【日経平均】中国PMIの50超えサプライズでも59円安

2013年08月22日 20:19

 NYダウは105ドル安で6日続落し7月3日以来の15000ドル割れ。注目の7月末のFOMCの議事要旨が公表されたが量的緩和縮小開始の時期については意見が割れていて株価は乱高下。それでも縮小はいずれ確実とみて長期金利は2.9%台に上昇し、中古住宅販売件数が3年8カ月ぶりの高水準でも「経済指標が良いと縮小が早まる」という観測で結局は大幅安になった。「9月なら9月でいいから早く決めてくれ」というのが市場関係者の本音だろう。22日朝方の為替レートはドル円は97円台後半、ユーロ円は130円台半ばで、今週はあまり大きく動いていない。

 取引開始前の外資系証券の売買注文状況は3日連続の売り越しで、新興国の市場を冷やすアメリカ発のリスクオフの流れおさまらず日経平均は110.28円安の13314.05円で始まる。下げ幅を拡大して13200円台で推移するが、午前10時30分に上海市場が始まると上海総合指数はマイナスでもドル円は98円に乗せ、日経平均は徐々に下げ幅を圧縮して13400円台に乗せる。

 10時45分すぎに中国の8月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表され、50.1で7月の47.7を2.4ポイント、市場予測の48.2を1.9ポイント上回った。好・不況の分かれ目といわれる50を上回り、中国の景気底入れが最終確認される。上海総合指数は当然上昇し、東京市場ではまずTOPIXがプラスになり、続いて日経平均が11時前にプラスにタッチした。リスク回避の円買いがおさまって為替もドル高・円安が進み、まさにポジティブサプライズが起きた。

 しかし、為替のほうはドル円は98円台、ユーロ円は131円台にもたびたびタッチする状況が続いても、日経平均のその後はパッとしない。11時台にはマイナスに戻って13400円を割り込むがTOPIXは前引けまでプラスのままで、先物主導で利益を確定すれば後場は再び上昇するかと思われた。しかしその後場は一段安で始まり、底堅いが浮上もしない時間帯が続く。午後2時前にTOPIXとともにプラスにタッチしても長続きせず、8月に何度も「高値引け」を演じた大引け前の急騰も起こらず、59.16円安の13365.17円で終えた。日中値幅は前場の209円のまま。他のアジア市場もおおむね軟調で新興国通貨安の状況も変わらない。TOPIXは-2.18の1119.56で3日続落。売買高は19億株、売買代金は1兆6025億円で、9日のマイナーSQの日を最後に2兆円台から遠ざかったままだ。

 値上がり銘柄は892で値下がり銘柄735を上回ったが、業種別は13対20でマイナスセクターのほうが多い。プラスの上位は保険、建設、医薬品、水産・農林、小売、卸売など主にディフェンシブ系で占められ、マイナスの下位は電気・ガス、鉄鋼、倉庫、海運、電気機器、精密機器などだった。

 日経平均マイナス寄与度の1~3位はファーストリテイリング<9983>、ファナック<6954>、KDDI<9433>の常連組で、合計で下げ幅の約3分の1にあたる20円、日経平均を押し下げた。プラス寄与度トップにはホンダ<7267>が入っていた。

 メガバンク3行は2円高の三菱UFJ<8306>以外は値動きなし。自動車株はトヨタ<7203>も20円高でしっかりしていたが、ホンダはゴールドマンサックス証券が投資判断を「強い買い」に引き上げ25円高。しかし新興国の景気後退懸念でいすゞ自動車<7202>18円安、日野自動車<7205>53円安、ヤマハ発動機<7272>43円安とふるわない。サスペンションのニッパツ<5991>は81円安で値下がり率4位だった。

 その自動車と住宅に将来を託すパナソニック<6752>は、住宅関連の新事業で2018年度の売上高3000億円という計画が報じられ4円高。中国版LTE(4G)が年内始動、基地局などに8兆円規模の投資というニュースでアンリツ<6754>は9円高。基地局向け計測器を製造するマザーズのアルチザネットワークス<6778>はストップ高で年初来高値を更新した。キヤノン<7751>は売買代金5位ながら37円安で年初来安値を更新。終値が今年初めて3000円を割り込み、7月24日に通期業績予想を下方修正した「キヤノン・ショック」の時をも下回った。

 コンビニ運営のCVSベイエリア<2687>は15円高で年初来高値を更新し値上がり率3位。同2位のSサイエンス<5721>といい、お盆休みは終わっても低位株人気は相変わらず。値下がり率1位の澁谷工業<6340>はストップ安の500円安で、上も下も値幅制限が窮屈そう。SMBC日興証券がインスタントラーメン2社の投資判断を引き上げ、日清食品HD<2897>は110円高、東洋水産<2875>は91円高。スクエニHD<9684>はみずほ証券が投資判断を引き上げて23円高だった。

 住友商事<8053>はマレーシアで高効率の石炭火力発電所を約1300億円で受注したと報じられ5円高。住友系の石炭関連銘柄の住石HD<1514>は7円高で値上がり率18位だった。プラント技術を持つ日立<6501>は11円安だった。ハイテクを活かしたインフラ輸出では日本はまだ優位にある。

 決算がらみの話題では、前日に業績見通しの修正を発表して最終利益は第2四半期累計29%増、通期も増額の大陽日酸<4091>は13円高。外食のロイヤルHD<8179>は2005年に丸紅<8002>から買収した天丼店「てんや」事業が、通期経常利益が倍増の4億円と報じられ60円高だった。

 この日の主役はイオン<8267>とダイエー<8263>。丸紅も売却に応じて午後1時にイオンのダイエーに対するTOBが成立したと発表され、イオンは終値7円安だったが、ダイエーは経営再建期待で一時30円高まで急騰して終値は16円高で、「M&Aは規模が小さい方の株が上がる」という原則通り。ダイエー創業者の中内氏が飛ぶ鳥を落とす勢いだった時代はイオンの前身ジャスコのほうが規模は小さかったが、今は昔。イオンの連結子会社になっても、かつて流通革命の先頭を走ったダイエーの名は残るだろうか。(編集担当:寺尾淳)