英独、防衛装備の共同開発・調達を協議 長距離打撃計画と産業基盤を確認

2026年10月17日 11:15

イギリスとドイツの国旗イメージ

英国とドイツの国旗。両国はロンドンで防衛装備・能力協力に関する閣僚級会合を開き、長距離精密打撃計画や防衛産業協力の進捗について協議した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

英国とドイツの両政府は、ロンドンのランカスター・ハウスで防衛装備・能力協力に関する閣僚級グループ(MECC)の会合を開催し、10月16日に英国防省が協議内容を発表しました。両国は射程2,000km超を目指す長距離精密打撃能力(DPS)計画や共同調達、産業基盤の強化について進捗を確認しました。今回の会合での新たな大口契約の決定はありませんが、枠組みの策定から実証試験、そしてRCH 155自走砲に代表される具体的な量産調達へと至る英独の防衛協力の歩みが再確認されました。

本文
 英国防省は10月16日、英国のルーク・ポラード国防即応・産業担当相とドイツのイェンス・プレトナー国務次官らが参加する防衛装備・能力協力の閣僚級グループ(MECC)の会合が、前日の15日にロンドンのランカスター・ハウスで開かれたと発表しました。両国政府および防衛産業の関係者が集まり、共同で進めている能力開発計画の進捗状況や、今後の産業協力における優先課題について協議が行われました。

 今回の英国防省発表では、新たな装備調達契約や巨額の投資決定は公表されておらず、既存の共同開発計画や二国間協力を円滑に進めるための実務的な進捗確認の場として位置付けられています。会合では、主たる協力案件として長距離精密打撃能力(DPS)構想が取り上げられたほか、在英ドイツ大使館で産業界との対話も実施され、英国のロールス・ロイスやドイツのハイパーソニカなどの幹部が意見を交わしました。

 英独間の防衛産業協力は、段階を追って制度化が進められてきました。2024年10月23日に署名された「トリニティ・ハウス協定」では、長距離精密打撃や陸上装備、無人システム、海底インフラ防衛などが広範な協力分野として設定されました。この際、DPSについては短期的な共通要求性能の策定と産業協力の検討、中長期的な共同開発・共同調達を目指す方向性が示されていました。

 さらに2025年7月17日に署名された英独友好・二国間協力条約(ケンジントン条約)により、防衛能力の共同開発や相互運用性の向上、産業競争力の強化が二国間関係の包括的な柱として明確に組み込まれました。この条約に付随する共同事業の枠組みの中で、DPSは射程2,000km超の分野において英独が主導的な役割を果たす方針が示されています。

 DPS計画については、2026年3月の英独協議において、2030年代の実用化を見据え、当初は地上発射型を先行させつつ将来的に航空・海上用途への拡大や極超音速技術等の導入を検討する方向性が提示されています。また、2026年7月には英国、ドイツ、フランスを含む欧州12カ国が、今後10年間でDPS分野全体へ総額506億6,000万ドル規模の投資を行う意向を表明するなど、多国間の協力枠組みへと発展を見せています。これは12カ国によるDPS能力全体への投資意向であり、英独単独の開発契約額や支出済み資金を示すものではありません。

 一方で、英独の防衛協力においては、開発構想段階にあるDPSとは異なり、すでに具体的に契約が成立し、製造・調達段階へ進んでいる装備も存在します。155mm装輪自走砲「RCH 155」に関するプロジェクトがその代表例です。2025年12月に5,200万ポンド規模の実証試験契約が結ばれたのに続き、2026年5月13日には、国際共同装備協力機関(OCCAR)が英国陸軍に代わり、KNDSとラインメタルの合弁企業ARTEC GmbHに対して、初期訓練や運用支援を含む英国向け72両を対象とする約10億ポンドの契約を発注したと発表されました。

 このRCH 155の調達計画では、ラインメタル(Rheinmetall)の英国テルフォード施設で砲身などの兵器システムが製造され、KNDS UKのストックポート施設でBOXER装甲車の駆動モジュールが製造される予定です。さらにシェフィールド・フォージマスターズ製の英国産鋼材の使用が計画されており、英国国内で少なくとも500人規模の雇用を支える見通しとなっています。初回納入は2028年を予定しています。

 このように、英独の防衛装備協力には、政府間の協力枠組みの整備(トリニティ・ハウス協定やケンジントン条約)、中長期的な開発目標と投資意向の提示(DPS)、そして実際の調達契約と国内製造体制の整備計画(RCH 155)という、異なる進捗段階のプロジェクトが並行して存在しています。

 10月16日に発表された協議は、こうした段階的な取り組みを定期的に検証し、将来の防衛生産能力を確実にするための実務プロセスといえます。今後は、2030年代の実用化を目指すDPSにおいて、具体的にどのような企業共同体や開発日程、製造分担へと落とし込まれていくかが焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)