風化させてはいけない、未来の子供たちへの投資

2013年07月06日 20:20

 東日本大震災の爪痕は深く、被災した人々は今なお厳しい暮らしを強いられている。テレビなどのマスメディアで報道される機会はめっきりと減ってしまったものの、各企業の支援活動は継続して行われている。

 各企業や団体が窓口になって義援金を募るようなものから、オムロン<6645>やワコール<3591>などが特別協賛している京都マラソンのように、参加費などとともに参加者に任意で義援金を呼びかけるようなイベント的なものもあり、その形態は様々だ。

 また、外資系メーカーでありながらもP&Gのように子供用のオムツやシャンプーなど、自社で扱う生活必需品を支援物資として支給し続ける企業、またソフトバンク<9984>のように、被災地の企業や各種団体向けに「Google Apps for Business」を1年間無償で提供するといったような現実的なものまで、支援の形は多岐に渡る。

 そういった支援活動の中でも、今後ますます必要となるのが、被災した子どもたちにまつわる支援活動だ。

 1989年に国際連合の総会によって採択され、1990年に国際的に発効された「子ども権利条約」には、すべての子どもには「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加・意思表明の権利」が含まれている。これらは当然、被災した子供たちにも守られなければならないことであり、日本国民全員でサポートすべきことだ。

 ダイドードリンコ株式会社<2590>では、継続的な社会貢献活動の実現を目的とした「地域コミュニティ貢献積立金」を設けている。この積立金を活用した社会貢献活動の1つとして、公益社団法人日本ストリートダンススタジオ協会の協力を得て、2012年より「踊育(だんいく)‐東北ダンスプロジェクト‐」を実施している。

 この取り組みは、東北エリアの“絆”を側面からサポートすることをテーマとし、被災地の子どもたちが体を動かす場が少ないという現状や、学校教育におけるダンス授業が必修科目となったこともあり、「ダンスを通して明るく元気になってほしい」との願いから生まれたものであるという。前年は岩手・宮城・福島県の3県にて、30校を対象に実施したが、子どもたちや学校現場から高い評価を得たため、本2013年度は100校に対して拡大し、展開している。

 また、「踊育(だんいく)‐東北ダンスプロジェクト‐」を関連多角化し、福島県の屋内で安心して遊ぶことができる複数の施設で、2歳~4歳の未就学児童を対象とし、2013年12月末まで毎週定期的に「踊育(だんいく)‐親子ヒップホップ教室‐@ふくしま」を開催している。

 福島県の子どもたちは、今なお原発事故の影響によって、外での活動が制限されており、体力の低下が著しく懸念されている。そこで、親子でリズミカルなヒップホップダンスをすることで、子どもたちの運動不足やストレス解消と同時に、子どもたちに運動することの楽しさを知ってもらおうというものだ。

 NHKなどの調査でも、震災以降、ストレスや運動不足の影響で児童の体重が急増していることが報告されている。また文部科学省の2012年度の学校保健統計調査においても、調査対象となった5~17歳の全年齢層のうち、肥満傾向児の割合は、7つの年齢層において福島県が全国最多となっていることからも、被災地の子どもたちの運動不足と心のケアが急務であることがわかる。

 有酸素運動としての運動効果も非常に高いスポーツであり、楽しみながら継続しやすいという特徴を持っているダンスは、まさに最適な選択といえる。

 義援金や物資の支援はもちろん大切で必要なことだが、これからはこのような、人の健康と心をケアする継続的な支援がもっと重要になってくるだろう。企業にとっても、子どもたちの健康に寄与することは決して無駄ではないし、ボランティアではなく、未来に対する投資ともいえるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)