政府は規制改革の実施計画を14日、閣議決定した。経済再生への阻害要因になっている規制をなくし、民需主導の経済成長につなげる「最重要課題のひとつ」と政府は閣議決定の文言にも明記した。規制をなくすことには既得権益勢力が横槍を入れるのは世の常だが、所管省庁は消費者にとってどうなのかの目線で迅速な計画実施を遂行していただきたいものだ。
政府が決めた規制改革の重点分野は「エネルギー・環境」「保育」「健康・医療」「雇用」「創業など」の5分野。
そこで、分野別の規制改革の観点をみてみた。エネルギー・環境では、安定供給と地産地消への取り組みを筆頭にあげている。次いで、次世代自動車の世界最速普及をめざし、燃料電池自動車の世界統一技術基準の確立においてもリーダーシップを発揮するとした。低炭素社会と循環型社会の推進についても新たな経済成長への機会として、推進を図るとしている。
具体的な電力システムの改革では広域系統運用機関を平成27年をめどに設立させる。28年をめどに電気の小売業への参入全面自由化を実施する。法的分離による送配電部門の中立性の確保と電気の小売料金の全面自由化の3つの柱を中心とした改革を平成30年から32年までをめどに実施するなどをあげた。経済産業省には既得権益業者や業界からの政治力を使った横槍に屈せず、速やかに実現することを願う。
また、新たな電力発電として風力発電設備設置の農地転用制度の取り扱いについては今年度に結論を得るとしているが、農林水産省は風力発電のための農地利用が農家にとってもプラスになることを踏まえた大胆な判断を期待したい。
次いで、保育分野については保育の受け皿確保へ、人的には「保育士」の確保が急務としている。厚生労働省では、そのため保育士試験の合格科目の免除期間を3年から5年に、保育士試験の回数を年1回から2回に、保育士登録申請から登録証交付までの期間の迅速化などをいずれも今年度中に検討し、結論を出す。ただ合格科目の免除期間延長や1年での複数回数の試験実施が保育士の粗製濫造につながらないか、その方法には慎重な検討が求められる。
また健康・医療分野では一般用医薬品をネット販売することを認めることが安倍晋三総理からも明言された。稲田朋美規制改革担当大臣も「安全性を確保しつつ、全ての医薬品の販売を認めるという方針に変わりない」と記者会見で語った。
問題は安全性の確保のための適切なルールづくり。厚生労働省は医薬品は対面販売が原則としてきたが、規制改革勢力に押し切られた格好だ。スイッチ直後の品目など副作用リスクの特に高い医薬品については特に注意が必要だが、そのための新ルールが合理的・客観的に誰の目にも納得のいくものになるように期待したい。秋頃には結論とともに制度的な措置がとられることになる。
働く者にとって無関心でいられないのが雇用。これについては労働者派遣制度の見直しをはじめ、ジョブ型正社員の雇用ルールの整備、企画業務型裁量労働制やフレックスタイム制など労働時間法制の見直しを重点にしている。
職務などに着目した多様な正社員モデルの普及・促進のための雇用管理上の留意点のとりまとめを今年度に開始。来年度に措置するとしているが、雇用関係では弱い立場の「労働者の視点から留意点に着目すること」が望ましい。今回は多岐にわたって規制改革の具体的な案件が掲げられた。それらひとつひとつの結論を注視していきたい。(編集担当:森高龍二)