NYダウは114ドル高で15000ドル台を回復。FRBのパウエル理事、NY連銀のダドリー総裁が、経済の回復が弱ければ量的緩和縮小時期の先延ばしもありうるという趣旨の発言を行い市場に安心感がひろがった。28日朝方の為替レートはドル円が98円台半ば、ユーロ円が128円台半ばと円安が進行した。
月末最終営業日で取引時間前は国内経済指標の発表ラッシュ。5月の完全失業率は4.1%で4月と変わらなかったが、有効求人倍率は0.1ポイント上がって0.90になり5年ぶりの高水準。5月の全国消費者物価指数(CPI)はデフレでもインフレでもない0.0%で、4月の-0.4%から7ヵ月ぶりに改善した。6月の東京都区部消費者物価指数(CPI)も5月の+0.1%から+0.2%に改善した。5月の全世帯家計調査・消費支出は-1.6%だったが、5月の鉱工業生産指数速報値は+2.0%で、4ヵ月連続で上昇した。5月の小売業販売額は+0.8%で5ヵ月ぶりに増加。大型小売店販売額は+0.9%だが既存店は-0.4%。百貨店既存店は+2.8%でもスーパー既存店は-2.0%。コンビニは全体では+4.2%だったが、既存店は-1.2%になっていた。
日経平均は170.37円高の13383.92円で始まり、TOPIXは1100台を回復。「上海待ち」はもうなく午前9時16分に13400円、10時前に13500円を突破。10時30分に上海市場がマイナスで始まっても影響はほとんどなく、11時16分には13600円台を突破した。その時間帯は上海もプラスになった。NY市場の堅調、為替の円安を背景に半期末のドレッシング買い勢力も加わって後場も上昇は続き、ドル円99円タッチ直後の午後1時20分すぎには13700円台。終値は463.77円高の13677.32円で、前週末から447円上昇して今週の取引を終えたが、5月末の13774円には及ばなかった。TOPIXは+35.01の1133.84。売買高は31億株、売買代金は2兆6078億円と商いは少し回復した。
93.5%の1602銘柄がプラスの全面高で全セクターが上昇。上位は不動産、倉庫、その他金融、銀行、その他製品、証券などで、下位は石油・石炭、電気・ガス、卸売、水産・農林、海運、空運などだった。
東証1部の値下がり銘柄は82で、日経平均225種の下落はアドバンテスト<6857>、丸紅<8002>、伊藤忠商事<8001>、関西電力<9503>の4銘柄だけ。日経平均プラス寄与度上位は1950円高のファーストリテイリング<9983>を筆頭に「日経平均寄与度御三家」にKDDI<9433>を加えた4銘柄で日経平均を127円押し上げた。
金融・証券の中で特に健闘していたのが中小証券株で、値上がり率ランキングでは4位にいちよし証券<8624>、12位に岩井コスモHD<8707>、13位に水戸証券<8622>、15位に光世証券<8617>が入った。総務省が2015年から自動車税、軽自動車税の増税を検討という自動車業界にはバッドニュースが流れても株価は好調。トヨタ<7203>は90円高、富士重工<7270>は116円高、ホンダ<7267>は80円高、マツダ<7261>は17円高、三菱自動車<7211>は2円高、SUVを生産するアメリカの工場で900人を新規雇用と報じられた日産<7201>は34円高で株価1000円台を回復した。
長期金利が落ち着いたこともあって不動産関連銘柄に火がつき、後場にかけ上昇幅を拡大した。住友不動産<8830>は175円高、三菱地所<8802>は165円高、三井不動産<8801>は129円高で続伸。東証REIT指数は66.59上昇し、証券化関連のケネディクス<4321>は24円高。88円高の三菱倉庫<9301>、値上がり率7位の澁澤倉庫<9304>のような倉庫株、東京ドーム<9681>、よみうりランド<9671>のような含み資産株も上がった。午後2時発表の5月の新設住宅着工戸数は9ヵ月連続プラスの前年同月比+14.5%で、値上がり率6位にマンションのタカラレーベン<8897>、同14位に建売住宅の飯田産業<8880>が入っていた。
アサヒGHD<2502>は1~6月期の営業利益が5%増に拡大と報じられ80円高。25日に気象庁が発表した3ヵ月予報では東日本を中心に暑くなる見込みで、ビールが売れる夏が来るか。178億円で「ホテル西洋銀座」のビルを取得したコナミ<9766>は23円高。シャープ<6753>は中国でのIGZO液晶パネルの合弁事業を正式に発表して買いを集め、約8%上昇の30円高で売買高10位に入った。日立<6501>は16円高、ソニー<6758>は34円高だった。
リプロセル<4978>は新規上場3日目の午前9時、17800円の初値がつき終値は18300円だった。粉飾決算で摘発後、民事再生手続開始を申請し受理されたインデックス<4835>は整理銘柄に指定されストップ安の80円安。7月28日で上場廃止になる。同じゲーム関連のグリー<3632>も14円安と下落し、値下がり率16位に入っていた。
全面高の中、Jパワー<9513>は95円安で値下がり率4位。ニトリ<9843>は前日に3~5月期決算を発表し、円安の影響で収益が圧迫されてパッとせず170円安と売り込まれ値下がり率10位。良品計画<7453>は前日の上昇の反動減で値下がり率19位の120円安になった。金価格が続落してNY先物は一時1200ドルを割り込み、東京金市場ではサーキットブレーカーまで作動したため、金価格との連動性が高い住友金属鉱山<5713>は前場はマイナスに沈んだが、市況の良さにも助けられて8円高まで戻した。
この日の主役は「大証優先銘柄」。日経平均を算出する日本経済新聞社が10月に採用銘柄の見直しを行う際、7月16日に東証と統合する銘柄は大証での売買実績を参考にすると発表し、大証優先銘柄が日経平均225種に採用される可能性が高まった。その代表が任天堂<7974>、村田製作所<6981>、ローム<6963>で、この日は任天堂は760円高、村田製作所は420円高、ロームは40円高と買われた。いずれも値がさの人気銘柄なので、もし採用されれば日経平均寄与度上位に食い込むとみられ、秋にはこの「関西御三家」が「御三家」の間に割り込み、日経平均を動かす新勢力になるかもしれない。(編集担当:寺尾淳)