大手電力10社とJ-POWERの2027年3月期中間決算をイメージした画像。11社すべてが増収となった一方、燃料費調整の期ずれや発電所の稼働状況、特別損益などによって利益に明暗が分かれた。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
大手電力10社とJ-POWERの2027年3月期中間決算は全社が増収となった一方、利益面では明暗が分かれました。燃料費調整の期ずれ差損や小売販売減少を補う卸売拡大が収益を左右したほか、原発や火力の稼働差が影響しました。東電HDが営業赤字から最終黒字へ、中部電が経常黒字から最終巨額赤字へ転落するなど特別損益による乖離も顕著で、通期予想も上方修正から据え置き、未定まで各社で対応が分かれました。
本文
大手電力10社と電源開発(J-POWER)の2027年3月期中間決算が出そろいました。11社の決算を俯瞰すると、売上高(営業収益)は全社が増収となった一方、利益面では増益維持から大幅減益、営業赤字や最終赤字へ転落した会社まで対照的な明暗が分かれました。加えて、営業損益と最終損益が正反対へ動く事例や、営業増益ながら経常減益となる事例もみられます。「増収」の裏で、各社の収益構造を分断した要因を横断的に比較します。
利益を圧迫した最大の共通要因が、燃料費調整制度の「期ずれ影響」です。輸入燃料価格などの変動が電気料金に反映されるまでの時間差により、当中間期は多くの会社で期ずれ影響が前年同期より悪化しました。北海道電力では差益から差損へ転落して約270億円の収支悪化となり、東北電力で約630億円、中部電力で約870億円の期ずれ悪化が利益を直撃しました。北陸電力でも約160億円、沖縄電力でも約134億円の悪化が生じています。制度上のタイムラグが、各社の本業利益を押し下げる主因となりました。
増収の背景となった販売構造にも変化が表れています。小売販売電力量は、前年猛暑の反動等で北海道4.5%減、四国7.0%減、九州7.9%減、沖縄4.3%減と多くの地域で前年割れとなりました。これに対し各社は卸売販売を拡大させました。四国電力で卸売電力量が26.0%増、九州電力で25.5%増、北海道電力で他社販売電力量が20.3%増となり、小売の落ち込みを補い増収をけん引しました。東北電力では自己約定が3,509億円増加し、利益への影響を伴わない自己約定による売上計上が、増収額の約6割を占めました。売上増が直ちに実需拡大を意味しない実態が示されています。
発電設備の稼働状況も各社の収支を左右しました。四国電力は伊方原発3号機が利用率103%、九州電力は原発利用率88.8%と高稼働を維持し燃料費を抑制しました。一方、関西電力は定期検査時期の違い等から原発利用率が77.2%から62.7%へ低下し、火力燃料費増などで約350億円の減益要因となりました。また東北電力では女川原発2号機の定期検査に伴う稼働差が約90億円の減益要因となり、北陸電力でも七尾大田火力2号機の停止が約80億円の収支悪化を招きました。電源の稼働水準が、燃料費や購入電力料の増減を通じて利益差をもたらしています。
今回の決算で際立ったのが、営業・経常・最終損益が異なる方向へ動いた会社群です。東電HDは、燃料高等で小売・送配電が赤字となり営業損益は336億円の赤字に沈んだものの、前年の災害特損(9,041億円)剥落により最終損益は527億円の黒字へ転換しました。対照的に中部電力は、期ずれ悪化で営業赤字となりつつもJERAの貢献で410億円の経常黒字を維持しましたが、浜岡原発関連で特損約3,704億円を計上し、最終損益は2,804億円の赤字に沈みました。関西電力は経常利益が64.6%減と落ち込んだ一方、きんでん株売却益約1,051億円を計上し、最終減益を21.4%にとどめました。
卸売中心のJ-POWERは、大手電力10社とは異なる動きを示しました。営業利益は国内販売価格の上昇や保全費抑制により前年同期比52.4%増の816億円と大幅増益となったものの、経常利益は前年計上の米国ガス火力事業売却益が剥落した影響等で同14.8%減の820億円となりました。一般家庭向け小売を持たず、発電と卸売を中核とする事業構造のもと、本業改善と前年の営業外大型利益の反動が対比をなしています。
通期業績予想においても各社の判断は分かれました。北陸電力は販売電力量増などを織り込み、経常利益予想を従来比50億円増の400億円へ引き上げました。四国電力も託送料金見直しを主因に通期経常利益予想を500億円へ25.0%上方修正しました。10月1日持株会社体制へ移行したキューデンHDも、卸売単価上昇等を反映し通期経常利益予想を2,000億円へ上方修正しています。一方、中国電力は営業利益予想を下方修正する半面、有価証券売却益を織り込み最終利益予想を上方修正しました。東北電力は未定だった通期予想を経常利益1,700億円と初公表し、東電HDは未定を継続しています。
11社の決算が浮き彫りにしたのは、期ずれ差損、卸売シフト、発電設備の稼働水準、送配電収支、特別損益が絡み合う電力事業の現実です。表面的な増収率や単一の損益段階だけで収益力を評価することはできず、下期に向けては燃料価格や為替の動向、託送料金改定、通期予想の達成状況を慎重に見極める必要があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













