NYダウは139ドル安。前週のバーナンキ・ショック以来、上海市場が24日に-5.3%の急落を喫するなど中国が世界のマーケットの不安定化の震源地になっている。スペイン国債は急落し、アメリカでも長期金利が上昇して住宅市場の冷え込みが懸念され一時248ドル安まで下げたが、ダラス連銀のフィッシャー総裁やミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁らが口で火消しに動いたため金利の上昇が一服し、ダウの下げ幅も圧縮した。リスク回避の円買いで25日朝方の為替レートはドル円が97円台半ば、ユーロ円が128円近辺と、前日よりも円高が進行していた。
主要外国証券経由の注文動向は3日連続で売り越しでも、日経平均始値は18.84円高の13081.62円。前日終値近辺の値動きから一時的に13000円を割り込むが、すぐ元に戻る。注目の中国市場は午前10時30分に上海が5日続落、香港が6日続落で始まるが、約10分後には上海の下げ幅圧縮に呼応して13100円台に乗せ、13200円台にもタッチした。
ところが昼休みの時間帯にその上海市場が大きく値を崩し、為替も円高に振れたため後場は下落して始まり、13000円、12900円、12800円を次々と割り込んで12758円まで下落する。その時間帯の上海市場は5%を超える大幅下落で、リーマンショック後の最安値に迫っていた。それでも午後2時30分すぎには上海の下落幅が2.5%以下に圧縮し、先物に買いが入って12900円台を通り越し13000円にもタッチしたが、大引け時点で大量の売り注文が入って13000円を維持できず終わった。日経平均終値は93.44円安の12969.34円。TOPIXは-10.98の1078.66。売買高は27億株、売買代金は2兆2803億円で商いは回復をみせた。
20日に危険ゾーンの13%まで急騰した中国の短期金利はこの日は6%以下まで下がっていたが、中国人民銀行の金融政策が不明確なことが世界を不安に陥れている。それが解消されない限り、東京が上海に振り回される状況は当分、続きそうだ。
値上がり銘柄は368で21.5%にすぎず、値上がりセクターは水産・農林、海運、精密機器の3業種だけ。値下がり幅の小さいセクターは保険、医薬品、電気機器などで、大きいセクターはパルプ・紙、空運、電気・ガス、その他金融、石油・石炭、鉱業などだった。
日経平均マイナス寄与度トップはソフトバンク<9984>で、170円安で日経平均を20円引き下げたが、2位の240円安のファナック<6954>、4位の150円安のダイキン<6367>、5位の85円安のコマツ<6301>、12位の53円安の日立建機<6305>は、おなじみの中国関連株。その4銘柄で日経平均を21円押し下げた。22日に中国・常州の産業用ロボット新工場の開業式典を開いたばかりの安川電機<6506>も34円安だった。中国ビジネスの比率が大きい大手商社株も三井物産<8031>が10円安で年初来安値を更新し、三菱商事<8058>は14円安だった。
メガバンク3行も証券大手もみなマイナスで、輸出関連の主力株は80円安のトヨタ<7203>をはじめ自動車も電機も軒並み安。その中でソニー<6758>の7円高、TDK<6762>の55円高、京セラ<6971>の40円高が目立っていた。市況が悪くても東京エレクトロン<8035>は30円高で3日続伸している。この日、良かったのは「医」と「薬」に関する銘柄で、医療機器のテルモ<4543>は115円高、内視鏡のオリンパス<7733>は28円高になり、エーザイ<4523>が50円高、塩野義製薬<4507>が23円高、アステラス製薬<4503>が20円高と、医薬品大手に上昇銘柄が並んでいた。
値上がり率ランキングではKlab<3656>がストップ高比例配分の150円高で1位。ゲームのスマホ配信でマイクロソフトと提携するという情報が流れた。2位はタマホーム<1419>で、注文住宅が受注好調で今期の営業利益が前期の2割増の60億円で過去最高を更新する見込みで131円高。175円高で3位のアミューズ<4301>は所属アーチストのサザンオールスターズが5年ぶりに活動を再開し8月に新曲を発売すると発表して買いを集めた。一方、後場に「上野動物園のパンダが偽妊娠の可能性」というニュースが入って東天紅<8181>は急落して31円安になり値下がり率1位に入った。サザンにしてもパンダにしても、人気者は材料になる。
この日の主役は、日経平均が13000円を大幅に割り込んだ時間帯でも業種別騰落率プラスを維持していた海運株。大手の商船三井<9104>は売買高11位、日本郵船<9101>は売買高14位でともに3円高、売買高5位の川崎汽船<9107>は値動きなし。他には飯野海運<9119>が8円高になっていた。バルチック海運指数は前日まで12日連続の続伸。世界鉄鋼協会(ワールドスチール)が前日発表した5月の粗鋼生産量は前年同月比2.6%増の1億3630万トンで、単月では過去最高を記録した。その約半分は中国で7.3%増の6703万トンを占める。オーストラリアで鉄鉱石やコークス原料の石炭を積んで中国に運ぶ海運需要は少し前まで港に沖待ちの船が列をなしていたほどで、最近はやや頭打ちとはいえ世界で最もホットなシーレーン。そこでは日本商船隊も大活躍している。日本株を振り回すのも中国なら、日本企業に大きな利益をもたらすのも中国だ。(編集担当:寺尾淳)