地域信組3組合が新たな経営強化計画 預金減少の一方、貸出・収益・不良債権で差

2026年09月28日 11:47

地方都市イメージ

金利環境が変化する中、地域金融機関では貸出や収益、預金獲得、信用コストなど経営課題の表れ方に違いがみられる。(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

金融庁は9月25日、全信組連を通じた資本支援のもとで事業を進める滋賀県信用組合、釧路信用組合、那須信用組合の3組合による新たな「経営強化計画」を公表しました。3信組は前計画期間を完了し、新たな計画へ移行する節目にあります。政策金利の上昇に伴い貸出金利息などが増える一方、預金獲得の環境変化や地域ごとの資金需要、取引先の信用リスクの顕在化など、同じ公的支援下にあっても直面する経営課題の状況は一様ではありません。

本文
 金融庁は9月25日、地域金融機関の経営基盤強化を図る枠組みに基づき、滋賀県信用組合、釧路信用組合、那須信用組合の3組合が策定・更新した新たな経営強化計画を公表しました。3信組はいずれも、全国信用協同組合連合会(全信組連)を通じた優先出資等の公的資本支援を受けながら、地域での金融仲介機能の維持・強化に取り組んできた経緯を持ちます。しかし、今回公表された前計画の総括と新たな計画資料からは、「金利ある世界」への回帰という共通の環境変化の中で、地域ごとの経済構造や顧客動向に応じた経営課題の表れ方が異なっています。

 計画の背景にある制度的フレームワークを整理すると、滋賀県信組と釧路信組は2026年4月から2029年3月までの3年間を新計画の実施期間としています。一方、栃木県北部を主要基盤とする那須信組は、2012年3月に東日本大震災の被災地域を支援する震災特例協同組織金融機関として70億円の資本支援を受けた経緯があり、2021年4月から2026年3月までの第3次計画を経て、2026年4月から2031年3月までの5年間という異なる時間軸で新計画を実施します。

 3信組の足元の業績構造には異なる動きが表れています。滋賀県信組は、2026年3月末の貸出金残高が1044億3000万円となり、計画を24億3000万円上回りました。中小規模事業者向け貸出も662億800万円と計画を18億1500万円上回り、3年間の当期純利益累計は9億2200万円と計画を2億7100万円超過しました。短期プライムレート引き上げに伴う貸出金利息の増加や預け金利息の増加が寄与し、本業の貸出と収益の双方が計画を上回って推移しています。

 釧路信組では、2026年3月末の貸出金残高(末残)が433億5500万円と、前計画始期の2023年3月末(435億6100万円)から2億600万円の減少となりました。中小規模事業者向け貸出残高(従来基準)も306億6600万円と始期から22億7200万円減となりました。一方で収益面は改善しており、政策金利上昇に伴う貸出金利回りや預け金利回りの上昇により、貸出金利息は累計計画を3億2600万円上回りました。コア業務純益も2026年3月期に3億5300万円を確保し、始期から2億200万円増加しました。

 最も異なる決算構造を示したのが那須信組です。同組合の2026年3月期決算では、資材高騰や人件費高、労働力不足等により業績回復が遅れた取引先のランクダウンを実施した結果、貸倒償却引当費用が前年の3800万円から3億3825万円へ急増しました。これにより当期純損益は前年の4500万円の黒字から4億249万円の赤字へと転落し、不良債権比率も2.30ポイント上昇の5.56%となりました。ただし、コア業務純益は1億6800万円と前年から1800万円増加しており、自己資本比率も前年から0.56ポイント上昇して17.01%となっていることから、本業収益全体の急速な悪化ではなく、信用コストの増加が最終損益を押し下げた形です。

 一方、3信組に共通して見られる動きが預金残高の減少です。ただし、その要因は地域ごとの事情で明確に書き分けられます。滋賀県信組(2026年3月末残高1360億6200万円、始期比108億8900万円減)では、大口の地方公共団体預金の払い戻しに加え、金利ある世界への移行に伴い個人定期預金が流出したことを説明しています。釧路信組(同662億4000万円、始期比106億400万円減)では、店舗統廃合や預金者の高齢化に伴う預金整理、相続による解約増加が挙げられています。那須信組(同845億1100万円、前年比71億8100万円減)では、公金預金の大幅解約や相続預金の流出、投資等への振り替えが影響しました。

 政策金利の上昇は、地域金融機関の貸出金利息や預け金利息を押し上げる一方、預金金利の引き上げによる調達コスト増にもつながっています。さらに預金残高の減少や地域の資金需要、取引先が抱える個別リスクなど、3信組を取り巻く経営課題の表れ方は一様ではありません。経営強化計画を新たにスタートさせた3信組の実態は、金融環境の変化の中で地域金融機関が果たすべき伴走支援と財務健全性の確保にどう取り組むかを示す事例となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)