高齢化に伴い拡大する高齢者/病者用食品市場 日本が長寿化する理由

2014年05月20日 08:49

 日本では他国以上の速さで高齢化が進み、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は2012年で24.1%となった。今後、「団塊の世代」が65歳以上となる2015年の高齢者人口は3395万人になり、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には3657万人に達すると見込まれる。その後も高齢者人口は2042年まで増加を続けるという。

 そして、高齢者の増加に伴い、高齢/病者用食品のニーズは年々高まっており、市場は年率5%前後の成長を続けている。需要の増加に伴い、高齢者/病者用食品に対する理解の促進、利用に向けた社会システムの構築は大きな課題だ。そのため農林水産省では、13年10月から「介護食品のあり方に関する検討会議」を設置し検討を続けている。

 また、食品の提供事業者も12年12月に「日本メディカルニュートリション協議会」を設立し、治療食品の普及と安全・適性な使用のために、適切な情報提供・販売活動に関する自主基準を制定した。

 このような状況を受け、市場調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニングは、高齢者/病者用食品市場の開発・販売動向と今後の市場規模予測調査を実施し15日、その結果を発表した。

 この調査でいう高齢者用食品とは、①濃厚流動食品、栄養・水分補給飲料②咀嚼・嚥下補助食品である。また、病者用食品とは③腎臓病対応食品、④糖尿病対応食品、⑤褥瘡・PEM対応食品、⑥鉄・カルシウム・ファイバー補強食品、⑦大腸検査食品である。

 調査対象は、今回の調査は、高齢者食品/病者用食品を取り扱う、旭化成ファーマ、旭松食品、味の素な、大塚製薬など45社を対象にした。調査方法はアンケート調査およびヒアリング調査、公開情報収集。調査時期は2014年1月~2014年3月だった。

 それによると、高齢者用食品市場は11年に1000億円の大台を越えた。二桁台で成長を続けてきた市場は震災以降104~105%の成長率となったが、市場の成長は続き、17年には1340億円となることが予想されるとした。

 病者用食品市場は13年で349億円。対前年比105%前後で、穏やかに拡大している。17年には400億円を超える市場になると予想される。

 厚生労働省によると、日本人の平均寿命は男性79.59歳、女性86.35歳と長寿である。日本が長寿化する理由は、以前もレポートしたが、医療の発展はもちろんだが、伝統的な日本食が要因という説がある。東北大学大学院農学研究科食品化学分野の都築毅准教授らのグループは、現在の日本食と過去の日本食の比較試験により1975年頃の日本食は長寿や健康維持に有効であることを見出したという。

 いずれにしても、高齢者が多くなればそれに伴う、食事はもちろん、介護品など様々な分野のビジネスが拡大するのは必然だ。また、これからは、長生きするための日本食がブームになるかもしれない。

 なお、この調査結果の詳細は、調査研究レポート「2014年版 高齢者/病者用食品市場総合分析調査」(価格は10万2600円:税込、2014年5月1日発刊)として販売している。(編集担当:慶尾六郎)