ALPS処理水、東電の測定精度をIAEAが検証 国際比較可能な7核種すべて一致

2026年10月06日 15:56

今回のニュースのポイント

国際原子力機関(IAEA)は10月、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水のモニタリング体制を対象とした第4回研究所間比較(ILC)の報告書を公表しました。本検証は処理水の海洋放出に先立ち、東電が放射性核種の濃度を正確に測定できているかを第三者機関との比較分析によって検証したものです。東電自身に加え、IAEA傘下の2研究所、さらに中国、フランス、韓国、スイスの各研究機関が参加し、同一の処理水試料を比較分析した結果、東電が報告した測定データは正確で高い熟練度を示すと評価されました。

本文
 東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の海洋放出を巡り、放出前のモニタリングを担う東電自身の分析能力と測定データの信頼性を検証する取り組みが進んでいます。IAEAは10月、ALPS処理水を対象とした第4回研究所間比較(ILC)の成果報告書を公表し、東電が報告した分析結果について「正確で高い熟練度を示している」とする結論をまとめました。

 今回の検証に使用された試料は、2025年7月17日に福島第一原発の測定・確認設備を構成する3つのタンク群の一つである「K4-B」タンク群から採取されたものです。当時、放出基準への適合確認を条件に第15回のALPS処理水海洋放出に向けて準備されていた水(その後実際に放出)で、144時間以上にわたって撹拌・循環を行い均質化された状態で、IAEA職員の立ち会いのもと東電によって採取・封印されました。

 分析作業には東電自身のほか、モナコおよびオーストリアにあるIAEAの専門研究所と、IAEAの環境放射能測定ネットワーク(ALMERA)から選定された中国(CIRP)、フランス(ASNR)、韓国(KINS)、スイス(SPIEZ)の計4国の第三者研究機関が参加しました。同一の試料を各機関が独自の分析方法で測定し、相互比較を行いました。

 検証では東電のソースタームに含まれる30核種を中心に、このうち少なくとも2研究所で検出限界を上回る測定値が得られた13核種について統計評価が実施されました。全体で評価対象となった56件の測定結果のうち、52件(93%)が99.7%の信頼水準で相互に一致しました。IAEAはこの結果について、参加した各研究所の分析能力の高さを示すものとしています。

 東電の測定データに限定すると、参照値との定量比較が可能であった7核種(トリチウム、炭素14、コバルト60、ストロンチウム90、アンチモン125、ヨウ素129、セシウム137)のすべてにおいて、99.7%の信頼水準で参照値と一致していることが確認されました。統計的偏りを示すスコアも適正範囲内に収まっています。

 さらにIAEAは、東電が適用している分析手法の検出能力についても評価を行いました。東電が報告した検出限界は、ソースタームに含まれる各核種について、それぞれの日本の放出規制限度の1%未満でした。IAEAはこの比較から、東電が選択した分析方法は適切で、目的にかなっていると評価しました。

 なお、参加研究所全体では韓国KINSによるニッケル63の測定値で統計上の差がみられたほか、一部の微量核種で研究機関間の違いが確認されました。IAEAは高度な技術を持つ専門機関であっても複雑な処理水サンプルの分析では微細な統計的異常値が生じ得るとしており、想定の範囲内と説明しています。

 IAEAは報告書の締めくくりとして、東電が適切な試料採取手順と高い分析能力を備え、処理水の海洋放出期間中に福島第一原発で必要となる継続的な技術的要求を支える、持続可能で堅牢な分析システムを構築していると評価しました。今回の国際比較は政治的判断や安全性そのものの再認定ではなく、海洋放出の前提となるデータ測定能力の正確性を国際的な相互検証によって確認したものとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)