主権回復・国際社会復帰を記念する式典が近づいている。サンフランシスコ講和条約が発効した「4月28日」にあわせ、政府主催で28日に催される。
沖縄は米国施政下に置かれ「屈辱の日」だと式典開催に反対の意を示している。沖縄同様に米国施政下におかれた奄美や小笠原も心境としては複雑ではないか。そして、主権回復を考える時、終戦の日から今も引きずっている問題がある。靖国神社でのA級戦犯合祀問題や靖国神社とは別に無宗教戦没者追悼施設の建設是非の未解決がそのひとつ。
今月16日の衆議院予算委員会で日本維新の会の西村眞悟議員は「総理大臣が靖国神社に参拝できない国に日本を取り戻すことはできない」「靖国神社を忘れて日本は取り戻せない」と冒頭にあげた。
「(総理は訪米時に、日本と戦った将兵が眠る)アーリントン墓地に参拝できて、わが国祖国のために命を捧げた霊の祀られている靖国神社に参拝を無視することは許されない」と強く総理の靖国神社参拝を求めた。「これから8月15日まで、毎朝、参拝されてはいかがか」と。
安倍総理は「自民党総裁に就任して靖国神社に参拝したが、国の為に戦われて亡くなられた方に敬意と感謝を込めてご冥福をお祈りするのは当然のことだと思う。しかし、この問題が外交的・政治的な問題になっているのも事実だ」と答え、「この場で、わたしは(参拝に)行く、行かないということを申し上げて、外交問題にするつもりはない」と総理として国際関係を見据えた対応の必要を滲ませた。
安倍総理の心境は「外交問題にするつもりはない」とはっきり答弁したあと、直ぐ「前回、総理であったとき(第1次安倍内閣時代)任期中に靖国神社に参拝できなかったことは痛恨の極みだと思っている」と語ったことからも伺え知ることができる。
総理の靖国神社参拝が国際問題になるのは極東国際軍事裁判(東京裁判として知られる)でA級の戦争責任者となった東条英機らが合祀されているからであり、日本人遺族の中にも合祀には賛同していない人もいるといわれている。
昭和天皇も合祀に違和感をお持ちで、不快感さえ持っておられたようだ。それは、当時、宮内庁長官だった富田朝彦氏が昭和天皇の発言をメモした手帳のメモでも知られるところとなった。天皇の靖国神社親拝は昭和50年を最後に行われていない。
合祀は昭和45年に崇敬者総代会で決定されたといい、すぐに合祀されなかったものの、新宮司のもとで昭和の殉難者として合祀されたという。
靖国神社が宗教法人であることから、政府が合祀しないよう強制することはできないが、歴史的背景や今も総理や閣僚が参拝することが国際問題になったり、総理が閣僚に「閣僚にある間は参拝を自粛するよう」要請しなければならないような事情を考えれば、政治上・外交上の問題として宗教法人であるとはいえ、合祀をやめるよう要請することは可能ではないか。
一方、靖国神社が一宗教法人であることから、戦没者の中には多くの他宗教の信者がおり、国立の無宗教の戦没者追悼施設を設けるべきとの考えは今も健在だ。総理が2月22日(日本時間で23日)に参拝したアーリントン墓地はあらゆる宗教・宗派のよる埋葬を許しており、いわば宗教の枠を超えた国立の戦没者慰霊施設だ。主権国家回復の日を考える中で、こうした類の国立の追悼施設の是非も含め、合祀問題解決など、総理、閣僚が堂々と就任時に参拝できる環境づくりを議論すべき時期にきているのではないか。国会での議論が望まれる。(編集担当:森高龍二)