金融防犯に残る「認証格差」 ネットの可変パスワード99.5%、生体認証カード8.7%

2026年10月17日 09:33

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各種決済カードのイメージ。金融庁の調査では、個人向けネットバンキング実施金融機関の99.5%が可変パスワードを導入する一方、生体認証機能付きキャッシュカードは発行枚数の8.7%にとどまった。(写真は資料画像)

今回のニュースのポイント

金融庁が公表した調査結果(2026年3月末時点)によると、個人向けインターネットバンキングを実施する金融機関の99.5%が可変パスワードを導入している一方、キャッシュカードの発行枚数に占める生体認証機能付きICカードの割合は8.7%にとどまりました。可変パスワードの普及率(実施金融機関ベース)と生体認証カードの割合(カード発行枚数ベース)で指標や分母は異なるものの、取引チャネルや技術によって導入状況に濃淡が見られます。また、国内デビットカードの不正取引被害を「原則補償」方針とする金融機関は90.0%となりました。

本文
 金融庁は、国内の預金取扱金融機関を対象に実施したアンケート調査「預貯金の不正送金問題等に対する対応状況(令和8年3月末)」の速報結果を公表しました。インターネットバンキングやATMにおける本人認証手段の導入状況をまとめたもので、個人向けネットバンキングを実施する金融機関の99.5%が可変パスワードを導入している一方、キャッシュカード総発行枚数における生体認証機能付きカードの割合は8.7%にとどまるなど、防犯対策の普及状況に差があることが明らかになりました。

 調査対象は主要行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、農業協同組合など国内の預金取扱金融機関です。キャッシュカード発行金融機関1,123機関におけるキャッシュカードの総発行枚数は5億7,801万1千枚、設置ATM台数は16万3,624台、個人向けネットバンキングの実施金融機関は1,080機関となっています。本調査は金融機関からの任意回答に基づくアンケートを集計した速報値(2026年3月末時点)であり、各金融機関のセキュリティ水準を評価・格付けしたものではありません。また精査により数値が修正される可能性があります。

 キャッシュカードのセキュリティ基盤となるIC化については、導入済み金融機関が全発行機関の88.3%(992機関)、IC対応ATMが全台数の98.9%(161,831台)に達しています。一方で、実際に発行されたICキャッシュカードの枚数は2億8,747万枚で、発行済みキャッシュカード全体の49.7%と約半数となっています。IC対応ATMの割合(98.9%)と、発行済みキャッシュカードに占めるICカードの割合(49.7%)では指標が異なるものの、カード自体の更新・普及には途上の面が残ります。

 さらに、生体認証機能付きICキャッシュカードの導入状況を見ると、導入済み金融機関は全体の11.3%(127機関)、対応ATMは17.0%(27,861台)でした。発行枚数は5,036万5千枚となり、キャッシュカード総発行枚数(5億7,801万1千枚)に対する割合は8.7%と1割未満となっています。業態別でカード発行枚数に占める割合を見ると、主要行等が31.5%、地方銀行が10.6%、第二地方銀行が6.7%、信用金庫が7.2%などとなっており、主要行等と地域の金融機関との間で割合に違いが見られます。

 一方、インターネットバンキングでは可変パスワードの導入が広く進んでいます。個人向けネットバンキングを実施する1,080金融機関のうち、ワンタイムパスワードなどの可変パスワードを導入している機関は1,075機関(99.5%)にのぼり、主要行、地銀、労働金庫、農漁協等で100.0%となっています。法人向けネットバンキングでも、実施1,023機関のうち98.5%(1,008機関)が可変パスワードを導入済みです。

 導入されている可変パスワードの種類(複数回答)では、個人向けにおいてパスワード生成機(トークン等)が94.5%(1,021機関)と主流を占めています。乱数表は全体の21.1%(228機関)ですが、農漁協等を除く475機関の集計では48.0%となり、特に信用金庫では実施機関の68.0%(172機関)で導入されています。ただし本調査は認証方式の採用状況を集計したものであり、金融庁が各方式の安全性評価や優劣判定を行ったものではありません。

 決済手段の防犯面として、国内デビットカードの不正利用に対する補償方針も調査されています。デビットカードを発行する963金融機関のうち、国内での不正取引被害に対して「原則補償」の方針を掲げる機関は90.0%(867機関)でした。これは実際の被害発生時における補償確率や支払率を示すものではなく、金融機関の規定上の補償方針を集計した割合です。このほか「事案により個別判断」が8.1%(78機関)、「補償しない」が0.7%(7機関)となっており、主要行等の原則補償割合が66.7%、信用金庫が80.9%、労働金庫が100.0%など、補償方針の提示にも業態ごとの違いが見られます。

 今回の調査結果は、金融機関の防犯対策が単一の仕様ではなく、ネットバンキング、キャッシュカード、ATM、被害補償といった多層的な仕組みで構成されていることを示しています。ネットバンキングにおける可変パスワードのように、実施機関の99.5%まで導入が進んだ分野がある一方で、生体認証カードの発行やデビットカードの補償方針など、顧客側への普及や運用において濃淡が残る分野も存在します。

 金融犯罪の手口が複雑化するなか、金融機関には認証技術の導入に加え、既存カードの更新や利用者への周知、不正被害が生じた際の対応まで含めた対策が求められます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)