【今週の展望】第1四半期決算で「業績相場」にうまく乗る

2013年07月15日 20:10

 今年の初めごろ、「11月14日以前に株を買っておけばよかった」というボヤキがよく聞かれた。当時ボヤいていた人たちが5月から株価の上昇が停滞したのを見て、ボーナスが出たこともあり「今がチャンスだ」と銘柄を物色し始めているという。いわゆる「出遅れ組出動」という話だが、去年の秋と今とでは相場の状況が全く異なる。

 当時は株価水準があまりにも低すぎて、総選挙から年末年始にかけての頃は円安やアベノミクス期待で「何でもかんでも上がる」様相を呈していた。それを人は「金融相場」と呼ぶ。だが、今はよく吟味して銘柄を選ばないと思うように上がってくれない。上がらないのはその銘柄が悪いからではなく、ついている株価が悪いから。どんな優良銘柄でも株価が上がりすぎていたら下落のリスクは大。業績がボロボロの銘柄でも不当に安い株価がついていたら、利ざやを抜きやすくなる。

 今はアベノミクス相場初期の何でも上がる金融相場から、業績と株価のつりあいで上がる銘柄が決まってくる「業績相場」に移行しつつあると言われている。業績相場では、同じ業種の銘柄でも業績がバラつくと株価もまたバラついてくる。それは、今週までの小売業など2月期決算企業の3~5月期の業績発表後にもみられていた。

「出遅れ組」の銘柄選びの判断は、3月期決算の銘柄ならば選挙が終わって落ち着いて、来週から始まる4~6月期の業績を見比べてからでも遅くはない。もっとも主力銘柄なら決算が発表される前に新聞に〃ほぼ正確な〃業績観測記事が掲載されるから、それを参考にしてもいい。それも来週から本格化する。

「業績相場」と言っても難しく考えすぎる必要はない。会計知識がなくても、勉強しなくてもいい。バランスシートが読めなくてもかまわない。銘柄選びの一つのヒントとして、電卓を使って単純に「第1四半期の業績を4倍して通期見通しをかなりオーバーしていたら上方修正があるはずだ」というスクリーニングでもいい。決算短信の何ページ目かに書いてある想定為替レートと現在の為替レートを見比べて、「ドル円が90円で据え置きだから上方修正があるはずだ」でもいいだろう。本決算の発表まであと9ヵ月もあり、時間的な余裕は十分にある。業績の上方修正の発表は株価が上がるイベントになることが多く、その時に売って利益を確定すればいい。

 EPSとか予想PERとか、事業別の利益分析とか法人税率の根拠とか株主価値の算出方法とか、そういう細かくて難しい話はプロのアナリストの投資判断のレポートにお任せして、レーティングなり目標株価なりの結論だけをありがたく頂戴しよう。どこかのIT企業の異常な一件以外は、投資家の投資判断の一助となり、参考にするようお勧めできる。

 さて、来週はFRBのバーナンキ議長が17日に下院金融サービス委員会、18日に上院銀行委員会で議会証言を行う。ベン・バーナンキという人物は学者肌のカタブツかと思いきや、6月19日にいきなり「タカ派」になり、7月10日にまた「ハト派」に戻ったりするから油断ならない。議会証言の場で量的緩和政策の縮小から終了にかけてのロードマップが明らかにされるという当初の見通しは少々怪しくなってきたが、それでも再び「君子は豹変す」で、涼しい顔をして議員の前でロードマップを説明し始めるかもしれない。どちらにしても重要なイベントなので16、17日は日米とも様子見に支配されそうで、議会証言後はまた、為替にも長期金利にも新興国市場にもひと波乱起きて、東京市場が翻弄されるのを覚悟しておかなければならない。それ以外の海外発の変動要因としては、15日の中国の経済指標発表ラッシュや、アメリカ主要企業の決算発表でNYダウが大きく変動するケースもある。

 選挙モードで経済指標の発表も少ないので国内発の変動要因はあまりなさそうに見えて、実はある。それは来週、新聞に載る参議院選挙の情勢分析・議席数予測記事で、昨年12月の総選挙の際も東京市場に少なからぬ影響を及ぼし、選挙結果を先取りするかのように日経平均が上昇していた。参議院選挙は政権選択選挙ではないが、衆参のねじれが解消するか、しないかは、安倍内閣のこの先の政権運営、アベノミクスの行方に大きく影響する。記事の見出しがたとえば「与党圧勝の勢い/ねじれ解消の公算大」だと株価は上昇し、「野党が健闘/ねじれ解消は不透明」だと株価は下落する。参議院選挙は世界でも珍しい比例代表制と大選挙区と中選挙区と小選挙区が混在した複雑なタイプの選挙なので、政党支持率が高ければ小選挙区で大勢が決まる衆議院選挙と同じように圧勝できるといえば、そうとも限らない。

 そうした内外の要因がからみあって来週、日経平均のボラティリティは大きくなると思われ、終値が変動する範囲は14200~14900円とみる。15000円台に乗せるのはおそらく選挙が終わった後になるだろう。(編集担当:寺尾淳)