倒産動向には落ち着きも 中小規模の“紙媒体”で苦戦 2013年広告関連業者の倒産動向

2014年03月22日 20:08

 帝国データバンクが18日に発表した2013年広告関連業者の倒産動向によると、市場好転で負債件数、負債総額は減少傾向にあり、広告関連業者の倒産動向はひとまず落ち着く推移となる模様だ。一方でIT環境の充実にともなってクライアントが自ら販促ツールの作成などを行うケースが増え、中小零細業者の特に“紙媒体”では今後、さらなる苦戦も予測される。

 13年の倒産件数は、205件発生。前年比7.7%の減少で、2年ぶりに減少した。前回調査(12年8月)では、同年 7月までに倒産した広告関連企業は、前年同期比3.7%増の141件と前年を上回るペースで推移していたものの、通年では前年を下回った。

 株高や企業業績の拡大とそれに伴う個人消費の回復、不動産や耐久消費財における増税前の駆け込み需要などによる広告市況の好転が、年後半以降の倒産の抑制につながった模様。負債総額は、同23.0%減の135億7300万円と、3年連続で減少となった。11年以降は低水準が続き、13年も前年を大幅に下回ったことで、05年以来8年ぶりの水準となった。件数が減っているなか、1件あたりの負債額も減少し、負債総額は大幅に減少した。

 負債規模別に見ると、「5000万円未満」が138件となり、構成比は67.3%ともっとも高い。広告関連業者全体では倒産件数が減少となるなか、「5000 万円未満」の構成比は上昇傾向が続いている。ちなみに、全業種における負債「5000万円未満」の構成比は 54.4%であり、広告関連業者は特に割合が高いことがわかる。

 なかでも目立つのが、新聞や雑誌、パンフレット、チラシなどの“紙媒体”のほか、販促の企画や販促ツールの制作などを手がけていた小規模業者の倒産だ。「IT化に伴い得意先において内製化が進んだことで受注が減少」したことを倒産原因にあげている業者もあり、IT環境の充実による受注環境や媒体環境の変化が、従来型の媒体を扱う中小零細業者の倒産につながっている可能性がある。

 今後の見通しとしてTDBでは、アベノミクス効果による株高・円安は、企業業績を押し上げ、個人消費を回復させようとしていると指摘し、こうした経済環境は、広告業界にとって紛れもなく追い風であり、今後もしばらくはその恩恵を業界にもたらすだろうとしている。そうした意味では、広告関連業者の倒産動向はひとまずは落ち着いた推移になると予想される。

 その一方で、中小零細クラスの業者にとっては、厳しい業界環境が続くことが予想される。IT環境の充実はクライアント企業の内製化を促し、販促ツールや広告物のデザイン、制作、撮影などを自ら行うケースが増加している。従来は広告関連業者の業務領域だった作業が侵食されていることで、受注の減少につながっているとの見方だ。

 電通の「日本の広告費」によると、13年はインターネット広告が前年比 108.1%と引き続き伸びている反面、新聞(同 98.8%)や雑誌(同 98.0%)といった“紙媒体”は苦戦しており、こうした媒体環境の急速な変化が、ノウハウに乏しい中小零細業者の負担となっており、今後も小規模業者の倒産動向には注意が必要としている。(編集担当:横井楓)