今回のニュースのポイント
欧州委員会のポータルサイト「BUILD UP」で9月10日、気候経済研究所(I4CE)の年次報告書「The State of Europe’s Climate Investment 2026 edition」が再紹介され、EUの気候・脱炭素投資の実態が浮き彫りとなりました。同報告書によると、EUにおける2025年の気候関連投資(2025年価格基準、エネルギー・建物・交通・クリーンテック製造の4分野対象)は前年比2.4%増の5,340億ユーロでした。しかし、2030年の気候目標達成に向け2026〜30年に必要とされる年間平均投資額8,780億ユーロに対し、現状は61%の水準にとどまり、年間3,440億ユーロの投資ギャップが生じています。毎年の未達成が将来のハードルを引き上げる「ムービング・ターゲット効果」が指摘されるなか、風力発電(必要額の約25%)や送電網の停滞、建物改修などで大きな投資不足がみられる一方、太陽光や蓄電池は単年の必要額を上回るなど、分野ごとの偏りが鮮明になっています。
■ 5340億ユーロ投資しても、必要額の61%
欧州委員会の建築省エネ情報ポータル「BUILD UP」が9月10日に改めて注視したI4CE(気候経済研究所)の最新報告書によれば、EU加盟27カ国における2025年の気候・脱炭素関連投資額は前年比2.4%増の5,340億ユーロ(2025年価格ベース)に達しました。2024年の減少から微増へ転じたものの、EUが2030年目標を達成するために2026〜2030年の間に必要と試算される年間平均投資額8,780億ユーロに対し、現在の投資レベルは61%にとどまっています。
この結果、年間の投資ギャップ(必要額と実績額の差額)は3,440億ユーロへ拡大しました。ギャップの推移を見ると、2022年の2,270億ユーロから2023年に2,430億ユーロ、2024年に2,990億ユーロ、2025年には3,440億ユーロへと拡大傾向が続いています。2024年から2025年にかけて450億ユーロ拡大したことについてI4CEは、毎年の投資不足が翌年以降に必要な投資額を積み上げる「ムービング・ターゲット効果(moving target effect)」を指摘しています。なお、本調査の対象範囲はエネルギー、建物、交通、クリーンテクノロジー製造の主要4分野(EUの温室効果ガス排出量の6割以上をカバー)に限定されており、財政赤字や全産業の資金不足を意味するものではありません。
■ 風力は必要額の25%、年間810億ユーロ不足
分野別で最も深刻な遅れを示しているのが風力発電です。2025年の風力発電への投資額は前年比16%増の270億ユーロと改善が見られたものの、2026〜2030年に必要とされる年間1,090億ユーロの投資額に対して約25%にとどまり、年間810億ユーロの不足が生じています。
I4CEはREPowerEU計画に基づく2030年の風力設備容量510ギガワット(GW)を基準シナリオとして投資必要額を試算しています。2025年時点の設備容量246GWに対し、この水準へ到達するには毎年平均53GWの新規導入が必要ですが、2025年の年間導入量は15GWにとどまりました。なお、510GW目標は再生可能エネルギー割合45%想定に基づく数値であり、法的拘束力のある42.5%目標に基づく業界団体WindEuropeの試算(425GW目標)を適用した場合、年間の必要投資額は840億ユーロ、投資不足は570億ユーロとなります。いずれのシナリオにおいても、現在の投資ペースからの大幅な加速が必要とされています。
■ 太陽光は22%減でも、まだ必要額を上回る
風力とは対照的な推移を見せているのが太陽光発電です。2025年の太陽光発電への投資額は、前年比22%減となる400億ユーロへ縮小しました。住宅用および産業用の需要減退が影響しています。
しかし、2026〜2030年の年間必要投資額として試算される370億ユーロに対し、2025年の投資額は依然として30億ユーロ超過しています。2025年末時点の設備容量も354GWに達しており、2030年目標である592GWに向けた軌道上にあると評価されています。ただしI4CEは、投資の減少傾向が今後も継続した場合、不足へ転じる可能性があると警告しています。
■ 送電網640億ユーロで3年間停滞
再生可能エネルギーの電力を活用するうえで不可欠なインフラ基盤でも明暗が分かれています。送電・配電網への投資額は年間約640億ユーロで推移し、3年間連続で停滞しています。2026〜2030年に必要とされる年間820億ユーロに対し、2025年の投資額は640億ユーロにとどまっています。
一方で、電力貯蔵を担う蓄電池(バッテリーストレージ)への投資は2025年に前年比20%増の170億ユーロへ増加し、年間必要額とされる160億ユーロを10億ユーロ上回りました。なお、I4CEは送電網と蓄電池を合わせた2025年の投資額を810億ユーロ、年間必要額 を980億ユーロとし、投資不足を年間170億ユーロと推計しています。
■ 建物改修・ヒートポンプ、年間1640億ユーロ不足
投資ギャップの金額において大きな割合を占めているのが建物分野です。住宅および非住宅の建物改修への投資は2025年に前年比5%減の890億ユーロへ落ち込みました。ヒートポンプの導入投資(前年比11%増の230億ユーロ)を合わせても建物関連の投資額は1,120億ユーロにとどまり、2030年目標の達成に必要な年間2,760億ユーロに対して1,640億ユーロの不足が存在します。
このうち、建物改修単体での不足額が1,270億ユーロと大半を占めています。なお、I4CEは加盟国ごとのモニタリング手法の違いやデータの制約に触れ、建物分野の数値は精密な測定値ではなく広範な投資動向を示す推計値として解釈すべきであると付記しています。
2030年までの残された期間において、投資全体が増加していても、目標達成に必要な投資水準との差は部門ごとに大きく異なっています。風力発電、送電網、建物改修といった構造的基盤における投資推移と政策的支援のあり方が、今後の確認点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













