カナダ、洋上風力開発へ1億加ドル 海底ケーブル・州間送電を調査、民間投資促進

2026年10月16日 10:21

洋上風力発電所イメージ

洋上風力発電所と洋上変電設備を表現したイメージ。カナダ政府は洋上風力開発に1億加ドルを投じ、風況調査や州外送電の検討を通じて民間投資を呼び込む方針だ(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

カナダ政府は2026年10月15日、大西洋岸ノバスコシア州の洋上風力開発を支援するため、1億カナダドルを投入すると発表しました。同州主導の「Wind West」構想などを対象とし、浮体式LiDARブイによる風況データ収集や州外送電モデル・海底ケーブルの調査を先行して支援します。2027年冬に予定される初の入札に向け、政府が基礎調査を先行させ、民間の投資判断に必要な情報を整えることで、洋上風力発電や送電インフラへの民間投資を呼び込む狙いです。

本文
 カナダ天然資源省は2026年10月15日、ノバスコシア州沖における洋上風力発電の開発と広域送電網の構築を前進させるため、1億カナダドルを投じる政策措置を発表しました。今回の連邦政府による資金拠出は、同州が推進する洋上風力・送電構想「Wind West」などを対象とし、構想段階から開発段階への移行を加速させ、将来的な民間資本の参入を促すことを目的としています。

 洋上風力開発において、事業者が投資判断を下すには精度の高い風力データや海洋条件の把握が不可欠です。1億加ドルのうち500万加ドルは、風速や風向、波浪などを測定する浮体式LiDAR(FLiDAR)を搭載したブイの設置に充てられます。こうしたデータは、事業者が設備設計や事業採算性を評価するための基礎情報となります。

 規制当局である「カナダ・ノバスコシア洋上エネルギー管理機関(Canada-Nova Scotia Offshore Energy Regulator)」は、洋上風力プロジェクトの第1回入札(Call for Bids)を2027年冬に実施する予定です。今回の政府資金は完成した発電所への直接補助ではなく、事業入札に先立ち現場の物理的調査や初期計画を進める「前開発」投資の性格を持っています。

 本構想では、生成された電力を需要地へ運ぶ送電インフラの調査も同時に進められます。カナダ政府は研究機関「Net Zero Atlantic」へ約300万加ドルを提供し、ケベック州やオンタリオ州などへの送電可能性を分析するため、既存の電力市場モデルを拡張するとともに、送電ケーブルのルート検討を支援する海洋調査を行います。

 Wind West構想は、同州の全人口に電力を供給できる規模のゼロエミッション電力を生み出し、余剰分を新たな送電インフラで州外へ届けることを目指しています。ノバスコシア州内の需要を満たすだけでなく、新しい海底ケーブルや陸上送電網を通じてカナダ中部の需要地へ電力を供給する広域エネルギーネットワークの構築を視野に入れています。

 世界的に見ると、カナダは洋上風力の導入で出遅れています。先行する欧州・北海海域ではすでに30ギガワット(GW)を超える発電能力と数千基の風車が稼働しているのに対し、カナダ政府の資料によれば約30カ国が同国に先行して洋上風力の商用化を進めています。今回の施策は、国内での市場立ち上げに向けた環境整備として位置付けられます。

 政府の試算によると、洋上風力開発は一般論として1GWの開発あたりライフサイクル全体で約1万7,500人分の雇用を創出するとされています。入札を経て事業が本格化すれば、需要は風力タービン本体に加え、基礎構造物、海底電力ケーブル、変電設備、作業船、港湾インフラなどへ広がる可能性があります。

 今回の1億加ドルの投入は、洋上風力発電所を直接建設する資金ではありません。政府が風況・海況データの収集や送電ルートの検討を先行して行うことで、民間企業が採算性やリスクを判断しやすい環境を整える試みです。事業者が投資判断を行える情報基盤が整備できるかが、今後の民間資本の参入規模を左右することになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)