3気筒850ccが欧州向けの新プラットフォーム

2013年06月16日 18:49

MT640

「MT-09」(2014年欧州モデル)2013年9月前半発売。メーカー希望小売価格7790ユーロ(イタリアでのVAT込み価格/価格は各国で異なる)

 国内の二輪メーカー各社は、ここにきて幅広いユーザー層に向けてラインナップを拡充させている。それは、国内の二輪マーケットが2006年の排出ガス規制や駐車場不足の問題などにより、ラインナップの減少や車両本体価格の上昇をおこし急激に減少したものを取り戻すためだ。2010年以降はニューモデルの投入や女性ユーザー、購買力の高いシニア層が下支えしたことで、国内需要は下げ止まり傾向にある。近年、休日になれば、ライディングギアをまとったシニアライダーをよく目にするようにもなった。2013年の二輪車国内総需要は44万6000台と、前年比100.8%の見込みだという(日本自動車工業会しらべ)。

 そのような中で、二輪メーカー各社が欧州市場に目を向けた製品を投入する機会が増え、中でも近年伸長傾向にあるのが、メインカテゴリーでもある「ロードスポーツ」クラス(700~999cc)だ。

 ヤマハ発動機<7272>は、850cc水冷4ストローク直列3気筒という、新プラットフォームを組み込んだ、「MT-09」を欧州向けに今秋発売する。“Synchronized Performance Bike”のコンセプトのもと、「ライダーのスロットル操作に対し、リニアなトルクを創出すること」を求める、“クロスプレーンコンセプト”に基づき開発したもの。ちなみに、昨年ドイツのケルンで開催された、世界最大級のモーターサイクルショー『インターモト』で、エンジンのみ参考出品している。

 また新設計の軽量アルミフレームを採用することで、188kgというこのクラスにしては軽量ボディを実現。マスフォワードシルエットによる自由に振り回せる軽快感、どんな方向にも動きやすい“塊”を連想させるマス集中感。そして、ネイキッドとスーパーモタードの“異種混合”させるなど、さまざまな要素をシンクロさせた1台に仕上がっている。

 欧州市場で各社の争いが激化する中、大型スクーターの欧州市場で販売1位を誇るのがヤマハのビッグスクーター「TMAX530」だ。今回、欧州向けに発売される「MT-09」は、同社の新中期経営計画(2013年~3ヵ年)の、“先進国・二輪車事業におけるラインナップ充実”を具現化する新製品第2弾のモデルとなる。

 「ロードスポーツタイプは欧州の51cc以上のモーターサイクルの3割以上の占拠率を持つメインカテゴリーです。このモデルはそういったマスゾーンに二輪車ならではの操る楽しさを徹底的にこだわってつくり上げたブランニューモデルです。改めて二輪車に乗る楽しさを再発見していただき、モーターサイクルの市場がさらに活性化する事を期待しています」(ヤマハ担当者)

 マーケットインではなく、メーカーが新たな市場を切り開く。こういったフィロソフィーがあるからこそ「MT-09」のような独創的で魅力のあるバイクが誕生したのだろう。かつて日本のオートバイメーカー各社は、競合他社と似たようなレーサーレプリカマシンを世に送り出し、スペック至上主義に陥っていた時期もあった。だが今はそういう時代ではない。大きい”“速い”という価値だけでなく、身の丈にあったスポーツ性能が改めて見直されているのだ。ヤマハが提唱する、「日常の速度域で乗り手の意思とシンクロする“意のまま操れる走りの悦び”」これこそが、今の時代にあったバイクの楽しみ方かもしれない。(編集担当:鈴木博之)