液晶パネルの消費電力を10%減少させるテクノロジー

2013年08月10日 20:37

ローム

ロームが特許取得済みであるLEDドライバの高効率化システム回路イメージ

 家電選びの際の、大きな選択肢の一つに「省エネ性能」が挙げられる。とくに東日本大震災以降、省エネや節電に対する国民意識は高まりを見せており、消費電力の小さい家電製品に人気が集まっている。テレビやパソコンも例外ではない。これまでは画質の良し悪しが、売れ行きを左右していたが、近頃では他の家電同様、消費電力を気にする声が増え始めている。

 テレビメーカーや液晶モニターメーカー側としても、省電力、高効率化は商品を特徴づける重要な要素であり、とくに液晶パネルで使用される電力の約7割を占めるバックライトにLEDを採用し、省エネを目指すことは当り前になってきている。

 そのような状況の中、液晶パネルのLEDドライバICで世界シェア3割を持つ株式会社ローム<6963>が業界トップクラスの高効率LEDドライバを開発し、注目を集めている。今回ロームが開発した4chバックライト用LEDドライバ「BD9428」は、同社独自の制御回路技術を駆使して、高効率を実現したもので、大幅な省エネ化に貢献する製品となっているのだ。

 この製品は、最先端の高耐圧BiC-DMOSプロセスを用いることで、1チップで従来60VであったLED端子電圧を80Vに高め、最大LED電流も従来の150mA/chを250mA/chまで大電流化することに成功しており、様々なサイズの液晶パネルに対応できる。さらに、大電流化の際に発生するコイルの音鳴りについても、PWM調光時に電流波形を滑らかにする独自回路を内蔵することで改善を図っている。これは、高耐圧化や大電流対応、発熱対策については、ICに対して部品を外付けすることが一般的であったことに対して、実装面積や部品コストの増加の問題をクリアしたとも言える。

 またこの製品の強みは、特許取得済みの高効率化システム回路にもある。このシステム回路では、複数個のLEDを直列でつないだLED列と、その後段にある調光器との接続点の電圧をモニターし、最も低い電圧が一定となるようにLED供給電圧を制御することで供給電圧の最適化を図る。その結果として、一般的な制御方法と比較して、10パーセント以上もの効率改善に成功した。日本では2006年に特許登録されており、米国など海外諸国でも特許が成立している。

 今後、インパネやカーナビゲーションシステムなど車載向けパネルへの供給を狙い、3割の世界シェアをさらに伸ばすことを目標としている。世界の半分が10パーセントの節電を行えると考えれば、その節電効果は計り知れない。日本産業のためだけでなく、地球の未来のためにも期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)