23日のNYダウは175ドル安。中国のPMIが悪化して節目の50を割ったインパクトは東京市場よりも大きく、12月の中古住宅販売件数、CB景気先行指標総合指数、シカゴ連銀全米活動指数が市場予測を下回った上にアルゼンチン、南アフリカ、トルコの通貨の暴落が加わって、金融株を中心に主力株が軒並み下落した。24日朝方の為替レートは、ドル安が進みドル円は103円台前半になったが、ヨーロッパのPMIが良かったためユーロは堅調でユーロ円は141円台前半だった。
シカゴCME先物は一時15280円まで下落し、清算値は14日の現物1月最安値15383円に近い15390円。新興国経済への不安、NYの株安、円高ドル安が重なって大幅下落必至の日経平均は222.32円安の15473.57円で始まった。一進一退しながら15400円台は維持し、TOPIXの下落幅は日経平均ほど大きくない。午前10時8分に14日の1月最安値を割り込む15377円をつけてもほどなく反発し、心配された上海、香港市場のスタートが小幅安だったこともあり15400円台後半で安定して動き、前引けは15454円だった。
後場も当初15400円近辺での安値もみあいが続いていたが、午後1時45分頃から一段安。永田町では通常国会が開会し2時から安倍首相が施政方針演説を行ったが、日経平均はその2時台もズルズル下げ続けて2時43分、CME最安値15280円にさや寄せするように15288円の安値をつける。下落の要因はオーストラリア中央銀行のリドアウト理事の発言により豪ドルが大幅下落したこと。海外の株価、米ドル、新興国通貨、資源国通貨が揃って下落し、金や債券や日本円が買われる世界同時リスクオフに利益確定売りの金曜日も重なって、外は小春日和でも兜町には寒風が吹きすさび、株式市場はボロボロになってしまった。それでも大引け前には少し持ち直し、日経平均終値は304.33円安の15391.56円で2勝3敗、前週末比342.90円安で今週の取引を終えた。これで今年は3週連続の下落。日中値幅は197円だった。TOPIXは-22.92の1264.60で1300の大台は遠ざかるばかり。売買高は31億株、売買代金は3兆809億円で、3兆円を超えたのは昨年12月13日のメジャーSQ以来だった。
値上がり銘柄115に対し値下がり銘柄が全体の9割を超える1620もあれば、33業種別騰落率は全業種がマイナス。マイナス幅が小さいのは空運、ゴム製品、石油・石炭、建設、化学、電気・ガスなど。大きいのは保険、倉庫、鉄鋼、非鉄金属、その他金融、銀行などだった。
日経平均採用225種でプラス銘柄は11しかなく、マイナスは211銘柄。プラス寄与度1位は昨年9月に採用された日東電工<6988>で+11円、2位は4~12月期の営業利益2.2倍の業績観測報道で買われたミネベア<6479>で+1円。マイナス寄与度1位は通話も月1280円の定額制のスマホ新料金を発表したが3日続落のソフトバンク<9984>で-34円、2位は3月の香港上場を計画するファーストリテイリング<9983>で-23円、3位はファナック<6954>で-20円。「御三家」合計で日経平均を79円押し下げた。
みずほ銀行の頭取人事を発表したみずほ<8411>は5円安。三菱UFJ<8306>は13円安、三井住友FG<8316>は147円の大幅安だった。国税庁はNISA(少額投資非課税制度)口座の開設数が昨年末で約475万件と発表し、2020年目標の1500万件の約3分の1に達し出足は順調。キャンペーンに力を入れたものの野村HD<8604>は11円安、大和証券G<8601>は15円安だった。
86円安のトヨタ<7203>はグループ全体で今年の世界販売1032万台という計画を明らかにした一方で、トヨタ労組が5年ぶりに組合員平均で4000円のベアと年230万円超の一時金を要求というニュースもあった。トヨタ労使の交渉の成り行きは安倍首相も期待する春闘の賃上げへの影響が大きく、要注目。日産<7201>・ルノー連合は世界生産を一体運営し年間4000億円のコストを削減する話も出たが2円安。ホンダ<7267>は100円安、マツダ<7261>は13円安だった。NEC<6701>とソニー<6758>はプラスの時間帯もあったが1円安。シャープ<6753>も3円安にとどまったがパナソニック<6752>は47円も下げた。
安川電機<6506>は前日に4~12月決算を発表し、営業利益は2.5倍、純利益は2.9倍と好調だったが通期見通し据え置きへの罰で104円安で値下がり率4位。総務省が前日、LTEの10倍の通信速度の第4世代携帯(4G)の周波数帯割り当ての公開ヒアリングを開き、3大キャリア、ソフトバンクが完全子会社化予定のイー・アクセスが参加した。しかしソフトバンクは297円安、KDDI<9433>は89円安、NTTドコモ<9437>は27円安。2016年にサービスを開始する予定。
従来品より3割安い内視鏡を中国市場に投入すると報じられたオリンパス<7733>は値動きなし。医薬品ではアメリカのFDA(食品医薬品局)がランバクシーのインド工場が製造する原薬の輸入を禁止したため第一三共<4568>が121円の大幅安で値下がり率5位になった。三井化学<4183>はJPモルガンが新規に好レーティングをつけて売買高12位と買われ9円高で値上がり率16位に入った。「セルロースナノファイバー」に地合いは関係なし。第一工業製薬<4461>は30円高で値上がり率5位、売買高2位、売買代金8位と商い盛況。星光PMC<4963>は98円高で値上がり率3位だった。
個人投資家の人気を集めるネット・ゲーム関連は、エイチーム<3662>は売買代金5位に入り540円高で昨年来高値を更新し値上がり率8位。コロプラ<3668>は110円高、トーセ<4728>は71円高で昨年来高値を更新し同4位、グリー<3632>は50円高で同11位。サイバーエージェント<4751>は前日、連結子会社のCygames社がスクウェア・エニックスHD<9684>と共同開発した「ドラゴンクエスト・モンスターズ・スーパーライト」を配信開始と発表し、ゲームをしない人でも知っている有名ソフト「ドラクエ」初のスマホ版として話題を集めた。サイバーエージェントは520円高、スクエニHDは400円高で値上がり率トップ。ともにストップ高で昨年来高値を更新している。
この日の主役は日経平均プラス寄与度1位の日東電工。302円高で値上がり率6位、売買代金12位。スマホやタブレット向け偏光板、ITOフィルムが好調で12月の売上高が前年同月比で21%増と発表するとシティグループ証券が目標株価を引き上げた。電子部品セクターなのでこの日も155円高と上昇した日本電産<6594>の影響も受けたが、日経平均構成銘柄採用後に業績の下方修正を2回も行い株価が低迷し続けた「出遅れ感」も背景にある。昨年末頃はマイナス寄与度の上位常連で日経平均の足を引っ張り続けるのに業を煮やし、「新規採用がもし任天堂<7974>だったら?」という語られ方もしたが、その任天堂は衝撃的な決算見通しを出して株価が急落し、この日も290円安。後になって「やっぱり日東電工で良かった」と言うのは節操がなさすぎる、か?(編集担当:寺尾淳)