英国の住宅建設現場をイメージした画像。英国政府は建設技能人材の確保・育成に向けた国家計画を公表し、住宅・インフラ投資を支える施工能力の強化を目指す。2025年春に発表した6億2,500万ポンドの既存支援策も活用する。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
英国政府は2026年10月19日、建設分野の人材育成と就業促進を目指す国家戦略「Construction Jobs Plan」を公表しました。政府が掲げる150万戸の住宅供給や7,250億ポンド規模のインフラ投資を実現するうえで、施工を担う技能人材の確保を重要課題と位置づけました。業界側が議会任期末までに年間10万人分の就業機会創出を目指す一方、政府は2025年春発表の6億2,500万ポンドの支援策を活用し、実習機会の提供や訓練体制の拡充を進めます。
本文
英国政府は2026年10月19日、建設産業における技能人材の確保と育成に向けた指針「Construction Jobs Plan」を公表しました。本計画は、政府が展開する大規模な住宅・インフラ投資計画を足元から支えるため、政府、業界団体、教育機関、地域当局が連携して人材供給体制を強化するフレームワークを示すものです。
英国政府は経済成長と生活基盤整備の柱として、現議会任期中に150万戸の住宅を供給するほか、10年間で7,250億ポンド規模のインフラ投資、さらに500万棟の既存建築物の改修・性能向上を推進する方針を掲げています。しかし、これらの巨額な投資目標を実際の施工に結びつけるには、現場を支える熟練技能者や技術者の確保が欠かせず、人材供給体制の整備が事業推進上の重要な課題となっています。
背景には、英国建設産業が抱える特有の構造的課題があります。政府資料によると、2025年時点の英国の建設業就業者数は約229万人ですが、そのうち約61万8,000人(27.0%)を自営業者が占めています。また、約38万5,000社存在する建設企業のうち、従業員9人以下の零細企業が約36万5,000社と全体の94.9%を占める極めて小規模な事業者主体の構造となっています。小規模事業者や自営業者は、短期契約やプロジェクト単位での受注が多く将来の仕事量を見通しにくいため、従業員を訓練に出す時間的・財務的余裕を確保しにくいという課題を抱えています。
さらに、就業者の高齢化も深刻です。建設業就業者の35.1%を50歳以上が占めており、全産業平均(33.3%)を上回っています。熟練者の退職に伴う人材の補充や技能継承が課題となっています。政府の技能需要評価では、建設関連の優先職種30種類が特定され、うち5職種で特に強い需要が発生しています。施工現場への若手入職を増やし、熟練技能を円滑に継承することが急務となっています。
こうした課題に対し、業界側の戦略主体である「Construction Skills Mission Board(CSMB)」は、議会任期末までに年間10万人分の就業機会を創出するという業界目標を打ち出しました。これを達成するため、職業訓練や実習機会の仲介支援、地域・企業・教育機関の連携、デジタル技術や工業化建築手法の活用など、10項目の重点的な取り組みを進める方針です。なお、この年間10万人という数値は業界が目指す機会創出の目標であり、政府による直接雇用や採用実績を示すものではありません。
これに対し政府側は、2025年春に発表済みの総額6億2,500万ポンドの建設技能支援策「Construction Skills Package」を通じて後押しします。同支援策には、16歳以上の学習者を対象とした年間4万件の企業実習機会の提供、最大1万人分の基礎見習い制度枠の設置、短期集中技能訓練「Skills Bootcamps」での追加3万5,000人分の受講枠確保、さらに建設技術教育の中核となる「Construction Technical Excellence Colleges」10校の設置支援などが含まれています。
巨額の投資計画を掲げる英国において、今後の焦点は、公的支援によって設けられた各種の訓練枠や実習機会が、実際の現場での継続的な雇用や技能定着にどこまで結びつくかに移ります。案件見通しの明確化や小規模企業への訓練負担軽減を含め、現場の施工能力を実効的に拡大できるかが問われています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













