【今週の展望】落城寸前のアベノミクス相場を救うのは何?

2014年03月16日 20:14

 ベルギーのブリュッセルで17日にEU外相会議、20~21日にEU首脳会議が開かれる。ウクライナ問題について重大な決定が下されるかもしれない。18~19日はイエレン議長が就任してから初のアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。19日には結果の発表後にイエレン議長が記者会見する。2012年12月に導入されて利上げの検討開始の目安とされてきた「失業率6.5%」が撤廃される可能性がある。2月は6.7%で数値が接近しているが、まだ利上げができる環境が整っていないためで、それも含めた「フォワードガイダンス」の修正が今回のFOMCのポイントになりそうだ。20~21日は中国・北京でPM2.5など大気汚染問題について日本、中国、韓国の実務者レベルの初会合が開かれる。20日にアメリカのFRBは大手銀行30行の年次ストレステストの結果を公表する。

 アメリカ主要企業の決算は、18日はオラクル、20日はナイキ、レナー、21日はティファニーが発表する予定。

 早いもので、彼岸底だ、いや彼岸天井だと言っているうちに、今週はその彼岸の入り。お天気だけでなく日本株も「寒さも彼岸まで」で区切りをつけてほしいが、前週は消費増税後について悲観的な見通しがゾロゾロ出てくるわ、薄商いが極まるわ、海外発のリスクオフで日経平均が底なし沼のようにボロボロ下げるわで、いつまでたっても兜町には春が来ない。14日の終値は7日終値と比べると946円、6.19%の下落で、NYダウの387ドル、2.35%下落よりも下がり方が激しかった。7日は0.928だったNN倍率は、14日は0.891までひろがって0.88~0.93のボックス圏から上放れできずに押し込められた。前週は日足一目均衡表に絶好の上昇機「雲のねじれ」が出現したが、海が二つに割れて「約束の地=彼岸天井」への通り道が開けたせっかくのチャンスをむざむざと見送り、引き返してしまった。モーゼともどもエジプト軍に皆殺しにされて話はそこでおしまいだ。

 ボヤキはこれぐらいにして14日の日経平均終値14327円のテクニカルポジションをチェックしてみる。約1ヵ月ぶりの安値水準で「落ちるところまで落ちました。これから先は上がるだけ」なのか、それともまだまだ落ち込む可能性があるのか。

 日足一目均衡表では、ねじれを抜けられなかった「雲」はまた厚くなり、14923~15158円とはるか上空にある。雲の上限は何度も語られた「半値戻しライン」で、だからこそ前週はここで下値を死守し、雲を下に眺めながらさらに上を目指したかったが、後の祭り。移動平均線は、75日線は雲の上にあり、5日線は14863円、25日線は14790円とかなり上の方にある。「いくら何でもここで止まるだろう」と思われた200日線の14505円も大きく割り込んでしまい、それが14日の投げ売りを呼んだとも言えそうだ。

 今の状況は、敵が三の丸、二の丸を次々と突破して本丸の天守閣の途中まで攻めのぼってきたようなもので、落城寸前のピンチ。チャート上の〃落城〃とは、さらに急落して13500円とか13000円のような、最長移動平均の期間の過去200日間、全くタッチしたことがない低い価格帯まで落ちて新たに仕切り直しすることで、トレンド転換と言うより、もはやパラダイム・シフトとでも言ったほうが適当。それは「アベノミクス相場の完全なる終了」を意味する。

 縁起の悪いことに、テクニカル指標のシグナルは売り転換とさらなる下落を暗示するネガティブなものが点灯しはじめた。くわしい説明は省くが「新値三本足の陰転」「MACDの陰転」「パラボリックの陰転」などがそれで、14日の急落で移動平均線の5日線、25日線が「ミニ・デッドクロス」に接近していることも凶兆と言える。

 そんな、下落がさらなる下落を呼ぶ負の連鎖を断ち切って、「アベノミクス相場の落城」を食い止めるには今週の反転あるのみ。とりあえずのメドは14505円の200日移動平均線ラインに戻すことだが、14日時点でそこまであと178円もある。前週は薄商いが極まっており、自律反発だけで突き抜けるにはエネルギー不足。「プーチン大統領がアメリカ、EUに歩み寄り」といった海外の吉報や、与党内に景気刺激になる新政策案が浮上するとか、黒田日銀総裁が4月以降に撃つ予定の金融政策の一端を漏らすといったポジティブなニュースがほしい。それが落城寸前のアベノミクス相場を救うことになるだろう。

 あとは日がたつにつれてメジャーSQを通過した需給は改善していくと見込まれ、年度末を控えて26日まで権利配当取りで個別株が物色される時期が来る。企業業績全体に関してはほとんど問題はなく、3月期末が近づいて通期の好業績の観測報道や、業績見通しの上方修正、増配の発表も多くなるはず。週初に踏ん張って14500円近くまで反発すれば、その後は25日移動平均線の14790円あたりで抵抗を受けながらも値固めができ、三連休の後、権利確定イベントがあり年度末のドレッシング買いも入りそうな次の週へ期待をつなぐことができる。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは14400~14800円とみる。もし、ウクライナで軍事衝突が起きたら、その時はその時と腹をくくるしかない。タマは日本までは飛んでこない。(編集担当:寺尾淳)