27日のNYダウは4ドル安。新規失業保険申請件数は昨年11月以来の低水準だったが、10~12月のGDP確報値は上方修正されても市場予測を下回っては材料にならず期末の利食いに押された。「iPhone6」の9月発売を発表したアップルもIBMもグーグルも下落。かつてNYダウ銘柄だったシティグループはストレステスト不合格になり、自社株買いや配当などの資本計画をFRBに却下されて大幅下落した。28日朝方の為替レートは、ドル円は102円台前半、ユーロ円は140円台前半で、前日夕方から少し円高に振れた。
月末の最終金曜日なので取引時間前に国内経済指標がまとめて発表された。2月の労働力調査の完全失業率は前月から0.1ポイント改善して3.6%。有効求人倍率は0.01ポイント改善して1.05倍になり、15ヵ月連続改善で2007年8月以来の水準になった。新規求人はバブル時代末期の1992年5月以来の高水準で、サービス業16.7%増に対し製造業19.9%増と中身も悪くない。2月の消費者物価指数(コアCPI)は+1.3%で9ヵ月連続上昇。東京都区部の3月のデータは+1.0%で11ヵ月連続上昇。2月の家計調査の実質消費支出は前年同月比-2.5%で6ヵ月ぶりの減少。2月の商業販売統計の小売業販売高は3.6%増で7ヵ月連続の増加。大型店既存店販売高は1.3%増で、百貨店2.9%増、スーパー0.5%増。家計調査以外は良好な数字が出ていた。
シカゴCME先物清算値は14555円。配当落ち分の即日埋めで権利確定イベントを上々の出来で通過した日経平均は46.64円安の14576.25円で始まる。すぐにCME清算値にさや寄せして、マイナス圏で下値をうかがう動きが続くが、14519円の200日移動平均線が下値抵抗ラインになって底堅くはね返す。午前10時20分頃から上昇が始まり、10時台のうちに14600円を突破してTOPIXとともにプラス圏に浮上。11時台はプラス圏だが14650円までの狭いレンジで小動きし、前引は14626円だった。
後場は高く始まり14700円にタッチするが、午後1時すぎにはマイナス圏に落ちて14600円を割り込むというせわしないさ。しばらくプラスとマイナスを行ったり来たりするが、2時20分頃から再び上昇開始。2時44分に14713円の高値をつけるが25日移動平均線は抜けられず、やはり利益確定売りの金曜日なのかいったん凹むものの大引け前に急上昇して、73.14円高の14696.03円で3日続伸し4勝1敗、前週末比で471.80円上昇して今週の取引を終えた。日中値幅は193円。TOPIXは+9.62の1186.52で5日続伸。売買高は21億株、売買代金は2兆351億円で2兆円台をキープ。前日に続き後場の2時台に新規資金とみられる買いが入り、薄商いと乱高下が続いて顔色が悪かった東京市場も少しは健康的になり、ようやく春本番を迎える。
東証1部の値上がり銘柄は1386で全体の77%を占め、値下がり銘柄は320。33業種別騰落率のプラスは26業種、マイナスは7業種。プラス上位はその他金融、空運、証券、倉庫、銀行、食料品など。マイナス下位は精密機器、情報・通信、繊維、石油・石炭、パルプ・紙、電気機器などだった。
日経平均採用225種は値上がり162銘柄、値下がり54銘柄。プラス寄与度1位は3日続伸したファーストリテイリング<9983>で+28円、2位は信越化学工業<4063>で+4円。マイナス寄与度1位は4日続落したソフトバンク<9984>で-13円、2位はファナック<6954>で-11円だった。
メガバンクは復調し、みずほ<8411>は1円高だったが三菱UFJ<8306>は14円高、三井住友FG<8316>は160円高。野村HD<8604>9円高など証券セクターも好調だった。自動車はトヨタ<7203>は54円高、ホンダ<7267>は21円高だがマツダ<7261>は6円安。電機はソニー<6758>は16円高だったが、前日に事業戦略説明会を開き「2018年度の売上高10兆円」を打ち上げたパナソニック<6752>はインパクト不足なのかアナリスト受けがかんばしくなかったようで27円安。アップルが9月に発売する「iPhone6」に液晶を供給するジャパンディスプレイ<6740>は2円高、シャープ<6753>は5円高で売買高10位に入った。日東電工<6988>も89円高と買われていた。
ダイキン<6367>は電気自動車用のリチウムイオン電池の耐熱性を高める技術を開発したと日経新聞電子版が後場報じて株価が急上昇し88円高。同じ記事で、ダイキンと共同開発ではないが同じ技術を開発したと紹介されたジャスダックのニッポン高度紙工業<3891>は一時ストップ高で204円高。電池を冷やす装置に使われる電力消費が節約でき、それだけ燃費ならぬ〃電費〃が伸びるという。こんなテーマで株価が急騰するのはとても健康的で、春らしい。
季節がめぐってまた冬が来ればインフルエンザ関連銘柄として買われる大幸薬品<4574>は、除菌剤「クレベリン」2商品について、「置くだけで空間除菌ができる」という広告表現は景品表示法違反だと消費者庁から措置命令を受けて急落。234円安で値下がり率1位になった。株主総会でお騒がせしたアコーディア・ゴルフ<2131>は、保有するゴルフ場133カ所のうち90カ所を約1100億円で特別目的会社に売却して運営に専念すると発表したが値下がり率6位の66円安。
ローソン<2651>は2月期の純利益が15%増の380億円に伸びて過去最高という業績観測記事が出て150円高で3日続伸。宿泊予約サイトの一休<2450>は、2期連続で税引き前利益が過去最高になり期末配当を従来予想から300円上乗せして1600円とする公算大と報じられ48円高。居酒屋の1割にあたる60店舗を閉鎖と発表したワタミ<7522>は3円安。人手不足も長時間労働も解消して労働環境を良くし「ブラック企業」の汚名返上を図るという。スクエニHD<9684>はRPGゲームのレジェンド「ファイナルファンタジー」最新版をスマホ向けに配信という話題が大きな反応を呼び、141円高で4日ぶりに反発し値上がり率12位に入った。
デューデリジェンス、契約締結、業務支援など不動産取引サービスを提供するエスクロー・エージェント・ジャパン<6093>がジャスダックに新規上場した。公開価格は2700円だが初値はつかず6210円の買い気配で来週に持ち越し。前週は連敗を喫した新規IPOだが、今週は初値がつくまでは上首尾だった。
この日の主役はソフトバンクとヤフー<4689>。ヤフーがソフトバンクからウイルコムと合併予定のイー・アクセスを買収して通信事業に参入するというニュースにマーケットはネガティブに反応。ヤフーは売買高2位、売買代金3位と注目されながら下落幅が前場一時10%を超えてカラ売り規制まで入り、終値は35円安で値下がり率4位。ソフトバンクは「iPhone6」効果も吹き飛ぶ117円安。もちろん〃定位置〃の売買代金1位。買収金額3240億円は「高すぎて負担が大きい」というマーケットの評価で、売る方のソフトバンクもヤフーと親子の関係なので、〃他人同士〃のように資産売却を好感されて株価上昇、とはいかなかった。(編集担当:寺尾淳)