今回のニュースのポイント
大和総研は8月21日に公表した「第230回日本経済予測」で、生成AIやフィジカルAIの普及が日本経済に与える影響を試算しました。生成AIの活用が進むことで今後10年間の労働生産性上昇率は年率0.5%ポイント程度、フィジカルAIの普及まで含めると0.9%ポイント程度押し上げられる可能性があるとしています。さらに生成AIやフィジカルAIの活用が加速するケースでは最大1.5%ポイント程度の上昇も見込む一方、職種によってはAI・ロボットによる雇用代替リスクが高まる可能性を指摘しています。
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少子高齢化に伴う本格的な人手不足や労働力人口の減少が、日本経済にとって長期的かつ深刻な成長制約となっています。こうした課題に対し、急速に技術進化を遂げる人工知能(AI)やロボティクス技術の普及は、どこまで日本の生産性を引き上げ、労働力不足を補うことができるのでしょうか。大和総研が8月21日に公表した「第230回日本経済予測」では、AIの普及が将来の日本経済や労働市場に及ぼす影響について、具体的な試算を交えた詳細な分析が示されました。
同社の試算によると、文章作成やプログラミング、情報処理などの知的作業を自動化・支援する生成AIの活用が進むだけでも、今後10年間の日本の労働生産性上昇率は年率0.5%ポイント程度押し上げられる可能性があるとされています。人手不足に悩む日本企業にとって、生成AIの本格導入は生産性向上につながる最初のステップとなり得ます。
さらに大和総研の試算で際立っているのは、活用される技術の広がりや導入のスピードに応じた段階的な効果を示している点です。物理空間で実際の作業を担うロボットや自動化機械などにAIを組み込んだ「フィジカルAI」の導入まで想定した場合、今後10年間の労働生産性上昇率の押し上げ効果は年率0.9%ポイント程度へと拡大します。加えて、生成AIやフィジカルAIの活用がさらに加速するケースでは、その押し上げ効果は年率で最大1.5%ポイント程度に達すると推計されています。
生成AIが主に知的作業などへの活用を広げるのに対し、フィジカルAIはロボットや自律機械を通じて現実世界での作業までを担う点に特徴があります。活用範囲が画面の中にとどまらず物理的な作業へ広がることで、生成AI単独の導入時よりも日本経済全体の生産性向上効果が大きくなる可能性があるという分析です。
一方で、大和総研の分析はAI普及がもたらす「陰」の部分、すなわち労働市場や雇用への影響に対しても非常に興味深い試算を示しています。試算によれば、AI活用によるマクロ経済全体への効果としては、実質GDPが増加し、失業者数は減少、平均賃金も上昇するというプラスの影響が確認されています。しかし、これを職種別で見ると、すべての働く人に均等な恩恵がもたらされるわけではない実態が浮かび上がります。
大和総研は、生成AIの普及によってオフィスワーク中心の事務従事者などで雇用代替リスクが高まるほか、フィジカルAIが普及した場合には、「運搬・清掃・包装等従事者」や「生産工程従事者」など、現実空間で作業を担う職種にも代替可能性が広がると分析しています。最もAI活用が加速するシナリオでは、日本全体で雇用や賃金が拡大する裏側で、これらAIに代替されやすい職業グループでは今後10年間、失業者数を年率0.5〜0.7%程度押し上げ、賃金を年率0.4〜0.6%程度押し下げる可能性があると推計されています。マクロ全体としては成長するものの、こうした職種間の格差が生じる可能性を指摘しています。
こうした構造変化に対応するためには、AIの導入推進だけでなく、雇用代替リスクが高い職種に従事する労働者への重点的なリスキリング(学び直し)支援や、成長分野へのスムーズな労働移動を促す環境整備が重要となります。単に「何社の企業がAIを導入したか」という表面的な数字にとどまらず、AIを使って「いかに働き方や事業構造を変革できるか」、そして「変化の影響を受ける働き手をどうサポートできるか」が問われることになります。
人口減少による人手不足が長期的な壁となる日本にとって、生成AIやフィジカルAIを活用した生産性の引き上げは、持続可能な経済成長を維持するための極めて重要な手段です。AIを人手不足への対応や生産性向上につなげる一方、雇用代替リスクの高い労働者にはリスキリングなどの支援をどう届けるのか。技術の普及だけでなく、企業の活用力や労働市場の対応が、日本経済への効果を左右することになりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













