5Gの28GHz帯「ミリ波」の電波特性を表現したイメージ。高速・大容量通信に適する一方、直進性が高く建物などの遮蔽物の影響を受けやすいため、エリア拡大には多数の基地局などが必要となる(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯大手4社は9月16日、5G向けの28GHz帯「ミリ波」のエリア拡大に向け、基地局や中継器などの設備を事業者の垣根を越えて有効活用する方法について共同で検討すると発表しました。4社は9月11日に覚書を締結しています。ミリ波は広い帯域幅を利用でき高速・大容量通信に適する一方、直進性が高く建物などの遮蔽物の影響を受けやすいため、エリア拡大には多数の設備配置が必要となります。4社は自らエリア整備を推進することを前提に、基地局や中継器などに関する技術・方式について、実現可能性や効率的な運用の仕組みを共同で評価・検討します。総務省でも2030年代を見据えたインフラシェアリングなどの制度検討が進んでおり、官民で電波資源の有効活用模索が続いています。
本文
第5世代移動通信システム(5G)の普及が進むなかで、その高速・大容量性を引き出す周波数帯として注目されているのが28GHz帯の「ミリ波」です。携帯電話の電波は単一の周波数帯のみで構成されているわけではなく、既存の周波数を転用した帯域や「Sub6」と呼ばれる帯域、そしてより周波数の高いミリ波などが組み合わされて運用されています。このうちミリ波は、広い帯域幅を利用できるという特徴を持ちます。電波の「道路」の幅を広く確保できるため、一度に大量のデータを高速で送受信することが可能です。スタジアムやイベント会場など、多数の端末が同時に集中する場所での大容量通信に適しており、実際にソフトバンクが2026年3月のF1日本グランプリ(鈴鹿サーキット)で28GHz帯ミリ波をFWAのバックホール回線に用いた公衆Wi-Fiを提供するなど、局所的な活用も進められてきました。
しかし、ミリ波には高い通信性能を持つ反面、電波の直進性が高く、建物などの遮蔽物の影響を受けやすいという物理的な特性があります。このため、低い周波数帯のように1局の基地局で広いエリアをカバーすることが難しく、エリアを拡大するには基地局や中継器などをより細かく高密度に配置しなければなりません。高密度な設備整備をどのように効率化するかが、通信事業者にとって共通の課題となっていました。
こうした背景を受け、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は2026年9月11日付で覚書を締結し、各社が自社でミリ波のエリア整備を推進することを前提としながら、互いが設置する基地局や中継器などの設備を有効活用する仕組みの共同検討を開始しました。今回の取り組みは、ミリ波基地局や中継器などの技術・方式を対象に、事業者間で設備を有効活用する運用方法や実現可能性を共同で評価・検討することを取り決めたものであり、現時点で特定の地域における基地局共用が決定したわけではありません。具体的な運用開始時期や対象地域、費用負担の割合、設備投資の削減効果なども現段階では提示されていません。
一方、行政側でも電波資源の最適化に向けた議論が進んでいます。総務省の情報通信審議会が7月にまとめた「第一次中間答申」では、生成AIの普及や将来の通信需要増大を見据え、2030年代に向けた高周波数帯の有効利用や、屋内・屋外における設備投資を合理化するインフラシェアリング(設備の共同利用)の推進などが盛り込まれました。今回の4社の動きは総務省の答申が直接引き起こしたものではありませんが、有限な電波資源を効率的に活用するための制度設計が行政側で議論される一方、事業者側においても自主的に設備の有効活用に向けた具体的な検討が始まった形です。
ミリ波のような高周波数帯の効率的な利活用は、現在の5Gにとどまらず、2030年代に導入が見込まれる次世代通信規格「6G」を見据えるうえでも重要な論点となります。今回の4社の共同検討は5Gミリ波の設備活用に関するものであり、6Gに向けた設備の共同利用が決定したものではありませんが、高周波数帯を活用しながら効率的にエリアを構築する手法は、次世代の通信インフラを検討するうえでも一つの論点となります。
5Gの高速・大容量性を活かすための設備構築において、各社単独での整備から事業者をまたいだ設備の有効活用へと選択肢を広げる取り組みが始まりました。今後は、共同検討を通じて具体的な設備の共用方式や運用対象となる地域、費用配分のルールなどがどのように議論・提示されていくかが確認点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













