10月16日、もめにもめ抜いたアメリカの財政問題に一応のカタがついた。米国債デフォルト騒ぎは2年前の夏にもあったが、それが解決した時と比べると記者会見に臨んだオバマ大統領も、連邦議会の与野党の幹部たちも、顔の表情が疲れているように見えた。1日に政府機関の一時閉鎖に突入してしまった時点で、もはや勝者は誰もいなかったのだ。
疲れていたのは東京市場も同じだった。17日まで7連騰したが、前週はそれ以前の75日移動平均線を割り込む売られすぎ水準からの自律反発であり、今週は売り買いが交錯した結果たまたま終値がプラスになった日が続いただけで、浮かれた気分など全くない「連騰感なき連騰」。それを裏付けるのが商いの薄さで、7連騰中、売買代金が2兆円を超えたのはマイナーSQの11日だけ。売買高は前週の22~26億株に対し今週は17~20億株といっそう低下し、アメリカの財政問題が解決した後の18日も全く回復しなかった。その水準は、例年1年間で最も少なくなる8月のお盆前後の時期とあまり変わらない。
そんなエネルギー不足の状態では15000円チャレンジなど到底望めず、17日にあと336円まで迫ったのが精いっぱいだった。ワシントンで問題が解決しても「台風一過の日本晴れ」とはいかず、引き続き厚い雲がどんよりたれ込めたような市況が続いた。
今週の東京市場は、たとえて言えば「低血圧」のような症状がみられた。めまいのような乱高下を起こすほど重症ではないが、しつこい倦怠感に悩まされる。今日は調子が良さそうだと思ってもすぐにへたって上値を追えず、時々「不定愁訴」が出てズルズル下げてしまう。これでは、外部環境が好転してやる気が出ても、身体がついてこない。来週の東京市場は15000円チャレンジの前に、この低血圧の症状を治療しなければならない。
医者が勧めている低血圧の治療法は、薬と食事と適切な運動。東京市場という患者に対しては、「薬」は需給の循環器系に直接、昇圧効果をもたらす海外からの資金流入で、「食事」は企業の業績が好転して、銘柄を安心しておいしくいただいて消化器系が活性化すること。そして「適切な運動」とは、新政策の発表や金融緩和や大型企業合併など、自律神経系を刺激するようなイベントだ。
このうち、来週は「食事」に最も期待できる。さすが食欲の秋で、3月期決算企業の4~9月期決算発表がいよいよ本格化するからだ。日本電産<6594>の永野節は、味はエグいが栄養はありそう。キヤノン<7751>は厳しいが信越化学<4063>、JFEHD<5411>あたりは食卓を明るくしてくれるか。この秋の旬の食材、ヤフー<4689>、NTTドコモ<9437>の決算発表もある。次週以降に続々決算を発表するビッグネームも新聞に業績観測記事がてんこ盛りになるので、それも食欲をそそるはずだ。今期業績の上方修正というおいしいニュースがゾロゾロ並べば、業績相場の食事療法だけで、「薬」を飲まなくても低血圧を治せるかもしれない。
しかし、外部からのストレスで治療が妨害される恐れもある。最大の警戒対象は発表が4日から22日に延期されたアメリカの9月の雇用統計で、民間のADP雇用統計が良くなかったのでネガティブサプライズが心配される。もしそれがもたらされたら厄介な「不定愁訴」が再発しかねない。それを考えると来週は「適切な運動」による刺激もほしい。成長戦略実行国会開会中の政界から、関連銘柄の上昇に火をつけるようなポジティブな新政策が登場すれば、それは海外投資家の日本買い、東京市場への新たな資金流入という「投薬による治療」にもつながるはずだ。
というわけで来週は、売買高、売買代金がどれだけ回復するかに注目しながら、日経平均終値の変動レンジは14400~14900円とみる。(編集担当:寺尾淳)