長期にわたったデフレ不況が、ようやく出口が見えてきた。株価も上昇し、個人消費も上向き傾向を見せ、景気回復の足取りが確実に見えてきた。と思ったら9月からの値上げ攻勢に消費者は悲鳴を上げている。そして電気料金に次いで、ガス料金も大幅値上げに踏み切る模様だ。こうした情勢の中、経済産業省は、9月3日、ガス料金の在り方を検討する有識者会議を開き、家庭や商店向けの値上げ査定で、料金の原価に算入できる、人件費の圧縮など求める報告書を取りまとめた。
すでに電気料金では、東京電力の値上げなどで、厳しい基準を適用しており、ガス料金でも同様の対応により、値上げ幅を抑えたいとしている。また経産省は、同日、利用者が都市ガス事業者を、自由に選べる全面自由化の検討に入る方針を明らかにした。これは査定方針の厳格さと共に、ガス料金を抑制する狙いがあるものとみられる。
公益性の高いガスは、電気と同様、人件費などの費用に、一定の利益を上乗せして料金を決める「総括原価方式」を採用しており、値上げには政府の認可が必要だ。都市ガスとは、地面に埋めたガス管で、消費者の所に天燃ガスを届ける会社で、全国には、209社もあり、その内大手と言われているのは、東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスの4社で、後は小規模な会社が大半である。工場などの年間契約使用料10万立方メートル以上の大口向け販売は、これまで自由化されているが、家庭向けは、電力業界と同じく、地域独占の状態が続いている。
電力の「電力システム改革」と同様の改革を、ガス事業が取ることで、両事業の相互参入を促し、競争することにより、料金引き下げを期待するとしている。今秋にも経産省は、有識者会議を開き、全面自由化の必要性などについて、検証を行う見通しだ。(編集担当:犬藤直也)