人の作業動画からロボットが学習 リコー、機体をまたぐ「フィジカルAI」開発

2026年09月01日 12:24

さくらレポートイメージ (1)

AIとロボティクスを組み合わせ、現実世界での作業を担う「フィジカルAI」のイメージ。リコーは人間やロボットの作業動画から、機体構成に依存しない行動表現を学習する技術を開発した。画像はイメージ

今回のニュースのポイント

リコーは8月31日、人間やロボットの作業動画から、特定機体の構造や機構に依存しない行動表現を学習するフィジカルAI技術を開発したと発表しました。従来はロボットのハンドやアームの形状、制御仕様が変わるたびに学習データを集め直す必要があり、自動化の広がりを阻む課題となっていました。同社は人の作業動画も活用して行動を共通表現として学習させることで、実機データの収集負担を抑え、さまざまなロボットへの適用可能性を高めることを目指しています。

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 AI活用領域をデジタル空間から実世界へと拡張する取り組みとして、カメラなどを通じて現実世界を認識し、状況を判断してロボット等の動作へ繋げる「フィジカルAI」への期待が高まっています。リコーは製造、物流、保守点検などの現場において、人手不足の深刻化や熟練者の技能継承といった課題を背景に、AIとロボティクスを融合させたフィジカルAIの研究開発を進めています。

 一方で、フィジカルAIの実用化と拡大には大きなハードルが存在していました。画像と言語、動作を統合して扱う現行のVLA(Vision-Language-Action)モデルなどでは、実際の現場で導入する際に作業ごとの微調整が必要になるケースが多くみられます。さらに、ヒューマノイドやロボットアーム、2指ハンド、5指ハンドといったロボット側の身体構成や機構が変わると制御仕様も異なるため、ロボットごとに学習データを集め直す必要がありました。特にヒューマノイドにおいては、実機を用いた学習データの不足が広範な運用の妨げとされてきました。

 こうしたデータ収集の負担を軽減するため、リコーは動画のフレーム間変化から潜在的な行動を抽出するAIモデル「LAM(Latent Action Model=潜在行動モデル)」に着目しました。人間や各種ロボットの作業動画を読み込ませることで、「物を持つ」「前進する」「対象を移動させる」といった動作を、特定のロボットの制御方式に依存しない共通の行動表現として学習させ、多様なロボットや作業への適用可能性を高めるアプローチです。

 人間の作業動画を学習データとして活用することで、実機データ収集のコストを抑えながら、行動表現の再利用性を高めることを狙います。習得した共通の行動表現を利用することで、ロボット構成ごとにデータを集め直す手間を減らし、汎用性の向上を目指す狙いがあります。

 同社はシミュレーション環境で学習した成果を現実世界のロボットへ展開する「Sim2Real」手法を適用し、部品のピックアンドプレース(持ち上げて配置する作業)を題材に検証を実施しました。3通りのシミュレーション環境および実機環境で駆動を確認した上で、同技術の有効性をシミュレーション環境において確認したとしています。今後は実環境での検証を進める方針です。

 今回の発表は技術開発の成果に関するものであり、直ちに特定の商用サービスとして提供されることや具体的導入時期が決定したものではありません。今後はオフィス、工場、物流倉庫、保守作業現場などの環境を想定し、多様な作業内容やロボットの構成に対する有効性の検証を進めていくとしています。

 フィジカルAIの普及に向けては、AIモデルの精度向上にとどまらず、現実世界で動かすための学習データをいかに効率よく調達するかが重要な鍵を握っています。人間の作業動画を活用し、機体の違いを越えて行動を学ばせるリコーの取り組みは、データ収集コストの低減に向けたアプローチとして今後の現場検証の成果が注目されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)