11月6日、トヨタ自動車<7203>、本田技研工業<7267>、日産自動車<7201>、スズキ<7269>、マツダ<7261>、富士重工業<7270>、三菱自動車<7211>、ダイハツ工業<7262>の自動車業界8社の9月中間期決算が出揃った(売上高順)。
トヨタは売上高14.9%増、営業利益81.0%増、最終利益82.5%増。最終利益は初の1兆円超えで、外部環境の良さをうまくとらえた好調な決算。過去最高だった6年前の水準に接近している。ホンダは売上高21.6%増、営業利益28.7%増だが、それに比べて最終利益13.5%増がやや見劣りする。日産は売上高17.0%増だが営業利益は2.6%減で、最終利益もわずか6.8%増と収益性が悪化している。リコール費用の増加が響いただけでなく、円安など外部環境の好転を活かせず海外販売が不振で営業減益になるようでは事態は深刻で、ゴーンCEOは決算発表と同時に役員人事を刷新し、社内にカツを入れた。
スズキは売上高11.7%増、営業利益36.5%増で過去最高、最終利益23.3%増と、収益性が着実に向上した好決算。マツダは売上高22.6%増で8社中2位の増収率で、営業利益は6.4倍で過去最高、最終利益は4.3倍と派手だが、それは前年同期が悪すぎたため。売上高営業利益率は5.8%で、10%を超えるトヨタやスバルはもちろんのこと営業減益のダイハツよりも小さく、4期連続最終赤字の傷は深い。スバルは売上高は25.3%増で前年同期より増収幅は圧縮したが増収率では8社中トップ。営業利益3.4倍で過去最高、最終利益2.4倍と収益性が飛躍的に向上した。売上高営業利益率は13.3%でトヨタの10.0%をしのぎ、業績上では超優良企業である。
三菱は売上高は8.0%増と控えめだが、営業利益64.9%増で過去最高、最終利益55.5%増と利益が出ない体質から確実に回復している。ダイハツは海外が好調で売上高4.3%増でも、営業利益4.7%減、最終利益17.3%減で、国内販売が好調だった前年同期の売上高約2割増、最終利益約2倍という好決算の反動が出た。ただ同じ営業減益でも、日産が売上高営業利益率4.6%なのに対しダイハツは7.8%もあり、収益性の悪化は日産ほど深刻ではない。それでも最終利益の2ケタ減はやはり問題だろう。
■最終損益ではっきり明暗が分かれそれが通期見通しにも影響
自動車各社は円安の恩恵を受けて全8社が売上高増。三菱、ダイハツ以外の6社は2ケタの増収で、営業利益は減益の日産、ダイハツ以外の6社は大幅増益になったが、最終損益の部分で各社の明暗が分かれた。
昨年の9月中間期は、前期比6.7倍のトヨタ、2.3倍のホンダ、2.8倍の三菱、2倍のダイハツが「倍増以上組」、30.9%増のスズキ、23.5%増のスバルが「着実に増益組」、日産、マツダが「最終黒字転換組」に三分されていた。今期は「倍増以上組」が4.3倍のマツダと2.4倍のスバルの2社に減り、82.5%増のトヨタ、55.5%増の三菱、23.3%増のスズキは「大幅増益組」、13.5%増のホンダ、6.8%増の日産は「小幅増益組」、17.3%減のダイハツが「減収組」と分かれた。
それは3月期の通期業績見通しにも影響を及ぼしている。「倍増以上組」のマツダは通期の営業利益を400億円、最終利益を300億円上方修正し、スバルも売上高を2200億円増、営業利益を800億円増、経常利益を790億円増、最終利益を570億円増という大幅な上方修正を発表した。「大幅増益組」のトヨタも売上高、営業利益、最終利益を上方修正し、三菱は売上高は下方修正したが経常利益、最終利益は上方修正。スズキは営業利益を上方修正している。一方、「小幅増益組」のホンダは通期業績見通しを期初予想のままに据え置き、日産は世界販売台数も売上高も営業利益も最終利益も全て下方修正で、営業利益見通しは1200億円(19.6%)減、最終利益見通しは650億円(15.4%)減というショッキングな内容だった。「減益組」のダイハツの通期見通しは売上高は500億円、営業利益と経常利益は20億円と小幅な上方修正を発表したが、最終利益は20億円下方修正。それでも日産と比べると全然、ネガティブ・サプライズではなかった。