「金融緩和の矢」「異次元緩和」で利益が大幅に増加
11月14日、大手金融グループ「メガバンク」3行のみずほ<8411>、三菱UFJ<8306>、三井住友FG<8316>の9月中間期決算が出揃った。アベノミクスの「大胆な金融緩和の矢」、4月の日銀の「異次元緩和」の恩恵を受けて3行とも増収増益になり前年同期比で利益が大きく伸びる好決算で、通期の純利益見通しも、3行とも従来予想より1000~1700億円上方修正した。自己資本比率、不良債権額も大きく改善し、さらに株式の評価益が大きく伸びて、財務の健全性がいっそう増す内容になった。
みずほの9月中間期は、経常収益は6.4%増の1兆5405億円、経常利益は98.5%増の5673億円、中間純利益は133.2%増の4297億円という大幅増益。純利益はみずほFG発足後で最高になった。通期見通しの当期純利益は7.0%増の6000億円で、減益見通しだった5000億円から1000億円上方修正した。通期配当見通しは前期と同じ6円で据え置いている。
三菱UFJの9月中間期は、経常収益は9.6%増の2兆5832億円、経常利益は49.2%増の8504億円、中間純利益は82.5%増の5302億円。通期見通しの当期純利益は19.7%増の9100億円で、減益見通しだった7600億円しから1500億円上方修正した。通期配当見通しは前期より1円増配する14円で据え置いている。
三井住友FGの9月中間期は、経常収益は14.3%増の2兆3630億円、経常利益は78.5%増の8359億円、中間純利益は52.8%増の5057億円で中間期の純利益としては過去最高になった。通期見通しの経常利益は19.2%増の1兆2800億円、当期純利益は5.5%減の7500億円で、経常利益は2500億円、当期純利益は1700億円、ぞれぞれ上方修正した。通期配当見通しは従来予想の110円を120円に10円、増額修正している。
■株価の上昇で株式の評価益が伸びる
大手銀行の自己資本比率の算出方法は今年度から「国際統一基準/バーゼルIII」に切り替わったが、メガバンクの健全性は9月中間期では大きく改善した。中小企業金融円滑化法(亀井法)が前期末の3月末に期限切れになったが、不良債権残高は大きく減っている。不良債権処理にかかるコストの減少も、決算での大幅利益増の要因になっている。
みずほの連結総自己資本比率は3月末の14.18%から14.98%に改善。Tier 1比率は3月末の11.02%から11.70%に改善した。不良債権残高(金融再生法開示基準)は3月末と比べて2128億円減少している。
三菱UFJの連結総自己資本比率は3月末の16.68%から16.84%に改善。Tier 1比率は3月末の12.74%から13.12%に改善した。不良債権残高(金融再生法開示基準)は3月末と比べて1751億円減少している。
三井住友FGの連結総自己資本比率は3月末の14.71%から16.03%に改善。Tier 1比率は3月末の10.93%から12.13%に改善した。不良債権残高(金融再生法開示基準)は3月末と比べて1529億円減少している。
有価証券の評価損益を見ると、3行とも株価の上昇で株式の評価益が3月末比で増加した。みずほは1兆1341億円、三菱UFJは1兆5411億円、三井住友FGは3860億円それぞれ増加している。株式の減損処理額の減少も利益の押し上げ要因になっている。また、3行とも債券、特に国債の連結貸借対照表計上額(保有額)が大きく減少し、みずほは4兆8000億円、三菱UFJは7兆4000億円、三井住友FGは11兆1000億円減らしている(満期保有目的を除く)。4~9月の間に3行合計で国債保有額は23.3兆円減少し、メガバンクの国債に頼っていた収益構造は、過去の話になろうとしている。
■手数料や株式売却益は伸びても本業は儲からない
みずほは、みずほ銀行での投資信託の販売が好調で手数料収入が増加し、傘下のみずほ証券での株式売買手数料の増加も収益に貢献した。また、株価の上昇で三菱UFJと三井住友FGは多額の株式売却益を計上し、それが利益を押し上げている。
しかし、本業の儲けを示す実質業務純益は、三井住友FGは三井住友銀行単体で前年同期比6%増の4532億円になったが、みずほは傘下銀行合算ベースで22%減の3619億円、三菱UFJも傘下銀行合算ベースで14%減の1兆5000億円と苦戦している。その最大の原因は日銀の異次元緩和の影響で貸出金利が低下し、それから預金金利を差し引いた利ざやの縮小が続いていることで、たとえば三菱UFJの7~9月期の利ざやは1.03%しかなく過去最低水準になっている。このようにメガバンクは銀行業の本業では儲からない収益構造になっていて、それを手数料収入や株式売却益で補う構図になっている。
今の状況では、預金を集めてリスクを取って企業に融資を行い経済活動を活発にし、そこから利ざやを得るという「銀行業の本道」からは、まだ外れている。メガバンクの決算が、本業の部分で十分な儲けを出せる銀行らしい中身に変わるのは、まだ遠い先のことなのだろうか。(編集担当:寺尾淳)