TPP関連の日本農薬<4997>は大きく下落し92円安で値下がり率1位。3月期業績見通しを一部上方修正しても市場予測に及ばずSMBC日興証券にレーティングを下げられていた。JSR<4185>は後場発表の今期営業利益見通しが5.4%増益の380億円でも市場予測の409億円に及ばず102円安で値下がり率3位。前日に同様の〃被害〃を受けた安川電機<6506>は28円安と続落して年初来安値を更新し、ショックが尾を引いていた。
この日は新規IPOが事実上の再上場も含めて3件。東証1部に直接上場した最大の注目、西武HD<9024>は公開価格1600円に対し9時の取引開始と同時に1600円の初値がつき、初値=公開価格の引き分け。公開価格は仮条件の下限で「PER35倍は高すぎる」などマーケットでは黒星予想が支配的だったので、引き分けも売買代金7位も終値1770円もポジティブサプライズだった。他の2件の公開価格は仮条件の上限。ジャスダックに新規上場したインナーウェアのネット通販を手がける白鳩<3192>は公開価格520円に対し10時22分に760円の初値がついた。終値は682円。東証マザーズに新規上場したハイテク関連のフィクスターズ<3687>は、公開価格3450円に対して初値がつかず買い気配値7940円で終了した。
この日の主役は日本電産<6594>とグループ企業の日本電産コパル電子<6883>、日本電産リード<6833>。日本電産は前日大引け後に決算を発表し、3月期は売上高23.4%増の8751億円、営業利益4.8倍の850億円、純利益7.1倍の564億円で、売上高と当期純利益は過去最高だった。今期の業績見通しは売上高8.6%増の9500億円、営業利益17.6%増の1000億円、純利益15.2%増の650億円で、全て過去最高を更新。配当は55円。決算と同時に10月1日付で日本電産コパル電子と日本電産リードを株式交換で完全子会社化し、両社を9月6日で上場廃止にすると発表した。それを受け東証1部の日本電産コパル電子は89円高で値上がり率1位、東証2部の日本電産リードは123円高になった。「親子上場」を解消してグループの求心力を高めるのが狙いで、永守重信社長によると今後もM&Aは積極的に進めるという。
しかし、今期の営業利益も純利益も市場予測を下回ったため、前場の株価はプラスとマイナスの間で乱高下。それでも午前のアナリスト説明会が終わると後場はプラスに浮上しどんどん値を切り上げる展開に変わり、終値は70円高で売買代金8位に入った。1兆円に届かない売上高は保守的に設定したものだといい、永守社長は前日の記者会見で「売上高1兆円が視野に入った」と述べていた。説明会で永守社長が直接、上方修正の匂いをプンプンさせればアナリスト諸氏も嗅覚で理解した模様で、黒田日銀総裁にお願いしたい「マーケットとの対話」とは、こんなこと。(編集担当:寺尾淳)