砂撤去、整地、運搬、軽作業、道路啓開等)

 人が入りにくい危険な災害現場での土砂撤去や道路啓開、過酷な環境下での除雪作業などを含め、単体ロボットにとどまらず現場全体の最適化を目指します。戦略では2030年ごろを短期的な成果発現のメドとし、現場実証や導入環境の整備を進めるとともに、2040年ごろの中長期目標に向けた研究開発を並行して推進する方針です。

■「AI臨場」や公共工事データの構造化も推進

 フィジカルAIの現場導入とあわせ、発注者である国自身が直轄事務所などでAIを徹底活用する方針も示されました。施工段階では、発注者の基準値と受注者が測定した出来形データをAIが照合支援する「AI臨場」の環境を整備し、現地臨場の頻度削減と監督・検査の効率化を図ります。

 さらに、AIが設計図書や基準類を参照・学習しやすくするため、従来のPDF主体であった納品形態を見直す運用方針を検討するとともに、技術基準類についてMarkdown形式やHTML形式など、AIが参照・解釈・認識しやすい構造化された形式への整備を推進します。国交省は先行例として、「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」をJSON-LDを追加したHTML形式で公表しました。

 あわせて、施工データやセンサーデータ、熟練オペレーターの操作ログ、熟練技術者が培ってきた「暗黙知」などをAI活用につなげます。さらに、検討過程や現場判断の背景などを含む「思考の地層」を、将来世代がAIとともに学習・活用できる形で残す考えも示しました。

■最終的な判断と責任は人間が担保

 国交省はAIについて、「現場で働く人の能力を拡張させ生産性向上を加速する基盤」と定義しており、人とAIの協働を基本姿勢としています。AIが高度化しても、問題提起や方向付け、最終的な価値判断、意思決定、住民への説明責任は人間が担い、AIの動作を継続的に監督する「Human-in-the-Loop」の姿勢を明記しました。

 今回発表された戦略は「中間とりまとめ」であり、国交省は今後、産学官連携のコンソーシアムを設置して現場実証や知見の蓄積を進め、技術進展や現場ニーズに応じて柔軟に方針を見直していく考えです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)