【今週の展望】東京五輪決定はなかったものとして出直し

2013年10月06日 20:11

 海外の経済指標は、7日はアメリカの8月の消費者信用残高、8日はドイツ、フランスの8月の貿易収支、ドイツの8月の製造業受注、アメリカの8月の貿易収支※、9日は英国の8月の鉱工業生産、貿易収支、ドイツの8月の鉱工業生産、アメリカの8月の卸売在庫※、10日はオーストラリアの9月の失業率、フランスの8月の鉱工業生産、アメリカの9月の輸入物価※、11日は、アメリカの9月の卸売物価指数※、小売売上高※、ミシガン大学消費者信頼感指数、12日は、中国の9月の貿易収支が、それぞれ発表される。
(※印のアメリカの経済指標は連邦政府機関が発表するので、政府機能の一部停止で発表が延期になる可能性がある)

 9、10日にイングランド銀行(BOE)が金融政策委員会を開き10日に政策金利を発表する。9日はブラジル中央銀行も政策金利を発表する。9日には9月17、18日開催のアメリカFOMCの議事要旨が発表される予定。名称に「連邦(フェデラル)」とついてもFOMC、FRBは民間の機関なので7日の消費者信用残高も含めて延期はないと思われるが、8~10日に財務省が実施する予定の国債入札は予算案が成立しなければ延期になる。10、11日にワシントンで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議や、11~13日に同じワシントンで開かれるIMF・世界銀行の年次総会は予定通り開催。10日にはECBのドラギ総裁がNYで講演する。

 アメリカ主要企業の決算は、8日はNYダウ30種から外れたアルコア、ヤム・ブランズ、9日はコストコホールセール、11日は金融大手の先陣を切ってJPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴが発表する。

 今週の日経平均は3ケタの下落を喫した日が3日もあり、前週末比で735円の大幅安。下落幅が500円を超えた週は8月5~9日の850円安以来2ヵ月ぶりで、「ボロボロになってしまった」という感想を持つ人もいるだろう。4日のザラ場中の14000円割れは東京五輪決定前の9月6日以来で、「9月8日早朝の歓喜」以後に盛り上がった分が無に帰してしまった。オリンピックは7年も先なのに、株価の押し上げ効果はわずか1ヵ月足らずしかもたなかったことになる。

 来週の東京市場は、マドリードかイスタンブールにさらわれて、2020年東京オリンピック決定はなかったものとして出直すことになる。だが、アメリカ社会の保守反動の「ホットスポット」のような選挙区の代表としてキャピトル・ヒル(連邦議会)に送り込まれ、いま「ならぬことはならぬ」と意固地に突っ張り続ける共和党のティーパーティー議員が観念しない限り、東京市場では、期待が無残に汚れっちまった悲しみに、来週も先物売りの雨が降りかかる状況が続くのだろう。

 とはいえ、来週は不確定要素もまた多い。アメリカも、事態がいきなり急転回して予算案が議会を通過して政府機関が再開し、オバマ大統領が軽い冗談を飛ばした後、後ろ手に手を振ってホワイトハウスの会見場を後にするという、まるで映画のエンドロールが出る前のエピローグのようなシーンがこの週末にも上映済みになるかもしれない。そうなれば、後にパート2の債務上限問題があるとはいえ、東京市場は区切りをつけて出直せる。

 また、2年連続で日本人のノーベル賞受賞者が出れば、たとえそれが文学賞の村上春樹氏でも、兜町では関連銘柄を探し出してきてはポジティブサプライズだと騒ぎ、市場のムードは明るくなっているはずだ。もちろん医学・生理学賞、物理学賞、化学賞なら、新興市場あたりから関連銘柄がザクザク出てきて物色され、市場全体が盛り上がるだろう。

 そうはならず、事態が進展せずに来週もアメリカの連邦政府機関の一時閉鎖がずっと続き、ノーベル賞は日本人の受賞者が誰もいなかったと仮定して言えば、3月期決算企業の9月中間期(第2四半期)決算発表の本格化はまだ先なので、日経平均は上昇のきっかけがつかめず14000円前後の水準での低迷が続くことになると思われる。足を引っ張るのが制度信用取引の強制決済で、6ヵ月前の4月4日は日銀の「黒田異次元緩和」が発表された日で272円高で売買代金は3兆円、5日は199円高で4.8兆円、8日は358円高で3.6兆円と3営業日で829円も上昇し、売買代金3兆円超えが4月16日まで9営業日も続いた。あの時の年貢の納め時、信用買い残の強制決済デッドラインが今、連日到来中なのだ。

 需給が悪化したまま様子見の薄商いが延々と続き、為替レートの10銭単位の変動が日経平均の100円単位の変動に増幅されて先物主導の急騰、急落が繰り返される。値上がり率だけでなく売買高のランキングでも低位株、超低位株ばかり並び、五輪関連はおろか以前のような3Dプリンター、iPS細胞、PM2.5、防衛関連のようなテーマ株物色すら影を潜める。投資家はまるでパブロフの犬のように証券会社のレーティングや目標株価の変更、自社株買い、増資による希薄化懸念に無条件反応し、業績観測報道は市場予測のクイックコンセンサスよりも「上か、下か」だけが関心事。それが、東京オリンピック決定のポジティブサプライズからわずか1ヵ月後の東京市場の、錆びついた日常である。

 そんな閉塞した状況そのままに、来週の日経平均終値の変動レンジは13700~14500円とみる。それにしても、「東京五輪はごちそうさま。次はノーベル賞をおねだり」とは、いくら何でも欲張りすぎだ。(編集担当:寺尾淳)