NTTとJAXA、低軌道衛星の通信容量を約2.67倍に 同一周波数でIoT信号の同時受信も実証

2026年10月24日 17:43

小型衛星イメージ

地球上空を周回する低軌道衛星のイメージ。NTTとJAXAは、MIMO技術による衛星通信の伝送容量向上と、同一周波数で送信されたIoT信号の同時受信に成功したと発表した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

NTTとJAXAは10月23日、低軌道衛星を用いた通信実験において、複数アンテナを活用するMIMO技術により通信の伝送容量を大幅に拡大できることを実証したと発表しました。3×3 MIMOでは従来の単一アンテナ方式比で平均約2.67倍、2×2 MIMOで同約1.94倍の伝送容量を確認しました。さらに、地上の異なる2地点から同一周波数で同時送信されたIoT信号を衛星側で分離・復調することにも成功しました。商用化前の技術実証段階の成果です。

本文
 日本電信電話株式会社(NTT)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2026年10月23日、低軌道衛星を活用した通信技術の実証実験において、通信の大容量化と地上からのIoT信号の効率的な受信に成功したと発表しました。複数の送受信アンテナを組み合わせる「MIMO(マイモ)」技術を用いた実験では、従来の単一アンテナ方式と比較して平均約2.67倍の伝送容量を達成しました。あわせて、地上の異なる地点から同一の周波数で同時に送信された複数のIoT信号を衛星側で分離して正しく復調できることも確認しました。

 今回の伝送容量拡大で用いられたMIMO実証は、衛星から地上基地局への通信を対象として実施されました。送信側の衛星と受信側の地上局にそれぞれ複数のアンテナを配置し、同一の周波数帯の中で複数の異なるデータ信号を空間的に多重化して送信し、地上の複数の受信アンテナを用いて信号を分離・合成する仕組みです。地上の携帯電話網などでは広く普及している技術ですが、高速で周回する低軌道衛星からの下り通信に適用することで、衛星の数や割り当てる電波帯域を増やさず、電波資源の利用効率を大幅に高められる利点があります。

 実験ではアンテナの系統数を変えて性能検証が行われました。送受信にそれぞれ2系統のアンテナを用いた「2×2 MIMO」では、従来の単一アンテナ方式と比べて平均約1.94倍の伝送容量を確認しました。さらに、送受信を3系統に増やした「3×3 MIMO」の実験では、同条件比で平均約2.67倍の伝送容量を記録しました。なお、これらの数値は特定の実験環境下におけるデータ伝送容量の倍率を示したものであり、衛星通信網全体の通信速度が一律に2.67倍へ向上したことや、商用環境における恒常的な速度改善を意味するものではありません。

 一方、もう一つの重要な成果であるIoT実証は、MIMO実証とは逆に、地上から衛星に向けて電波を送信する通信を対象としています。今回の実験では920MHz帯の電波を使用し、地上の異なる2地点に設置した端末から、あえて全く同じ周波数を用いて同時にIoT信号 を上空の低軌道衛星へ向けて送信しました。衛星側で受信した電波を信号処理により解析した結果、互いに干渉し合う2つの信号を空間的に分離し、それぞれのデータを正常に復調することに成功しました。限られた周波数帯であっても、複数の地上端末が同時に通信を行える技術的基盤を示した形です。

 低軌道衛星は地球の周囲を高速で移動するため、地上との通信では衛星の移動を踏まえた技術的な対応が必要です。今回、実際の衛星を利用してMIMOによる伝送容量の向上とIoT信号の分離・復調を確認した点に、研究開発上の意義があります。この一連の研究開発は2026年3月から軌道上の実証実験が進められてきたもので、今回その検証データが整理され公式な成果として発表されました。ただし、本発表は要素技術の有効性を確認した実証成果であり、商用通信サービスの提供開始を告げるものではありません。

 将来的な応用先としては、地上の通信基地局や光ファイバー網の敷設が地理的・経済的に困難な遠隔地でのインフラ補完が期待されています。例えば、広大な海洋上を航行する船舶の運行管理、山間部のインフラ施設や農業用設備の遠隔監視、自然環境のモニタリングなど、広域に点在するIoT機器のデータ収集を宇宙から一括して担うネットワークの構築が想定されます。ただし、今回の発表において具体的な導入案件や運用コストの削減額、通信料金などは開示されていません。

 伝送容量の向上と、同一周波数で送信された2地点のIoT信号の分離・復調という二つの成果は、将来的な衛星通信の大容量化やIoT端末の効率的な接続に向けた技術的な一歩となります。逼迫する電波資源を有効活用し、低軌道衛星通信の伝送効率を高める可能性が示されました。今後の実用化に向けた技術開発の進展が注目されますが、商用化の具体的な時期や投資規模、事業採算性については今回の発表で明らかにされていません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)