環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉は、大詰めを迎え、焦点となっているコメなどの農作物重要5項目の検討に入った。
海外での農業国では、農家の規模が大きく、生産は日本と比べて効率的なため、多くの農作物が日本より割安となっている。農林水産省は、コメなど重要5項目の国内外の価格差を2~3倍と試算しているが、その不備を指摘する声は多い。
全国消費実態調査では、1人当たりの重要5項目の消費額を算出、さらに、産業連関表を使って、加工品や、外食での消費額を割り出して加算した。この消費額と内外価格差から算出した1人当たりの負担額は、5項目合計で、2万4000円、4人家族では、9万6000円と試算した。5項目は生活に欠かせないため、低所得所帯ほど負担増となる「逆進性」が目立っている。
関税維持を主張するTPP反対派もこうした「隠れた負担」を指摘する。しかし交渉では、5項目も加工品は、関税撤廃に伴う収入減を政府が税金で補填するのが所得補償制度でTPPで自由化した農作物に導入される公算が大きい。
税負担は関税と違って、富裕層が重いため、所得補償の方が、低所得者の負担は軽くなるとみられる。
一方日本の農家保護率は、ノルウェー、スイスに次いで世界で3位の水準。米国との自由貿易協定(FTA)などで、関税を引き下げた韓国が4位に下がり、日本との順位を交代した。日本はTPPで、関税撤廃の例外とするよう各国に求めているが、関税で、日本国内の価格が高どまりで、家計に「かくれ負担」を抱いていることはほとんど議論されていない。
民間試算では、国民1人当たり2万円以上、来年4月は、消費税率引き上げによる負担増を上回り、低所得者ほど重荷になるようだ。
この重要5品目の交渉いかんでは、今後の日本の農業政策に大きな影響を与えるのは必至、政府、業界関係者は、その成り行きに大いに注目している、というのが実情と言えよう。(編集担当:犬藤直也)