企業データ、「渡した後」も利用条件を維持 IIJとNTTドコモビジネス、異なる基盤の接続を実証

2026年09月10日 14:11

dokomoビジネス

異なるデータ基盤間で、利用制御条件を反映しながらデータを受け渡すイメージ。IIJとNTTドコモビジネスは、マスキングによる一部情報の秘匿や複製禁止などの条件を、異なるデータスペース間でも反映できることを実証した(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

NTTドコモビジネスとインターネットイニシアティブ(IIJ)は10日、異なるアーキテクチャ(設計思想)を持つ2つのデータ流通基盤を相互接続する実証を2026年7月までに完了したと発表しました。企業間でデータを共有する際、提供側が設定した「マスキングによる一部情報の秘匿」や「複製の禁止」といった利用制御条件を、異なる仕組みの基盤へ渡した後も反映して受け渡せることを確認しました。将来的な国際サプライチェーンや業界・分野をまたいだ安全なデータ連携への応用が期待されています。

本文
 企業が自社の保有データを他社と共有する際、単純にファイルを送付する従来の手法では、一度手離したデータが相手先でどのように複製・加工・転送されるかを制限・管理することが極めて困難でした。こうした課題に対し、NTTドコモビジネスとインターネットイニシアティブ(IIJ)は10日、異なる設計を持つデータ流通基盤同士を相互接続し、データを「渡した後」の利用制御条件を維持したまま受け渡す実証に成功したと発表しました。

 今回の実証において両社が確認したのは、IIJ側のデータ基盤でデータ提供者が設定した利用制御条件を、NTTドコモビジネス側の異なるデータ基盤へデータを流通させた際にも反映できる点です。具体的には、マスキングによる一部情報の秘匿や、データの複製禁止、加工制限などの条件を設定したデータを、異なる基盤間で指定のルール通りに反映して受け渡せることを確認しました。

 これは提供したデータを渡した後も完全に管理・制御できることを意味するものではなく、あらかじめ指定した利用制御の条件を異なるシステム間で再現・適用できる技術的可能性を検証したものです。

 専門用語としての「データスペース」は、企業や組織がデータの主権(自社の意思で利用ルールを決める権利)を維持しながら、相互にデータを共有・利用するための分散型インフラを指します。今回の検証では、IIJが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「経済安全保障重要技術育成プログラム/ハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発」で研究開発を進めるデータスペースと、NTTドコモビジネスが構築した検証環境を接続しました。

 NTTドコモビジネス側の環境は、欧州の自動車産業におけるデータエコシステム「Catena-X」などで普及しているオープンソースソフトウェア「Tractus-X」をベースとしています。現在、世界や業界ごとに異なるデータスペースの規格や設計が存在しており、独立したままではデータ連携の範囲が限られる懸念がありました。両社は基盤そのものを一つに統一するのではなく、異なる仕組み同士を繋いで相互運用性と利用制御を確保する手法の有効性を示した格好です。

 企業が国際的なサプライチェーンを構築するなかでは、企業や業界の枠を越えてデータを連携する場面も想定されます。両社は今回の成果について、国内外の多様なデータスペースとの相互接続や、国際的なサプライチェーン取引など、より広い業界・分野間でのデータ連携への応用を見込んでいます。

 なお、今回の発表は、日本企業と欧州企業の間で実際にデータを流通させた実績を意味するものではありません。欧州で普及する「Tractus-X」をもとにNTTドコモビジネスが提供する検証環境との相互接続性を確認した段階であり、国際サプライチェーンでの本格的な実用化は今後の課題となります。

 データスペースには設計思想や想定する利用範囲が異なる複数の基盤が存在しており、企業や業界を越えてデータを流通させるには、異なる基盤同士をいかに接続するかが課題となります。「送信できる」ことだけでなく「指定した利用制御条件を保ったまま受け渡せる」ことが異なるデータスペース間の実証で確認されたことで、将来的な多企業間のデータ連携に向けた技術的な検証が一段進みました。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)