4月1日の消費増税は、国会の本会議採決は2年前、内閣の実施決定は半年前なので、もはやマーケットは完全織り込み済み。日柄的には4月4日のアメリカの雇用統計、4月7~8日の日銀の金融政策決定会合を前にして様子見・手控えムードが立ちこめる週になる。だが外部要因はウクライナにしても中国にしても、不安は残しながら小康状態。需給も3月中旬の海外機関投資家の「セリング・クライマックス」も権利確定イベントもすでに通過しており、状況としては「売りたい勢力は3月中に売りたいだけ売ってしまった」に近い。「厚生年金基金の解散に伴う売りが出る」という解説もあるが、いきなり解散を迫られるわけではないので、その要素は時間をかけて出てくる性格のものだろう。
むしろ、新規の資金流入のほうに期待をかけたい。機関投資家は、年度末のポジション整理が終われば将来の成長に期待するグロース投資の物色に動きやすくなるはず。モーニングスターによると日本株対象の投資信託の新規設定は今週、3月31日に1件、4月1日に2件、4日に1件ある。個人も、就職などで人生の節目を迎える人に限らず、人事異動や昇格や昇給がある4月の年度初めは新しいことを始めやすい季節。NISA(少額投資非課税制度)を利用して4月からインデックス投信やETFの定期定額購入を始める人はけっこういるとみる。消費増税でそこまでの余裕はないと思われるかもしれないが、来年10月には次の消費増税が待っていて将来に不安があるから、貯蓄の延長でNISAの枠を利用して比較的堅実なものからコツコツ始める。これも個別株投資に活躍する個人投資家とはまた別の、新規の資金流入ルートだろう。
そのように、今週の日本株はベーシックな部分では買いがいくぶん優勢な情勢になるとみて、次は日経平均のテクニカルな要素。28日の終値14696円は200日移動平均線の14525円、5日移動平均線の14538円よりも上で、25日移動平均線の14742円、75日移動平均線の14838円よりも下という位置にある。200日移動平均線は前週の途中までは、上値抵抗ラインとして値動きを下にはね返す役割をしつこく果たしてきたが、いったん突破してしまえば今度は値動きを下で支える下値支持ラインとして機能しはじめた。昨日の敵は今日の友。五条大橋で降参した後の弁慶のようなもので味方になれば百人力。その〃守備力〃を今週も発揮してくれるだろう。
上を見ると、3月中は手が届かなかった日足一目均衡表の「雲」の下限は14757円で、あと61円、25日移動平均線を突破すればわずか15円で到達できる距離に迫ってきた。「14742円の25日移動平均線を突破し、すぐさま下限14757円の一目均衡表の雲に突入。14790円まで上昇して3月14日に空けたマドを完全に閉めきり、引き続き75日移動平均線の14838円を目指す」というのが、今週の攻撃目標設定になるだろう。
リスクがあるとすれば4月1日の日銀短観。3月10日に発表された景気ウォッチャー調査の先行判断DIは-9.0の40.0で、消費増税後の景気についてきわめて悲観的な見方を示していた。これは「街角の見方」だが、もし、日銀短観の大企業経営者対象の先行業況判断DIが12月調査の+14からマイナスに転落したりしたら、日経平均の急落は必至。東京市場にとって「4月は残酷な季節」の幕開けを告げる出来事になる。安倍内閣に協力して気前よくベアをはずみ、財界首脳が「反動減は限定的」などとリップサービスしていたのが、実際の大企業経営者の本音が「4月からすさまじい景気後退が来る」だったら、そうならざるを得ない。1日は、日銀短観の大企業の先行業況判断DIがマイナス近くまで急落しないように祈るしかない。
それがなければ、今週の日経平均終値の変動レンジは14500~14850円とみる。15000円チャレンジは、アメリカの雇用統計、日銀会合を通過した後の来週のお楽しみにとっておこう。ワルノリすると足をすくわれて痛い目にあうことは、昨年5月で学習済みだ。(編集担当:寺尾淳)