日本のスマート化を目指す ハウスメーカーの取り組み

2013年06月16日 19:19

 2013年5月14日、第8回・産業競争力会議が総理大臣官邸で開かれ、戦略市場創造プランのロ-ドマップが発表された。「国民の健康寿命の延伸」「クリーン・経済的なエネルギー需給の実現」「安全・便利で経済的な次世代インフラの構築」「世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現」という4つの大きなテーマが掲げられたが、その中でも、日本の未来のためにもとくに重要な項目の一つに「エネルギーを賢く消費する社会の実現」がある。

 ロ-ドマップによると、「エネルギーを賢く消費する社会」の実現のために、2020年を目処に中間段階において達成しておくべき社会像として、最新のエレクトロニクス技術を用いた電気機器の本格的な普及や、スマートメーターの導入、省エネ基準の段階的適合義務化によって、住宅やビルの省エネ化が加速し、新築の省エネ基準適合率100パーセントになることなどが挙げられている。また、長期的には、2030年には、全ての工場・家庭、日本の隅々までスマートメーターを普及させ、HEMS・BEMS・MEMS等が標準的に導入されて、日本全体のスマート化実現を目指すとしている。

 エネルギーマネジメントシステムを含む省エネ投資の世界市場の規模は、現在の14兆円から、2035年には50兆円まで拡大すると見込まれており、今後の成長産業としても期待が持たれている。もちろん、それが実現するためには、政府だけではなく、消費者や関連事業者がどう意識し、どう動いていくのかが重要だ。

 2011年の東日本大震災以降の電力不足を受けて、節電や創電、蓄電の意識が高まりを見せる中、ハウスメーカー各社も街全体に広げようと、積極的に導入を進めている。また、政府の支援も、経済産業省所管の「スマートコミュニティ構想」、総務省所管の「ICTスマートタウン構想」、内閣府所管の「環境未来都市構想」など、多岐にわたって行われており、現在のところ、順調に進んでいるといえる。

 今後は、これまで技術実証で確立してきた機器やシステムを活用した事業モデルを構築していくことや、スマート化投資を呼び込むための付帯サービスの開発や提案なども合わせて行うことが必要となってくるだろう。

 その中でも、他のハウスメーカーより一歩先行しているのが積水ハウス<1928>だ。積水ハウスの街づくりは、「クリーンで経済的なエネルギー需給」を独自のスマートタウン構想により実現している代表的な例といえよう。

 積水ハウスが展開するスマートタウンは現在、全国12カ所で展開しており、すでに200世帯以上の暮らしが始まっている。とくに、震災で甚大な被害を受けた東北地方の復興に寄与する取り組みとして、まちの省エネ・創エネ仕様と防災機能を高めたスマートタウンは注目されており、すでに120世帯余りが暮らしている「スマートコモンシティ明石台」をはじめ、同社12番目のスマートタウンとなる「スマートコモンステージ美田園」の販売を5月より開始し、順調な売れ行きをみせている。

 また、スマートコモンステージ美田園の全40区画の住宅は、同社が今年4月に販売を開始したネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)「グリーンファーストゼロ」で建築され、東北初の全棟ZEHタウンとなることでも話題となっている。

 ゼロ・エネルギー・ハウス「ZEH」とは、一言で表現すれば、エネルギーを消費しない住宅のことだ。経済産業省の定義としては「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又はおおむねゼロとなる建築物」となっている。

 積水ハウスのグリーンファーストゼロは、政府が2020年までに普及を目指しているこのZEHを先取りして、断熱性を30%向上し、省エネと創エネ、パッシブ技術で「エネルギー収支ゼロ」と「住まい心地の向上」の両立を目指した住宅だ。購入時の費用は従来の住宅よりも少し高くはなるものの、実際に生活を始めると、目に見えて光熱費が安くなることから、購入者の反応も上々だという。

 また、同社の「グリーンファースト ハイブリッド」のシステムは、太陽電池・燃料電池・蓄電池の3電池をHEMSで制御しているので、停電時には自動的に蓄電池からの放電モードに切り替わるのも特長の一つ。手動でブレーカーを上げたり、非常用コンセントに差し込み直したりする必要がないので、非常時でも安心かつ快適に過ごせることも、被災地を中心に需要が高まっている理由の一つだろう。

 また12日に開かれた第12回目となる産業競争力会議では「成長戦略(案)」について議論され、安倍首相は、日本経済の活性化に向けた成長戦略は進化し、すでに次のステップに向けて動き出していると述べている。
 
 産業競争力会議の内容が実現され、日本の暮らしがスマートに進化を遂げるためには、政府だけでなく、民間企業の努力と協力が不可欠であり、牽引する大きな力となる。

 積水ハウスをはじめ、ハウスメーカー各社や関連事業者が一丸となって、消費者とともにつくる街づくりを行うことで、ようやく実現できるものではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)