輸出増でも貿易赤字が続く日本 9月統計にみるエネルギー輸入と米中貿易の変化

2026年10月21日 12:07

タンカー船イメージ

海上を航行するタンカー船のイメージ。2026年9月の日本の貿易統計では、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が前年同月を上回りました。輸入金額と数量の動きには違いがみられ、貿易収支を読み解くうえで重要なポイントとなっています。(イメージ画像)

今回のニュースのポイント

財務省が10月21日に発表した2026年9月分貿易統計(速報)では、輸出額が前年同月比16.7%増となった一方、輸入額は18.9%増え、5,365億円の貿易赤字となりました。輸入数量指数は1.6%減少しており、金額と数量の動きに違いが見られます。半導体関連の輸出が伸び、原油や液化天然ガスの輸入額も増加しました。自動車輸出は米国向けが増えた一方、中国向けは大幅に減少し、仕向け先による違いが鮮明になりました。

本文
 財務省が2026年10月21日に発表した「令和8年9月分貿易統計(速報)」では、輸出額が前年同月比16.7%増の10兆9,723億円を記録した一方で、貿易収支は5,365億円の赤字となりました。輸出が堅調に推移しているにもかかわらず、なぜ貿易赤字が続くのでしょうか。この背景を読み解くには、総額の比較にとどまらず、輸入額の膨張要因、金額と数量指数の乖離、品目ごとの構成、さらには米国や中国といった主要相手国別の動向を掘り下げて確認する必要があります。

 貿易収支は単純に輸出額から輸入額を差し引いて算出されます。9月は輸出額が10兆9,723億円(16.7%増)と13カ月連続で増加したものの、輸入額が11兆5,088億円(18.9%増)と8カ月連続で増加し、その伸び率が輸出を上回りました。輸出金額の規模が拡大していても、それを上回る規模で輸入金額が膨らめば貿易収支は赤字になります。9月の赤字額は5,365億円となり、前年同月の2,777億円から赤字幅が93.2%拡大しました。

 今回の統計で極めて特徴的なのは、輸入における「金額」と「数量」の動きの違いです。全国の輸入金額が18.9%増加したのに対し、輸入数量指数は前年同月比で1.6%減少しています。品目別に見ると、原油及び粗油は輸入金額が51.1%増(約1兆1,102億円)で数量も3.1%増となりましたが、液化天然ガス(LNG)は輸入金額が39.2%増(約5,906億円)となった一方で、輸入数量は7.3%減少しました。このように、輸入数量が減少していても輸入金額が増加する品目があり、金額の伸びが必ずしも取引数量の増加を意味しないことが分かります。

 輸出側に目を向けると、半導体関連品目が全体の牽引役となっています。品目別の輸出金額では、半導体等電子部品が前年同月比49.4%増、半導体等製造装置が43.9%増と大幅に伸長しました。例えば集積回路(IC)を見ると、輸出金額は前年同月比55.5%増と大きく伸びていますが、輸出数量の伸びは14.1%増にとどまっています。金額ベースの大幅な伸びが、そのままの割合での数量増加を意味しているわけではない点に留意が必要です。

 日本の主要輸出品目である自動車でも、金額と数量の動きに隔たりが見られます。全国の自動車輸出は、金額ベースで前年同月比15.1%増(約1兆7,191億円)と伸びたものの、輸出台数ベースでは0.5%の微減となりました。全般的な自動車輸出金額の増加は、必ずしも海外へ出荷された台数の増加を直接的に意味するものではありません。

 さらに、自動車輸出の動向は仕向け国・地域によって明暗が大きく分かれています。対米国向けの自動車輸出は金額が前年同月比31.0%増(約4,762億円)、台数も6.3%増と揃って増加しました。これに対し、対中国向けの自動車輸出は金額が前年同月比59.8%減(約374億円)、台数も64.3%減と大幅な落ち込みを見せています。同じ自動車輸出でも、米国向けと中国向けでは、金額・台数ともに対照的な動きとなっています。

 地域別の貿易収支全体を見ても、相違が際立ちます。米国向け貿易は輸出が22.9%増の1兆9,630億円となったものの、輸入が44.8%増の1兆5,702億円と大きく伸びたため、貿易黒字は3,928億円と前年同月比で23.4%縮小(10カ月連続縮小)しました。一方、中国向け貿易は半導体等製造装置の輸出が14.3%増えたものの、輸入額が2兆7,572億円(16.4%増)に達し、貿易赤字は1兆272億円(32.5%拡大、66カ月連続赤字)となりました。9月は対米貿易黒字の縮小と対中貿易赤字の拡大が同時に進み、相手国によって収支の動きが異なることが分かります。

 月別推移を確認すると、全国の貿易収支は2026年5月以降5カ月連続で赤字が続いています。ただし、8月の赤字額(1兆1,119億円)と比較すると9月の赤字額(5,365億円)は縮小しており、赤字が一方的に拡大し続けているわけではありません。9月の統計は、半導体などの輸出が増加する一方、原粗油や液化天然ガスなどの輸入額も増え、輸入全体の伸びが輸出を上回ったことを示しています。今後は輸出品目の数量・金額の推移に加え、資源価格や為替水準の変化が輸入額と全体の貿易収支にどう作用していくかが注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)