失業率2.4%に低下、就業者増の内訳は 非正規47万人増と医療・福祉の雇用拡大

2026年10月30日 11:59

画・外食不況。ファストフード、ファミレスは回復傾向。居酒屋は未だ4割と回復の兆し見えず。

飲食店の厨房と客席。2026年9月の労働力調査では、宿泊業・飲食サービス業の就業者数が前年同月より21万人減少した(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

総務省が公表した2026年9月の労働力調査では、完全失業率(季節調整値)が2.4%へ低下し、就業者数(季節調整値)は前月比34万人増の6,868万人となりました。しかし原数値の前年同月比を分解すると、正規雇用の23万人増に対し非正規雇用は47万人増と伸びが上回り、自営業主・家族従業者は33万人減少しました。産業別でも医療・福祉が29万人増となる一方、宿泊・飲食は21万人減少し、働き方や業種による雇用の変化が浮き彫りとなっています。

本文
 総務省統計局が2026年10月30日に公表した9月の労働力調査(基本集計)によると、完全失業率(季節調整値)は2.4%となり、前月から0.1ポイント低下しました。また、季節調整済みの就業者数は6,868万人で前月比34万人増加し、完全失業者数は167万人で同10万人減少しました。主要な雇用指標は単月で改善の動きを示しています。しかし、労働市場の実態を捉えるには、失業率の低下という表面的な動きにとどまらず、就業者数の増加を構成する要素を雇用形態、男女別、産業別に分解して検証することが重要です。

 就業者全体の増加を雇用形態別(原数値・前年同月比)にみると、正規雇用と非正規雇用でペースに差が生じています。役員を除く雇用者のうち、正規の職員・従業員は3,783万人で前年同月比23万人増加しました。35カ月連続の増加であり、正規雇用の底堅さを示しています。一方、非正規の職員・従業員は2,138万人で同47万人増加し、6カ月連続の増加となりました。正規・非正規の双方が増加しているものの、増加人数は非正規の方が大きくなっています。役員を除く雇用者に占める非正規の割合は36.1%となり、前年同月より0.4ポイント上昇しました。ただし、単月の増加幅だけで雇用の質が悪化したと判断することはできません。

 非正規雇用の内訳を詳細に確認すると、雇用形態ごとに異なる動きがみられます。公表資料の表2によると、最も人数の多い「パート」は1,030万人で前年同月比7万人増にとどまりました。一方、伸びが目立ったのは「アルバイト」の494万人(同17万人増)と、「契約社員」の280万人(同16万人増)です。この2形態だけで非正規雇用の増加分の約7割を占めています。「労働者派遣事業所の派遣社員」は154万人で同1万人減少しました。非正規雇用を一括りに捉えるのではなく、パートの小幅増や派遣の減少に対し、アルバイトや契約社員の増加が全体を押し上げている実態を踏まえる必要があります。

 今回の統計で注目されるのが、従業上の地位別における「自営業主・家族従業者」の減少です。9月の就業者数(原数値)は6,896万人で前年同月比33万人増となりましたが、企業などに雇われて働く「雇用者」が6,265万人と前年同月比64万人増加した一方、「自営業主・家族従業者」は605万人にとどまり、同33万人減少しました。働く人全体の増加と、雇用されて働く人の増加は同じではありません。就業者全体が33万人増加する中、自営業主・家族従業者は減少した一方、雇用者はそれを上回る規模で増加しており、従業上の地位によって異なる動きがみられました。ただし、自営業主などの減少が直接会社員への転職につながったのか、高齢化による廃業等によるものかといった個人の移動経路は、本統計だけでは確認できません。

 性別と年齢層の動向では、女性の就業増加が顕著です。原数値の就業者数は、男性が3,719万人で前年同月比9万人増であったのに対し、女性は3,177万人と同24万人増加し、増加人数の7割以上を女性が占めました。15~64歳の就業率(原数値)をみても、男性が84.8%で前年同月比0.2ポイント上昇だったのに対し、女性は76.7%と0.9ポイント上昇しました。女性の就業者数と就業率の上昇幅は男性を上回っています。なお、女性就業の拡大が育児支援施策や社会保険制度改革の効果によるものかを断定するには、別途根拠が必要です。

 産業別の就業者数(原数値・前年同月比)では業種間の違いが鮮明です。就業者が増加した業種では「医療・福祉」が前年同月比29万人増の967万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が同14万人増の497万人、「情報通信業」が同8万人増の308万人、「製造業」が同6万人増の1,036万人となりました。一方、減少が目立ったのが「宿泊業・飲食サービス業」の408万人(同21万人減)と「建設業」の475万人(同15万人減)です。医療・福祉が29万人増える一方、宿泊・飲食が21万人減少しており、産業によって増減が分かれています。ただし、就業者数の増減から業種ごとの需要や企業業績を直接判断することはできません。

 失業者側の求職理由別の内訳にも変化がみられます。原数値の前年同月比では、完全失業者が15万人減少する中、「自発的な離職(自己都合)」が72万人で9万人減、「勤め先や事業の都合による離職」が20万人で3万人減、「新たに求職」が49万人で1万人減となりました。一方、季節調整値の前月比をみると、自発的な離職(自己都合)を理由とする完全失業者は13万人減少した一方、非自発的な離職を理由とする完全失業者は1万人増加しました。前年同月比と季節調整値の前月比では失業理由の動向に違いがみられます。これらをもって転職が減った、あるいは企業都合の失業が増加傾向に転じたと断定することは避けるべきです。

 これらの統計結果は、日本企業と労働者に異なる意味を持ちます。企業にとって、就業者総数が増加しているからといって、自社が必要とする職種や雇用形態で人材を確保できているとは限りません。医療・福祉で就業者が増える一方、宿泊・飲食や建設業では減少しており、業種ごとの労働力の動きには偏りがあります。働く人にとっても、正規・非正規の人数や就業率の変化は、賃金水準や労働時間、雇用の安定性を直接示すものではありません。雇用者数の増加と労働条件の改善は区別して捉える必要があります。

 9月の労働力調査は、完全失業率が2.4%に低下し、就業者数も季節調整値で前月から34万人増加するという良好な全体指標を示しました。しかし前年同月比の構造を点検すると、正規雇用23万人増に対し非正規雇用は47万人増加し、自営業主・家族従業者は33万人減少していました。産業別でも、医療・福祉が29万人増加したのに対し、宿泊業・飲食サービス業は21万人減少しています。「働く人が増えた」という一つの数字の内側で、働き方と働く産業の構成が異なる方向に動いている点こそが、9月の統計が示す実態です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)