日銀、9月利上げで委員2人が反対 物価2%到達の認識にも温度差、議事要旨公表

2026年11月05日 14:39

日銀5

日本銀行本店。2026年9月の金融政策決定会合では、政策金利の引き上げを賛成7、反対2で決定した。(資料写真)

今回のニュースのポイント

日本銀行が2026年11月5日に公表した9月17~18日開催の金融政策決定会合議事要旨によると、政策金利を従来の1.0%程度から1.25%程度へ引き上げる決定は賛成7、反対2の賛成多数でした。浅田・佐藤両委員が経済・物価の慎重な見極めを求めて利上げに反対した一方、利上げに賛成した高田・田村両委員は物価2%への到達認識について異論を示しました。AI需要や原油高、為替動向が物価リスクとして議論されました。

本文
 日本銀行は2026年11月5日午前8時50分、2026年9月17~18日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の議事要旨を公表しました。同会合で日銀は、無担保コールレート(オーバーナイト物)を従来の1.0%程度から0.25ポイント引き上げ、1.25%程度で推移するよう促す金融市場調節方針を賛成多数で決定しました。採決結果は、植田和男総裁、氷見野良三副総裁、内田眞一副総裁、高田創、田村直樹、小枝淳子、増一行の各審議委員の7人が賛成し、浅田統一郎、佐藤綾野両審議委員が反対する「賛成7、反対2」でした。金融緩和の度合いの調整を進める多数派に対し、国内経済や物価の動向を慎重に見極めるべきとする反対意見が記録されています。

 利上げ議案に反対した2人の委員は、景気の現状や物価の加速感に対する慎重な見解を主張しました。浅田委員は、足もとの生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)上昇率が2%を下回り、国内経済の状況も必ずしも強いとはいえない点を踏まえると、政策金利を据え置くことが望ましいと主張しました。6月に続く連続的な引き上げが国内の生産や雇用、実質所得を下振れさせかねないとの懸念を示しています。また佐藤委員は、経済・物価情勢がこれまでと比べて大きく加速している状態にあるわけではないと指摘しました。予想物価上昇率の定着度合いや個人消費を見極めるにはもう少し時間が必要であり、この時点での利上げは適切ではないと主張しました。景気と物価の現状判断を巡る委員間の違いが浮き彫りとなっています。

 利上げ自体に賛成した委員の間でも、物価2%目標への到達認識を巡って温度差が顕在化しました。対外公表文の物価見通しについて、高田委員は基調的な物価上昇率を含め、消費者物価がすでに物価安定目標におおむね達する水準にあると主張しました。田村委員も、基調的な物価上昇率は2%目標とすでに概ね整合的な水準で推移しているとの認識を示し、物価上昇率が「徐々に高まっていく」とする執行部案に異論を表明しました。この意見は公表文の脚注に記録されたものの、対外公表文自体は全員一致で採決・決定されています。同じ会合で、浅田・佐藤両委員は利上げの実施時期に反対し、高田・田村両委員は物価2%目標への到達認識を巡って公表文の一部記述に異論を示しました。

 情勢分析では、世界的な人工知能(AI)関連需要の影響が議論されました。委員は、旺盛なAI需要が日本の輸出や鉱工業生産の持ち直しを後押しし、企業収益を高水準に支えていると評価しました。設備投資に関しても、半導体製造装置やデータセンター向けの増強投資に加え、非製造業での電力関連投資の増加など幅広い波及効果が分析されています。一方で、需要集中が最先端半導体や銅などの需給逼迫を招き、企業間取引の価格を押し上げている点も指摘されました。これが耐久財をはじめとする消費者段階の製品価格に波及し、物価の上振れ要因になり得るというリスクも共有され、AI需要には景気下支えとインフレ圧力の両面がある構図が確認されました。

 また物価動向を巡っては、中東情勢の緊迫化に伴う原油高と企業物価の波及経路が検討されました。原油価格の上昇が交易条件悪化を通じて景気を下押しする一方、輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げるリスクが議論されました。会合時点で利用可能だった8月の国内企業物価指数(速報値)は前年同月比7.6%の高い伸びを示し、石油・石炭製品など川上の値上げ一服後も、プラスチック製品など川中・川下への価格転嫁が広がっている現状が確認されました。また、物流費の上昇には人件費転嫁の動きもみられます。委員は、賃金上昇が販売価格に転嫁され、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇する好循環が維持されるかが、基調的物価の安定的な定着の判断材料になると指摘しました。

 先行きの政策運営について政策委員会は、基調的な物価上昇率が2%に近づくなかで金融環境が依然緩和的であることを踏まえ、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針で一致しました。その際、中東情勢やAI関連需要、為替相場などが経済・物価に及ぼす影響を点検し、政策金利の調整を判断する必要があるとの認識が示されました。なお本会合では、気候変動対応を支援する資金供給オペレーションについて、貸付金利を変動金利に変更し、貸付総額の上限を50兆円、先ごとの上限を10兆円とすることなどを全員一致で決定しています。日銀はその後、10月29~30日の会合で政策金利を1.25%程度に据え置きました。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)