ソニーは、売上高は11.8%増、営業利益は40.0%増だが、最終損益は401億円の赤字が158億円の赤字に圧縮するにとどまり、赤字額はシャープより多い。スマホは日本勢では最も好調だが、テレビ、デジカメ、ビデオカメラ、パソコンはことごとく売上減。テレビの赤字が圧縮してエレクトロニクス事業が3年ぶりに営業黒字になったが、当たりはずれが大きい映画事業はヒットに恵まれず赤字だった。販売で苦戦し、売上高営業利益率がパナソニックの3.9%やシャープの2.5%に対して1.4%と見劣りするのも気になるところだ。通期見通しは売上高は13.2%増だが、営業利益は26.1%減、最終利益は30.3%減の300億円と増収減益見通し。最終利益は500億円から300億円に下方修正した。
前期の3月期通期決算では、ソニーは資産売却を進めて最終黒字を達成し、パナソニックとシャープは最終赤字だったが、今期の通期決算では3社とも最終黒字になる見通しで、その通りになれば晴れて「赤字三兄弟」の汚名をそそぐことになる。
■新「赤字兄弟」は何が問題なのか?
NECの決算は深刻だ。売上高は4.5%の減収で、営業利益は473億円から3億円へ99.2%の大幅減益。最終損益は79億円の黒字から261億円の赤字に転落して、8社中最大の赤字を計上した。超円高で景気も今より悪かった前年同期のほうが業績が良かったことになる。全産業を見渡しても、中間期が「去年のほうが良かった」というケースは珍しい。去年良かったのは利幅が大きかった携帯電話の基地局増設で、「つながりにくい」と言われたソフトバンク<9984>モバイルを中心に盛り上がった特需が一段落し、反動減が一気にきた。7月にスマホの新製品開発を停止した携帯電話部門の在庫処分で約110億円の特別損失を計上したが、それを差し引いても最終赤字は約150億円にのぼる。通期見通しは売上高2.3%減、営業利益12.8%減、最終利益34.3%減の200億円と減収減益だ。
富士通は売上高3.9%増、営業利益約2.5倍(149.6%増)で減収減益だった前年同期と比べると営業利益はV字回復しているが、最終損益の赤字は解消せず赤字幅が144億円から96億円へ33.2%縮小しただけ。前年同期はパナソニックやシャープの巨額赤字の陰に隠れて最終赤字があまり目立たなかったが、旧「赤字三兄弟」が懸命に赤字減らしに取り組んだのと比べると、効果があがっていない。システム開発部門は好調でパソコンも復調しているが、NTTドコモ<9437>の「ツートップ」から外れたスマホの売上不振で200億円を超える営業赤字を計上したのが大きく響いている。通期見通しは売上高5.4%増、営業利益58.6%増と増収増益で、最終損益は450億円の黒字転換を見込んでいる。
新「赤字兄弟」のNECと富士通は何が問題なのか。それは収益性の悪さである。
9月中間期の売上高営業利益率は他の6社が平均3.2%で、最悪のソニーでも1.4%なのに対し、NECは0.02%、富士通が0.5%と1%を切る。前期の通期でも3.7%、2.1%だったのに、あまりにも悪すぎる。そのため、9月中間期の営業利益の通期見通しに対する進捗率は、50%前後あってしかるべきなのにNECは0.37%という冗談のような数字で、富士通も7.7%しかない。他の6社は最も悪いソニーでさえ30%ある。
下期は消費増税前の駆け込み需要があるとはいえ、何か巨額の利益計上ができるウルトラCでも出てこない限り、通期営業利益は高く見積もってもNECは見通しの50分の1の20億円、富士通は見通しの5分の1強の300億円程度が関の山ではないだろうか。その程度であれば両社とも最終黒字達成はおぼつかないだろう。もちろん、旧「赤字三兄弟」がやっているように事業売却、資産売却、リストラを大胆に推し進めれば最終黒字化は可能かもしれないが、NECの純資産は7878億円、富士通は7711億円で、今もその2倍以上あるパナソニック、約4倍あるソニーほどには売却できる事業、資産を持っておらず、リストラしても効果があがりにくいという弱みがある。
収益性が悪い上に売るものも足りない。これだけは断然強いという分野もない。新「赤字兄弟」のNECと富士通は〃赤字病〃を治すのに時間がかかり、旧「赤字三兄弟」以上に前途多難かもしれない。(編集担当:寺尾淳)