節電を生み出す「待機電力」の改善とは?

2013年07月15日 20:22

AC/DCコンバータ-640×480

待機時の消費電力も大幅に低減することに成功しているロームのAC/DCコンバータ用電源IC「BM2Pxxx/BM2PxxxFシリーズ」

 梅雨のシーズンが足早に通り過ぎ、早くも夏本番を迎えようとしている。

 2011年の東日本大震災以降、国民全体に節電意識は高まっているものの、さすがに35度を超える気候が続くと、ついついエアコンの温度設定も下がりがちになる。経済産業省の資源エネルギー庁では、室温を28度に設定すること、無理のない範囲で扇風機を利用すること、冷蔵庫に物を詰め込みすぎないように心掛けることなど、具体的な対策を掲示して、節電の呼びかけを強化している。

 家電メーカー各社は、省エネ基準を満たす商品を開発・販売しているが、朝日大学のマーケティング研究所が2011年に発表したデータによると、消費者の半数以上がエコを意識しているものの、低価格の魅力を超えるには至っていないという。しかしながら、エコ商品はランニングコストを抑えられることから、長期的に考えれば、一時的には高くても、購買力を高める材料にはなる。

 さらに今後、エコ商品のランニングコストを語る上で重要になってくると思われるのが、待機電力の問題だ。電気機器は、スイッチを入れて動作をさせている間だけでなく、コンセントにつないでいるだけで電力を消費している。これが待機電力と呼ばれるものだ。一般的な意識としては、ほとんど消費されていないように思われているこの待機電力だが、なんと家庭の電力消費の6.0パーセントも閉めるといわれており、金額では一世帯辺り平均で年間約6,420円分にものぼる。

 しかしながら、いちいち家庭内の主電源を切って回るのは現実問題として無理がある。そこでこれらの問題に大きく関わってくるのが、電気機器の1次電源を構成するデバイス製品だ。

 ローム株式会社<6963>が6月27日付で発表したAC/DCコンバータ用電源IC「BM2Pxxx/BM2PxxxFシリーズ」(全24機種)は、まさにこれからのニーズに即したデバイスとなっており、注目を集めている。

 今回内蔵された自社製の低オン抵抗スーパージャンクションMOSFETによって、待機時の消費電力を大幅に低減することに成功している。25Wのアダプタの場合、AC100V時に20mW以下、AC230V時に30mW以下と、国際規格Energy Star 6.0が要求している100mW以下を大幅に下回っているのだ。

 また、同シリーズは、スーパージャンクションMOSFETに対して、回路の最適化を図ったことで業界最高クラスの効率を達成しており、電源の効率でもEnergy Star 6.0の基準をクリアしている。さらに、8Wクラス以下においては標準的なDIP7パッケージに加えて、実装面積を47%削減できる面実装タイプのSOP8パッケージも取り揃え、市場ニーズの高い機器の小型化、省スペース化にも貢献している。

 ロームでは今後、テレビやエアコンだけでなく、炊飯器や掃除機などの白物家電にいたるまで、あらゆる家電製品の高効率化を実現する製品群の拡充を図るという。

 待機電力の節電は、一つの家庭だけに限って考えれば、些細な電力かもしれない。しかし、全国規模で考えると膨大な電力の節電につながる。ロームが発表したようなデバイスが普及し、待機電力が6パーセントから、せめて半分にでもなれば、消費者がとくに意識しなくても、環境にも家計にも優しい暮らしになるだろう。(編集担当:藤原伊織)