砂防工事を「遠隔・自動化」へ 国交省、人手不足と災害対応を両立

2026年08月24日 17:48

今回のニュースのポイント

国土交通省の検討委員会は、砂防関係事業における遠隔・自動施工の推進に向けた中間とりまとめを公表しました。これまで災害現場など安全確保を主目的として活用されてきた遠隔施工を、平時の砂防工事にも広げる方向です。特に砂防堰堤の掘削・運搬や除石、急斜面での施工などで導入を促します。建設業の担い手不足が見込まれるなか、省人化や安全性向上、災害対応力の維持につなげる考えです。

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 国土交通省の検討委員会は24日、「砂防関係事業における遠隔・自動施工の推進について」の中間とりまとめを公表しました。これまで遠隔施工は、立入困難な災害現場における作業員の安全確保を主な目的として活用されてきましたが、今後は平時の通常の砂防工事にも拡大する方針が打ち出されました。技術を一時的な応急対応にとどめず、地域の建設会社が日常的に用いる施工手段として定着させる政策転換を図ります。

 背景にあるのは、建設業全体で進行する著しい高齢化と将来的な担い手不足です。特に砂防工事が多く実施される中山間地域では人手不足の影響が先行して顕在化する懸念があります。加えて砂防現場は、急峻かつ狭隘な山間部や増水・土石流の危険、厳しい気象条件に加え、クマや蜂、蛇など野生生物への対応まで求められるなど非常に厳しい施工環境にあります。将来にわたって地域の安全・安心を維持するためには、省人化と作業環境の改善が不可欠となっています。

 一方で、現状の導入ペースは決して高くありません。2025年度の直轄砂防関係事業において、遠隔・自動施工が実施されたのは年間工事件数の1割未満にとどまっています。1990年の雲仙・普賢岳噴火や近年の能登半島地震などで技術開発と実績は蓄積されてきたものの、地域の建設会社や通常工事への普及は十分とは言えません。国交省は「i-Construction 2.0」に基づき、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍に向上させる目標を掲げており、普及の加速が課題となっています。

 中間とりまとめでは、具体的に推進すべき工種として「砂防堰堤の床掘(掘削)や土砂運搬」「砂防堰堤の除石」「急斜面の法面対策」を提示しました。2025年度に実施された26の遠隔・自動施工工事のすべてで掘削が実施され、運搬でも自動施工を含む実績が上がっています。特に定型的な繰り返し作業が多い運搬は自動化との相性が良く、すでに実績のある分野から段階的に展開していく方針です。

 技術面では、5G通信やStarlinkに代表される低軌道衛星通信、準天頂衛星「みちびき」による高精度測位が遠隔施工の精度と安定性を支えています。能登半島地震では被災地から数百キロ離れた千葉県や大阪府から建機を操作する「超遠隔施工」も実施されました。今後は、施工・操作データと実空間を認識する「フィジカルAI」を組み合わせ、建機の認識・判断・操作支援や自動化を一段と高めていく考えです。

 もっとも、技術の存在がただちに普及へ直結するわけではありません。施工会社への調査では、初期導入費用や通信環境、施工効率への懸念、オペレーターの育成などが課題として挙げられています。一方、実際に遠隔・自動施工を経験した現場からは、基本的な操作の習得には数日~1週間程度、安定した施工が可能になるまでには2週間~1カ月程度を要するとの声もありました。国交省は直轄事業での実証やモデル工事を通じて技術力向上やデータ共有を促し、地域建設会社が導入しやすい環境整備を進めます。

 建設業の担い手減少が避けられない一方、気候変動などを背景に土砂災害への備えの重要性は高まっています。遠隔・自動施工を「災害時の特殊な技術」から「平時にも使う施工手段」へ広げられるか。安全性と生産性を高めながら地域の災害対応力を維持するため、普及拡大に向けた取り組みが進むことになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)