時代を映す、神宮の式年遷宮

2013年10月14日 11:10

 2013年は、出雲大社が60年ぶり、そして伊勢神宮が20年ぶりに揃って遷宮を迎える、大変縁起の良い年だ。テレビや雑誌などのマスコミをはじめ、WEBサイトなどでも数多く取り上げられたこともあって、両社とも連日大勢の参拝者で賑わっている。とくに伊勢神宮では10月12日、年間参拝者数が一千万人を超えた。これまでは2010年に伊勢自動車道の無料化社会実験が行われたことなどで約883万人を記録したのが過去最多であったが、9月15日にその記録を塗り替えている。

 ご神体を新しい正殿に移す、式年遷宮の中心的な儀式「遷御(せんぎょ)」は、内宮で2日、外宮で5日に終わったものの、早速、新宮にお参りしようとする参拝客が後をたたず、週末で約7万5千人、平日でも3万人以上の参拝者がある。伊勢市では、今年の年末までに年間参拝者数が1300万人を超えると見込んでいるが、これは大幅な記録更新であるとともに、例年の参拝者数の2倍以上でもある。

 地元の三重県津市に本拠を置く百五銀行グループのシンクタンク、百五経済研究所の発表によると、式年遷宮の経済効果は2400億円と試算されており、例年よりも500億円程度上回る見通しだ。全体の内訳としては、宿泊費841億円、飲食費が404億円、土産物などの費用で562億円となっている。

 ちなみに1993年に行われた前回の式年遷宮の時には、伊勢自動車道など交通網の整備が進み、内宮前のおかげ横丁をはじめとする観光施設や宿泊施設の開業・整備による集客力の向上が図られたが、今回はそういった動きよりも、宿泊施設や飲食店舗での接遇向上や料理メニューの充実、バリアフリーツアーや体験型イベントなどの旅行商品など、ソフト面に力が注がれているという。

 また、式年遷宮を記念した商品が店頭だけでなくインターネットを介して数多く販売されているのも、今回の大きな特徴のひとつではないだろうか。伊勢神宮唯一の財団法人である伊勢神宮崇敬会が運営するWEBサイトでも、御用材残材を利用した「勾玉型文鎮」や、内宮参集殿で一番人気の「いせ鈴」などをネット販売しているのをはじめ、民間のサイトでも数多くの記念グッズが販売されて人気を呼んでいるという。

 たとえば、伊勢のおみやげ物を限定販売している勢乃國屋では、遷宮記念の湯飲みや茶碗、そして木遣り唄オルゴール付のお木曳車が販売されている。また、東京に本社を置くRHトラベラー株式会社でも、オリジナルで企画した記念切手と神宮桧材をセットにしたフレーム切手「伊勢の神宮」をお土産通販サイト「ギフトランド」にて販売している。この切手には神宮を舞台に数多くの作品を手がけている写真家・宮澤正明氏の写真を採用し、切手にセットされている「神宮桧材」には、宮域林から伐りだす御用材を特別に許可を得て分けてもらったものを使用。しかも、その桧材に雁皮紙を巻き、麻緒の結びきりまでの制作を伊勢の神宮で行うというこだわりの商品となっており、好評を博しているという。

 伊勢神宮の式年遷宮は、1300年前から変わることなく粛々と行われ続けてきた行事である。しかし、それを取り巻く環境や人の営みは、相対してその時代時代で様々に変化していることが面白い。とくにこの20年では、インターネットや携帯電話の普及が進み、その宣伝力が大きな要素となって、今回の遷宮では参拝者が大幅に増えた。20年後の次の式年遷宮でもおそらく、また新しい時代を反映する動きが見られることだろう。(編集担当:藤原伊織)