農林水産省が、興味深い取組みを始めた。2020年までに日本の水産物の輸出額を今の2倍に拡大する目標を達成するため、国内外の水産物見本市などで専用のキャッチコピー、ロゴマークを使ってPRしていくというものだ。キャッチコピーは「Excellent Sea food JAPAN」。ロゴマークは、豊富な漁場を示す「波」と活きが良くはねる「魚」、その背景に美しい日本を象徴する「富士山」をデザインし、「新鮮で美味しい日本産の水産物」を表し、「日本産」であることを、赤いラインの丸囲いで表現している。
東京オリンピック開催を意識してか、安倍政権は「2020年までに農林水産物と食品の輸出額を1兆円へ倍増する目標」を掲げていて、そのうち、水産物は2同年までに3500億円を目指すとしているので、今回の水産物輸出促進PRもその一環と読むことができる。しかし、この取組みは、キャッチコピーとロゴマークを浸透、拡大させたいという思いからなのか、水産業者が手続きさえすれば、誰でもこれらを使用できる制度となっている。つまり、キャッチコピーやロゴマークを使用しているからといって、個別のそれぞれの商品自体に「お墨付き」があるわけではないということだ。特定保健用食品マークや、JASマーク、有機JASマークなど、多くの食品表示に関するマークは、それぞれの一定の規格を満たす商品に付けられているが、今回の「Excellent Sea food JAPAN」の取組みは、それとは種類が異なるロゴマークということになる。
しかし既に、水産物のロゴマークには世界標準となりつつある「海のエコラベル」がある。WWFが行っている”MSCラベル”というもので、これは、限りある水産資源や海洋環境を守って獲った水産物に与えられる証明のロゴだ。消費者はMSCラベルが付いた水産物を選ぶことによって、厳しい取り組みをしている漁業者を支えていくことにも繋がるとされている。
現在、日本の水産物は、香港などアジアでの安定した人気はあるものの、国内消費向けが大半を占めていて、内需指向が強いといわれている。今回の農林水産の「Excellent Sea food JAPAN」は、取組み自体は目標もわかりやすく明確である。ただし商品のお墨付きではないのでただのキャンペーンイベントになっていることがどこまで評価されるのか、という点だろう。実際にどの程度の効果が発揮できるのか、未知数である。(編集担当:久保田雄城)