今回のニュースのポイント
NVIDIAは9月15日、AIデータセンターを電力制約の中で効率的に稼働させる最適化技術「NVIDIA DSX」に関する新たな検証結果を公表しました。GPUクラウドを手掛ける米Lambdaが「NVIDIA HGX B200」を使用したクラスターで検証したところ、16ノードをフルパワーで稼働させる場合と同じクラスター電力予算を維持したまま稼働ノードを19台に増やすことで、AI推論の処理量を毎秒約400万トークンから約500万トークンへ24%増加させ、電力当たりの処理性能も23%向上させたとしています。NVIDIAはAIインフラの評価軸として、単なるGPU搭載台数だけでなく一定の電力から抽出できる計算量(トークン)を重視する方針を示しています。
本文
米NVIDIAは2026年9月15日、AIデータセンター(AIファクトリー)の電力効率を最適化する「NVIDIA DSX」技術について、パートナー企業による最新の検証成果および将来の技術予測を公表しました。AIデータセンターの大規模化に伴い、利用可能な電力が設備設計や運用を左右する重要な制約となるなか、データセンターに供給する電力を増やすアプローチに加え、限られた電力枠の中でどれだけのAI処理を生み出せるかという運用効率の向上が大きな課題となっています。
GPUクラウドサービスを提供する米Lambdaが実施した検証では、5ラック・計19ノードの「NVIDIA HGX B200」クラスターが用いられました。従来の運用では16ノードを最大電力で稼働させるクラスター電力予算に対し、「DSX MaxLPS」を活用し、16ノードをフルパワーで稼働させる場合と同じ電力予算の中で19ノードを稼働させました。NVIDIA資料では、この比較条件を「19ノードを85%の電力ポリシーで運用した場合」としています。この結果、AI推論の処理量は毎秒約400万トークンから約500万トークンへと24%拡大し、電力当たりの性能も23%向上しました。本検証結果は、GPU単体の計算性能が24%高まったことやデータセンター全体の消費電力が24%削減されたことを意味するものではなく、クラスター全体の電力分配を最適化することで、同一の電力枠のもとで稼働できる機器台数と総処理量を引き上げた成果として説明されています。
「DSX MaxLPS」は、単にGPUの電力を制限する機能ではなく、GPUおよびラックレベルの電力をリアルタイムで監視し、ワークロードの負荷に応じて各ノードへ電力を動的に再配分する仕組みです。処理速度への影響を最小限に抑えながら生み出した電力の余力を他のノードへ分配することにより、同じ電力予算の中でより多くの計算機器を稼働させ、クラスター全体の処理量を高めることを狙います。
またNVIDIAは、電力系統(グリッド)側からの需要調整要請に対応する取り組みとして、米カリフォルニア州サンタクララにおける「Emerald AI」の事例を紹介しました。同施設では、電力会社Silicon Valley Powerからの信号に応じて優先度の低い処理を制御し、施設全体の電力需要を4MWから3MWへ一時的に引き下げました。NVIDIAによると、200回以上の需要調整信号を受け、すべて正常に機能したとしています。なお、本事例は「DSX Flex」自体の導入実績ではなく、NVIDIAが今後「DSX Flex」によって一般化を目指す電力網との需要調整機能の先行事例として提示されたものです。
一方、次世代環境に向けた技術予測としてNVIDIAは、次世代「Vera Rubin NVL72」を導入するAIファクトリーにおいて「DSX MaxLPS」を採用した場合、適切な設計条件下では同一のMW(メガワット)電力枠内で確保できるGPU容量を最大40%増やせるとの試算を示しました。あわせて、800V DC(直流)給電方式を導入することで、従来の54V方式と比較してエンドツーエンドの電力効率を3〜5%改善できるとの見通しも公表しています。
AIデータセンターの大規模化では、利用可能な電力が設備規模や運用を左右する重要な要素となっています。NVIDIAは今回、一定の電力供給量からどれだけの計算成果(work per gigawatt)を引き出せるかを前面に打ち出し、電力効率をAIインフラにおける主要な評価指標に掲げる姿勢を明確にしました。今回の公表内容は、特定検証環境における処理量増加と需要調整の仕組みを示すものであり、電力不足の根本的解決や発電設備の新設が不要になることを意味するものではありません。AIインフラへの投資評価においては、GPUの単体性能や台数に加え、限られた電力網の中でいかに計算出力を最大化させるかという観点が今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













