質のローソン、量のファミマがセブンイレブンを追撃する
コンビニエンスストア業界の「3強」ことセブンイレブン・ジャパン(セブン&アイHD<3382>傘下)、ローソン<2651>、ファミリーマート<8028>の2014年2月期の8月中間期決算が出揃った。8月末現在の国内店舗数はセブン15831、ローソン11348、ファミマ9948だった。
セブンイレブン・ジャパンの営業収益は1兆2772億円(前年同期比37.9%増)、営業利益は1287億円(10.5%増)で過去最高。ローソンの営業総収入は2481億円(0.3%減)、営業利益は356億円(3.1%増)で過去最高。純利益は190億円(6.6%増)だった。ファミリーマートの営業総収入は1750億円(1.8%増)。営業利益は254億円(1.7%減)で減益でも、純利益は140億円(10.6%増)で過去最高だった。
なお、「3強」に次ぐクラスのサークルKサンクス(ユニーGHD<8270>傘下)は営業利益39%減、ミニストップ<9946>は営業利益18%減と苦戦した。「過去最高」の文字が躍る大手3社とそれ以下とで、コンビニ業界の業績は二極分化している。
コンビニ業界が興味深いのは、「3強」の国内戦略が3社3様ではっきり分かれている点。単純化して言えば、セブンイレブンは大量出店によるスケールメリットの追求とともに店舗、商品の作り込みで増収と増益、量と質の両方の向上を狙う路線で、ローソンは無理な出店はせず店舗、商品の作り込みという質の部分で増益を目指す路線。ファミリーマートは大量出店による量の拡大で増収を目指す作戦に力を注いでいる。だから8月中間期のローソンの減収も、ファミマの営業減益も、その戦略に照らせば「想定の範囲内」。ローソンは新店効果に頼らずに採算の向上を目指すから減収は承知。ファミマはセブンと同数の大量出店でスケール拡大を目指すから出店コスト増による営業減益は承知なのだ。
つまり今期は、トップのセブンイレブンに対して、店舗、商品の質の向上で対抗するローソンと、出店、出店、また出店の「量の戦い」で規模の差を縮めようとするファミリーマートという、異なった追撃戦略が展開されている。どちらに軍配が上がるかは、中間期の段階ではまだ決着がついていない。
「健康」というコンセプトを明確に打ち出したローソン
受けて立つセブンイレブンは「王者の戦い」。新規出店も1500と多いが、8月中間期の既存店売上高も3強では唯一プラスで、2ケタの営業増益をあげられる収益力と投資余力で他の2社を引き離す。セブン&アイHDの村田紀敏社長は「来期は今期以上の出店ペースでいける」と引き続き量の拡大をほのめかす。商品についてはプライベートブランド「セブンプレミアム」に力があって利益率が高く、「金の食パン」のようなヒット商品もコンスタントに出している。1月に始めた100円の入れたてコーヒー「セブンカフェ」の販売が好調で全店に導入すると、人気ぶりを見て他社もこぞって追随した。
店舗、商品の作り込みによる「質」で勝負するローソンは、キャッチフレーズを「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」に変えた。店舗づくり、商品づくりの基本コンセプトは「健康」。店舗から電話で健康相談ができるサービスを取り入れ、医薬品の取り扱い店舗を5年後までに3000店に増やす方針だが、そんな直接的な意味だけではない。店舗については健康を意識した「ナチュラルローソン」を現在の首都圏約110店舗から、5年後に全国3000店舗に拡大し、商品については3年後に食品アイテムの約25%にあたる約600品目を低カロリー、低糖質など健康志向のものに置き換える。この戦略について新浪剛史CEOは「今まで通りではコンビニは飽和する」「ダイナミックに店舗のモデルを転換して成長を目指す」「ここはブルー・オーシャン(未開拓マーケット)。店舗はまだまだ増やせる」と説明している。
セブンに対し新規出店1500、純増数1150と数字をピタリと合わせてきたファミリーマートの今期の大量出店戦略は、発表当初は「無謀」という評価が多かったが、採算の悪化もそれほどではなく業績的にはおおむね順調に推移している。10月中に国内1万店の大台に乗り、中山勇社長は「やっと上位の会社を追える規模になった」とスケールメリットの効果を強調する。店舗づくりに関してはドラッグストア、調剤薬局との複合型店舗が大きな柱で、5年間で1000店舗規模まで拡大する方針。病院帰りに処方せんを渡して調剤してもらう間に大衆薬や健康食品や日常の最寄り品を購入するというワンストップ・ショッピングを可能にして、高年齢層中心に集客力を高める。
「量のファミマ」「質のローソン」と言いながら今年、ローソンの質に量がついてくる出来事も起きた。九州のサークルKサンクスのFC店だった106店舗が揃ってローソンにFC加盟したため、ローソンは出店に関する今期の計画を上方修正した。ローソンにしてみれば低コストで一気にそれだけの出店ができたことになる。
なお、コンビニ大手は中国や東南アジアを中心に海外にも進出しているが、どこも投資を回収して収益に貢献するまでには至っていない。FCよりも直営店が中心になりコストがかかる点、出店や商品の取り揃えに規制がかかる点、さらには現地パートナー企業との間であつれきが生じるなど、決して順調とは言えない。それでもローソンは「10年後までにASEAN諸国で5000店舗」(新浪CEO)と気勢をあげる。国内市場が飽和すれば海外に活路を見出すしかなく、海外事業で稼げる体制の確立は大きな課題と言えるだろう。(編集担当:寺尾淳)