物は言いよう。イベントドリブンなどと横文字で言えば、『ドリヴン』というシルベスター・スタローン主演のカーレースの映画があったせいなのか何だかカッコよく聞こえるが、要するに「ワルノリ」のこと。どこかの誰かさんが「7~8日の日銀会合で追加緩和が決まる」と勝手に決め打ちしては仕掛け、外部要因の良さを味方に上昇相場をあおるだけあおった。それに乗せられる東京市場も東京市場だが、今年最少の薄商いだから大した抵抗もみせずにまんまとはまってしまい、ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも「まだ少し早い」とみられていた15000円の大台をやすやすと突破してしまった。
だが、子どもの頃を思い出してほしい。ワルノリをすると、後で必ず親や先生からのお仕置きが待っていた。お仕置きをされる前に自分で勝手に転んでケガをするなど「天罰」が下ることもあった。いま、イベントドリブンを仕掛けている勢力も、日銀会合で何も出なければ自分たちが損をかぶって、自己責任をとらされる………わけではない。
大人になったら、割に合わないことばかり。努力の多くは報われず、願いの多くはかなわない。憎まれっ子が世をはばかり、悪い奴ほどよく眠り、善人は早死にする。前週にイベントドリブンを仕掛けても7日か8日の前場で売ってしまえば、8日に何も出なくても当の本人たちは損はしない。そして、8日後場に「金融政策現状維持」が嫌気され、ワルノリ分が剥落して日経平均が急落すると、その他大勢の投資家は、悪いことなどしていないのにきついお仕置きを受ける。今週はそうなる可能性が濃厚だ。
もし、消費増税の反動減がひどくなるとしても、それが労働力調査、消費者物価指数、家計調査、鉱工業生産指数、商業販売統計などの実勢の数字で確かめられるのは5月末以降になる。「街角景気」の景気ウォッチャー調査はそれより早く発表されるが、これは日銀短観と同じく景況感のアンケート調査で、世間のムードに流されるきらい、なきにしもあらず。日銀が景気動向を経済実勢で確かめて手を打てるのは6月以降になる。「それでは遅すぎる」と言っても、4月30日の日銀会合ならまだしも、消費増税開始から1週間しかたっていない今週の日銀会合で追加緩和策を打ち出すというのは、いくら何でも無理がある。もしも本格的な緩和策を出してきたら、「官邸の強い意向か?」などと安倍内閣に日銀の独立性侵害を疑う矛先が向かいかねない。可能性としてはせいぜい数%程度で、黒田総裁が8日の記者会見で精いっぱい緩和を匂わせるリップサービスをして、お茶を濁してそれでおしまいではないだろうか。
それを考えると、7日はアメリカの雇用統計が悪くなかったこともあり「嵐の前の静けさ」で75日移動平均線(4日時点で15093円)あたりまでは上昇したとしても、日銀から何も出ない8日と、泣く子も黙る「SQ週の水曜日」の9日の東京市場は「春の嵐」に見舞われ、15000円台の維持はちょっと考えにくい。ただでさえ日足一目均衡表の「雲」(4日時点で14815~15158円)の中に突っ込んでいるので、乱気流に巻き込まれるリスクが高くなっている。小売業の2月期本決算の今期業績見通しが消費増税後の反動減を織り込んで保守的なら、投資家心理をさらに冷やす。もっとも、今週どこまで下落するかというと、最悪でも4日時点で14571円の200日移動平均線とみる。雲の下限の14815円あたりで下げ止まって安定飛行に移れれば、上々の出来だろう。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは14600~15100円とみる。ワルノリのツケは、市場参加者の連帯責任できちんと支払わされる。割に合わないと思っても、大人だからしかたない。