成熟市場を拡大させる、日系メーカーの積極展開

2013年04月13日 19:59

 アジアで全世界の9割が生産され、その多くが各国の国内で供給されている自動二輪車市場。しかし、ローン規制により2012年度の生産台数が前年度割れとなった、生産台数世界3位のインドネシアを筆頭に、市場が成熟しつつある国・地域も増加している。総需要が年間200万台ほどで推移するタイでは、市場が成熟状態にあると言われる中、2012年には過去最高となる約213万台に達するなど、大きな伸張はないものの微増傾向が続いている。そのためメーカー各社が、市場の維持拡大を図るため、これまで以上の注力を進めている。

 例えばホンダ<7267>は、昨年11月からグローバルモデル用新工場の本格稼働を開始。タイをハブとして、アジア地域だけでなく、欧州、北米、オーストラリアなど幅広い地域への輸出を予定している。さらに今年1月には、新型スポーツモデル「MSX125」の生産・発売を発表。若者をターゲットに「ジャストサイズ&魅せるスペック」をコンセプトとして開発された本商品は、コンパクトでありながら大型スポーツモデルのようなボリューム感と躍動感を強調している。なお、このMSX125も、グローバルモデルとしてタイから各国に輸出する計画となっている。

 またヤマハ発動機<7272>も、2006年に初代を発売して以来、7年間で累計約150万台を販売している「FINO(フィーノ)」をフルモデルチェンジして今年3月下旬から発売。機能性とデザインの両立を求めるタイ市場の嗜好に応えるため「スタイリッシュ&スマート FINO FI」をコンセプトに、FI採用による低燃費化に加えデザインや実用機能を大きく進化させているという。さらに、経済性、快適性能(低振動化、始動性向上)を高めた新エンジンに加え、アンサーバック機能を備えた多機能リモコンキーをヤマハ製アセアンモデルとして初めて採用するなど商品性も向上させており、タイ国内で年間24万台の販売を計画している。

 EUの新一般特恵関税(GSP)規則により、タイは2015年1月からGSPの適用対象外となる可能性が高い状況にある。EU・タイ自由貿易協定(FTA)の交渉開始が発表されたものの、GSP適用対象外となれば、タイから欧州向けに輸出する日系企業にとっても大きな痛手となる。その為、同FTAの早期締結と同時に、タイ国内市場維持拡大の重要性が増していると言える。こうした中、タイの自動二輪車市場は、上記ホンダとヤマハでその9割以上を占める。その2社が成熟状態にある同市場において市場拡大に向けた取り組みを続けている。その取り組みの方向性や指針、方法論は、他の産業にとっても手本となるものになるのかもしれない。(編集担当:井畑学)